貞操逆転世界で地味男やってます
@aroraito
第一話「とある日の体育の授業」
木の幹に身体を凭れかけながらグラウンドを眺める。遠くには男の集団と女の集団が二つに別れてそれぞれスポーツを行っていた。男子はテニス、女子はサッカーをしているようだった。
「あづい……」
今は夏だ。しかも8月という丁度ど真ん中の夏。いくら木陰にいるとはいえジリジリと照りつけるような暑さは身体を蝕んでいた。
額から汗が流れ落ちる。この長ったらしい前髪をかきあげて思い切り拭いたいが、それができない、というのが実情だった。
……
それが全てに起因している。目の前の少し離れた集団が半袖短パンの体操服なのに対し、こちらが全身を覆うジャージ姿なこと、また頭髪も長ったらしく目を完全に隠すほどの前髪であることも。さらに加えて言うならば、この体育の授業に参加していないこともだ。
それは、
インキュバスとしての
――そのため、できるだけ地味な男に見えるよう、欲情を誘わないようにしている。
「やっぱり……こうして遠くから見るのが一番だな……」
「あ、
突然、名前を呼ばれ、
「何してるの?こんなところで」
「ちょっと具合が悪くて、体育の授業休んだんだ」
「そうなんだ。この暑さだからねー」
彼女の純粋な気遣いに
「でもそんなに悪いわけじゃないから。大丈夫だよ、ありがとね」
「そっか……でも、もしよかったら、来週放課後一緒に遊ばない?」
「ありがとう。でも、最近少しやることがあって……また今度、ね」
「分かった、じゃあまたね!」
それでも、
「やっぱり、無理なんだよな……」
次の授業が始まるまでの時間、
「いつか、いつか普通に……」
その夢を胸に抱きながら、
そして、教師が集合の声がけが聞こえると、
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