あの日、止まった時間

@KoGaHaNa

第1話

「はぁ......」。蝉の声に煩わしさを感じながら重い腰を上げる朝。時刻はすでに9時を回っていた。

 熱のこもったリビング、エアコンの電源をつけてソファに腰掛ける。そのとき、視界に映りこんだ両親の写真があの日の記憶を呼び起こすこととなった。




 ピピピピッ...。 音が聞こえると、体を起こし階段をかけ降りた。ドアを開けると「おはよう、誕生日おめでとう」母は笑顔で言った。

「おはよう!」

「お母さん今日予定があって、17時ぐらいに帰ってくるね」

「わかった!」

 母はお昼ご飯を作って出掛けた。僕はテレビを観て待つことにした。

 

 辺りが暗い。僕は電気をつけた。今何時だろう... 時計を見ると、時刻は17:30にさしかかっていた。

 家のチャイムが鳴った。インターホンには祖母の姿、僕は不思議に思いながらもドアを開ける。

「病院に向かうから、車に乗りなさい」、緊迫した初めて見る祖母の表情に不安になり、訳もわからず車に乗った。

 病院に着き、案内される方へと向かった。そこには、目を閉じてベッドに横たわる母、その奥では父が同じ様に横たわっていた。その瞬間、まるで僕達を待っていたかのように


ピッピッ ピーッ。----




 嫌なものをおもいだしてしまった... 冷蔵庫からペットボトルを出し、お茶を飲む。視界が揺れる。体調が悪いのだろうか、部屋へ戻ろうと階段に足をかけたとき

バタンッ----



 目を開くと、一面が茶色だった。よく分からず辺りを見渡すと、いつもより高く大きい、見慣れた階段があった。家が大きくなったのだろうか、いやそんな事があるはずない。視界に入るグレーの毛、短い手足そして肉球。

猫になったのか...? 

ありえない、夢の中だろうか.....?

しかし、そんなことはどうでも良かった。何も考えることなく、ただ歩き回った。タンスと壁の隙間に何かが挟まっているのが見え、取り出すことにした。ヒトの姿だと気づかなかった。

 表紙に「誕生日おめでとう」と書かれたものを取って開いた。そこには家族で撮った写真の数々、12歳と書かれた空白のページと

「16時 写真 受け取り」と書かれたメモがあった。涙が込み上げてきた。目を閉じても止むことはなく、溢れた...。




 目を開くと、アルバムが少し小さくなって見えた。いつもと同じ家の景色にほっとした。 

 そして両親の写真とともに撮影し、カメラを持って外に出た。久々の外は日差しが強く、思ったよりもずっと眩しかった。

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