第6章:想いの共鳴
月光女学院の文化祭準備が始まり、校内は活気に満ちていた。蒼羽、優莉奈、ことは、そして麗華の四人は、「月華律」の問題を訴えるパフォーマンスの準備に熱心に取り組んでいた。
リハーサル会場となった講堂で、蒼羽は優莉奈とことはの練習を見守っていた。優莉奈の金髪は、舞台照明に照らされて輝き、まるで天使の後光のようだった。彼女の唇は、歌うたびに柔らかく開閉し、淡いローズ色のリップグロスが光を反射して煌めいていた。
「さあ、もう一度やってみましょう」
優莉奈の声が、静かに響いた。
ことはは深呼吸をし、目を閉じた。彼女のラベンダー色の髪が、まるで風に揺れるように静かに動き始めた。
優莉奈が歌い始めると同時に、ことはの周りに風が渦巻き始めた。優莉奈の歌声は、まるで目に見えるかのように空間を満たしていった。透明で純粋な音色が、ことはの風と絡み合い、驚くべき効果を生み出した。
蒼羽は、息を呑んで見つめていた。優莉奈の歌声とことはの風が融合する様は、まるで魔法のようだった。優莉奈の声が高音に達するたび、ことはの風が強くなり、会場全体を包み込んだ。
「素晴らしい……」
蒼羽の声は、感動で震えていた。彼女の瞳が、月光のように輝き始める。
パフォーマンスが終わると、蒼羽は思わず立ち上がり、ことはと優莉奈の元へ駆け寄った。
「二人とも、本当に素晴らしかったわ!」
蒼羽が二人の手を取ると、突然、不思議なことが起こった。三人の間で、目に見えない何かが循環し始めたのだ。それは、エネルギーとも、感情とも言えるような不思議な力だった。
蒼羽の瞳の輝きが強まり、優莉奈の髪が風に揺れ、ことはの周りの風がさらに強くなる。三人は、言葉を交わさずとも、互いの想いが深く繋がっていることを感じていた。
「この感覚……なんだろう」
優莉奈が、小さく呟いた。
「私たちの想いが、共鳴しているのね」
ことはが、優しく微笑んだ。
その時、講堂の扉が開き、麗華が入ってきた。彼女は、三人の様子を見て足を止めた。
「みなさん、どうしたの?」
麗華の声には、好奇心と少しの羨望が混ざっていた。彼女の瞳は、三人の姿に釘付けになっていた。
蒼羽は、麗華の方を向いた。彼女の瞳は、まるで月の光のように柔らかく輝いていた。
「麗華先輩、一緒に来てください」
蒼羽が手を差し伸べる。麗華は躊躇したが、その手を取った。
麗華が輪の中に入った瞬間、四人を包む空気が変わった。優莉奈の歌声が再び響き、ことはの風が四人を包み込む。蒼羽の瞳の輝きが強まり、そして麗華の長い黒髪が、風に揺れ始めた。
「これが……私たちの力?」
麗華の声が震えた。彼女の頬が、薄く染まっている。
「そうよ、麗華先輩」
優莉奈が優しく微笑んだ。
「私たちの想いが一つになった時、こんな素晴らしいことが起こるのね」
ことはが、感動に満ちた声で言った。
四人は、互いの手を強く握り合った。その瞬間、彼女たちの周りに、淡い光が広がった。それは、蒼羽の瞳の輝き、優莉奈の歌声、ことはの風、そして麗華の静かな強さが混ざり合って生まれた光だった。
「私たち、きっと変えられる」
蒼羽の声が、静かに、しかし力強く響いた。
「月華律だけじゃない、もっと大切なものがあるって、みんなに伝えられる」
優莉奈が頷いた。
「そうね、私たちの絆が、その証よ」
ことはが付け加えた。
麗華は、深く息を吐いた。彼女の表情に、決意の色が浮かぶ。
「私も……全力で協力します。生徒会長として、そして一人の生徒として」
四人は顔を見合わせ、静かに、しかし力強く頷いた。彼女たちの間に流れる絆は、どんな数値よりも確かなものだった。
リハーサルが終わり、四人は夕暮れの校庭を歩いていた。蒼羽と優莉奈が手を繋ぎ、ことはと麗華がその後ろを歩く。夕日に照らされた彼女たちの姿は、まるで絵画のように美しかった。
「ねえ、みんな」
蒼羽が立ち止まり、振り返った。
「私たちの想いは、きっとみんなの心に届くわ。だって……」
彼女は一度言葉を詰まらせたが、すぐに力強く続けた。
「私たちの絆は、どんな数値よりも強いから」
その言葉に、他の三人も強く頷いた。彼女たちの瞳には、揺るぎない決意と、互いへの深い愛情が宿っていた。
夕陽が沈む校舎を背に、四人の少女たちは新たな朝を待ち望んでいた。彼女たちの想いが共鳴し合う限り、どんな困難も乗り越えられると信じて。
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