『短編』アイドル保険
はた
第1話『てっぺきコース かんぺき』
「アイドル…保険?」
どうも、7人組アイドルグループ『USEFUL』のセンターを務めている、うららと申します。まだ駆け出しのアイドルだけど、光るものがあるんです。けど…ある日、事務所の社長から。
「そう、そろそろアイドル保険に加入してもいいころね」
「な…何ですか?アイドル保険?聞いたこと無いんですが」
「アイドルには何かと危険が付きものよ。それを未然に防ぐのがアイドル保険。巷で活躍するアイドルは皆、入ってるわ」
はあ…知らなかった…。これが芸能界の裏事情なのね。奥が深いわ。でも、あんまり気乗りしないなぁ。だけど、社長は前のめりだし、ちょっと話、聞いてみようかな。
「まずは、おためしコース『ここから』CランクのSPが3カ月ついて、アイドル保険を実感するコースね」
「SP?ボディーガードみたいなものですか?」
「うん、まあそんなところね」
ふーん、コースはランク付けされてるんだ。…Cランクって何だろ?あんまり頼りにならないのかな?私は、社長が次々出す資料に目を通している。へえ~、面白いなぁ。
「次は、なりきんコース『うはうは』BクラスのSPと、収入も色がつくお得なコースね。金額的には一番お得かも」
「ほぉ…これは魅力的な…。……はっ!?」
「ふっふ~…興味持ってくれてるわね?いいわよ、いいわよ?」
しゃ、社長の目線がイヤラシイ!!私がお金に食いついたのが面白そうに!!だ、だってお金はみんな好きじゃないですか!!オカネ、ダイジ!!だって…これは皆、そうでしょ!?ね?ね!?
「まあ、いいわ。次はあんしんコース『さきがけ』AクラスのSPが事前に事件を解決してくれる、一番安全なコースね。うはうはの金銭のサービスはつかないけどね」
ふぅむ…。じゃあ、うはうはに決めようかな…。…!!いやいや!!お金に釣られたんじゃなくて!!駆け出しアイドルは、収入が厳しいからね?保険に支払う金額も考えなきゃ!!ね?
「じゃあ、裏コース。てっぺきコース『かんぺき』に登録するわね?もう書類は作って、保険会社に送ってあるから」
「は!?じゃ、じゃあ今までの説明は!?それにそんな凄そうなコースの代金払えないですよ、私!?」
明らかに今までとは違う気配の裏コース!!だけど社長は止まらない様子…。どどど…どうしよう…。どうにかして断らな…。
「あ、大丈夫よ。保険料はうちの事務所が支払うから。SクラスのSPがずっと護ってくれるわ」
「ずっと?」
色々疑念はあるけど、事務所が負担してくれるならちょっと安心かな…。SクラスのSPか…。何だか凄そう…。
「もう来てるころね。挨拶なさいな、うららちゃん」
「来てる?誰が?」
「どうも、芸能保険事務所イージスから参りました。SPのリョウマです。この度はご契約ありがとうございます」
「うおぉわぁ!!びっくりしたぁーーー!!」
気付けば後ろに見知らぬ男性が立ってる!!…全く気付かなかった!!かーっ…はー…心臓に悪いわ…。何だよ忍者かよオバケかよ!!…ん?今、SPって言った?じゃあこの人が…。
「この人が…?」
「これからよろしくお願いします。うらら様」
「…は…はあ…よろしくお願いします…」
20代後半、黒い短髪が清楚で、背も高くて、顔も良い…。並の男性モデルなんて目じゃないくらいカッコイイ…。こ、この人に守られるのか…。な、何だかドキドキしちゃうな…。
「お久しぶりね、リョウマ君。君が担当になったんだ」
「しゃ…社長はこの人と面識があるんですか?」
「まあ、ちょっとね。あ、コーヒー煎れて来るわ」
社長が部屋から出ていく。あ、ちゃんと挨拶しないと駄目だよね。これから、専属SPとして働いてくれるんだし…。
「…あ、あの…リョウマさん?今日からよろしく…」
「…ふー…今回はお子様のお守りか」
「あ?ええ?」
明らかにリョウマさんのテンションが変わったのが分かる。今、お…お子様って言った?この人?
「いいか?これだけは言っておく。俺様の同行には絶対服従してもらう。これからお前には行動の決定権は…無い」
「は…?お、お前?」
な、なになに?俺様?さっきと態度と口調がまるで違う!?え?何この人…もしかして生粋の…?
「せいぜい売れて、俺様に奉仕するんだな。その気があれば、乗り気じゃないが、サポートくらいはしてやるぞ」
「はあ!?な、何を偉そうに…何の権限で…あだっ!?」
その時、目の前にリョウマの指があった。えーっ!?いきなり何でデコピン!?しかも超痛いじゃないの!!今、分かったコイツ…超俺様体質のドS野郎だ!!
「あ、さっそくやってるわね」
「社長!!な、何なんですかコイツは!?あだっ!?」
「そうそう、俺には敬語が原則だ。…無駄なことをさせるな。全く面倒な…。俺は無駄が嫌いなんだ。覚えておけ」
に…二発目のデコピン。威力が上がってやがる…。これだけで解る。…逆らえば殺られる。今の勢力図はライオンの前のチワワ状態だ。いや、でも今のうちなら…。
「ああ、そうそう。解約なんて考えるなよ?俺様の会社はお前と契約したんじゃない。この事務所の社長さんと契約したんだ。…お前に決定権が無いとはこういうことだ」
「あああああ!!納得いかなーい!!」
社長も何、平然としてんのよ!!こんな問題児、さっさと解約してよ!!見てたでしょ、今!!びっしーんと、びっしーんとやったでしょ!?仮にも事務所の看板をキズモノに…。
「元気そうね。安心したわリョウマ君。はい、スペシャルブレンドのコーヒー。これからもよろしくね」
「はい、社長。ありがとうございます。頂きます、コーヒー」
「はー!?何で、社長!?こんなゲス、さっさと解任…」
その言葉を言い終わる前にリョウマは私の腕を絡め取る。そして、合気道よろしくで転ばされ、4の字で固められた。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!いたたたたたたたた!!ちょ、たっ…タップしてるじゃ…痛い痛い痛い痛い!!こ、ノーッノーッ!!」
…ようし、わかった。コイツはこういうヤツなんだな?わかった。決めたぞ。絶対…絶対、屈服させてやる!!私が絶対マウント取ってやる!!見てろ!!吠え面だけじゃ済まさないからな!!
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