第3話
次の日俺は寝過ごしていた。
完全にやらかした。
昨日読んでいた漫画が面白すぎて、あと1話、あと1話を繰り返していたら、深夜の2時を過ぎてしまっていた。
慌てて歯を磨いて、顔を洗って、制服に着替えて家を飛び出した。
やべぇガチで遅刻する。
慌てて家を出ると、同じタイミングで伊吹さんが家から出てきた。
俺はあまりにも似合う伊吹さんの制服に見とれてしまった。
だがそんな事を考えてる暇は無いと我に返り、すぐに走り出そうとしたが、ちょっと待て。伊吹さんも今日から同じ学校だよな。
このままだと遅刻するぞ。時間知らないのか?
そう思い俺は声をかけた。
「えっと、伊吹さんうちの学校後40分くらいで着かないと、遅刻するけど時間大丈夫?」
俺は焦っていたので早口で言うと、伊吹さんは全く焦りの無い表情でこっちを見た。
「うん。大丈夫だよ?私転校初日だから少し遅く来てって先生に言われてるの。池田くんもしかして遅刻?」
「マジかよ。一瞬仲間がいると思って安心した俺が馬鹿だった!」
俺はそう叫んで駅までダッシュで向かって、いつもより3本も遅い電車に乗り、学校まで全力疾走をした。
ハァハァ。
ぎりぎり学校には間に合った。
あぶねぇ、後1分で門を閉められるところだった。
こんな時期に汗を拭いながら、疲労困憊の足で3階まで登り、教室に入ると何故かクラス全体がソワソワしていた。
なんかあったのか?
少し気になりつつも席に着くと和真が話しかけて来た。
「今回は本当に遅刻して来る思ったわ」
「俺も今回は終わったかと思った。でもギリセーフ」
朝を拭いながらそう答える。
「で、また漫画か?それともただの寝過ごしか?」
「昨日読んでた漫画が面白すぎて、夜遅くまで読んでいたら寝過ごした」
「どうせまたラブコメ漫画なんだろ」
「そうだよ。何か悪いか?」
「いつも通りだな。そんなにラブコメ好きなら彼女作れば?」
「んな簡単に作れるか!しかもラブコメみたいな事が、現実で起こるわけないだろ」
俺がそう答えると、和真は呆れ顔をして話題を変えてきた。
「そうですか。てかどのクラスか分からないけど転校生が来るの知ってるか?」
転校生?
って絶対伊吹さんだ。
「転校生?こんな時期に珍しいな」
「本当に珍しいよな。しかも転校生が来るからって男子はどんな可愛い子が来るか、女子はどんなイケメンが来るか、朝からソワソワしてて変な感じだわ」
「だからクラス全体がソワソワしてたのか」
男子のみんな良かったな超超可愛い転校生が来るぞ。
「まぁでも8クラスもあるし、どうせこのクラスじゃないだろ」
「まぁそうだよな」
そして俺と和真の会話は、先生が来たことによって終わった。
全員が席に着き静かになると、先生は教卓の前に立ち、全員にこう告げた。
「みんな知ってるかもしれないが転校生が来る。その転校生はうちのクラスだ。こんな時期に珍しいと思うが仲良くしてやってくれ」
マジかよ。
さっきの和真がフラグ立てたから。
先生がそう伝えるとみんなが一段と騒がしくなっていく。
どんな転校生か気になってしょうがないのだろう。
「先生転校生は女の子ですか?可愛いですか!」
いきなり質問をしたのは、お調子者の桜井だった。
先生は少し意地悪な笑みを浮かべて「それは教室に入ってきてからのお楽しみだ」と言った。
「ケチー。だから先生彼氏……」
「何か言ったか?桜井?」
「イヤータノシミダナテンコウセイ」
そんな先生の圧力により、桜井が大人しくなると廊下にいるであろう転校生(伊吹さん)に「入ってきていいぞ」と言った。
ガラガラとドアが開き伊吹さんが教室に入ってきた。
そしてそれは伊吹さんの魅力で、ドアから教卓の前までの距離をランウェイで歩いてるように見えた。
その短い距離でクラスの9割の男子の心を射止めて、女子までも伊吹さんの魅力に目を奪われていた。
「えっと、名前は伊吹陽菜子さん」
黒板に名前を書きながら先生が言う。
名前を書き終えると伊吹さんの紹介を始める。
「伊吹さんは、前は関東の方に住んで居たらしい。こんな時期に転校とは珍しいと思うがみんな頼むよ。じゃあ伊吹さん一言貰っていい?」
「はい。初めまして伊吹陽菜子です。こんな時期に転校は珍しいと思いますが、皆さんと仲良く出来たら嬉しいです。よろしくお願いします」
「うん!ありがとうね。席は窓側の1番後ろの席ね。じゃあ朝のホームルーム終わり」
そう言って先生は、伊吹さんと少し話して教室から出て行った。
伊吹さんが来たからと言って、授業はいつも通りで、特に変化も無く4時間目までが終わった。
そして昼休みになると伊吹さんの周りに男女共に大勢の人に囲まれていた。
伊吹はそれを笑顔で対応している。
コミュ力高いな。
伊吹さんの事をぼーっと見ていると、また和真が声をかけてきた。
「彩斗も転校生に惚れたか?」
「んなわけないだろ。それに俺なんかみたいな奴が、相手にされる訳ないだろ」
それに対して静かに和真はため息をついた。
「そんな事はないけどなぁ。メガネコンタクトにするだけでも変わると思うぞ。後その前髪も」
「そんなに簡単に変われる訳ない。それか?和真が転校生に惚れたか?」
「そんな訳無いでしょ。和真は私が居るんだから」
いきなり現れたな。
毎度びっくりするわ。
「どうした菜々美?転校生を見に来たの?」
いきなり現れた菜々美に対して、何も驚く素振りを見せず和真が聞いた。
「そう!転校生見に来たの。あの子凄く可愛いね!でも、和真になんかしたらすぐに教えてね彩斗」
「う、うんわかった」
何か怖い。
「確かに可愛いよな。でも俺は、菜々美が可愛いかな」
「えへへへ。嬉しい」
満面の笑みを浮かべる菜々美。
こいつら毎日……
「人前で、イチャイチャするな!」
このやり取り毎回やってるよなと、呆れながら2人のイチャイチャから目を逸らした。
だるい授業から解放されて放課後になり、和真も部活に向かったので帰ろうとすると、桜井に声をかけられた。
「彩斗!伊吹さんの歓迎会をやるからカラオケ行こうぜ!」
「…悪ぃ。俺パス」
今日は朝から疲れたし。寝不足のせいで少し体調も良くない。
後漫画の続きを読みたい。
「え!なんでだよ〜。彩斗が来たらもっと盛り上がるのに。どうしても無理か?彩斗の歌聞かせたい」
「ちょっと体調悪いから今日は帰るわ。ごめんな」
「体調?ガチか。体調悪いならしょうがないか。しっかり休めよ」
「おう。サンキューな」
家に帰り昨日の続きの漫画を淡々と読んでいると、いつの間にか時間が19時になっていた。
腹が減ったので、俺は近くのコンビニに向かい、サラダチキンを買って家に向かった。
エントランスを通って、エレベーターの前に向かうと、そこにはまだ見慣れない美少女がいた。
「「あ」」
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