オンライン麻雀ゲームの配信者の中の人

@toru19680123

オンライン麻雀ゲーム配信始めた

オンライン麻雀ゲームで遊んでいると、たまに子供のころを思い出す。「ロン! リーチ一発、タンピン三色、ドラをめくってやったー! 裏三、九翻で親っパネ18000点ね」「アヤは強いなあ」「エッヘン、強いよ。父さんたちには負けないんだから」 物心ついた時から家族で麻雀を楽しんでいた。これはそんな私がVチューバーになってオンライン麻雀ゲームの配信者の中の人になったお話。


そんな環境で育ったためか、自然と麻雀に関係した仕事に就きたいと考えていた私は、大学でも麻雀を研究し、卒業後、雀荘でアルバイトをしながらプロ雀士を目指すことにした。 雀荘でアルバイトしていた私を、世界を揺るがす大事件が襲った。2019年に起きた新型コロナウイルスによるパンデミックである、この事件は麻雀業界を一変させた。 この新型コロナウイルスの蔓延により行動は制限され、雀荘で麻雀を遊ぶ人が激減し、リアルで遊ぶ麻雀からオンラインで遊ぶ麻雀ゲームへとその遊び方が変化した。


しかしこの変化は悪ことばかりではなく、世界各国のユーザーとオンラインで麻雀を楽しめるようになったのだ。


そして私は、オンライン麻雀ゲームでユーザー数を伸ばしている「麻雀鬼姫」で麻雀を打つことにした。


このオンラインゲームは、美麗なキャラクターが動いたり、上がった時にセリフをしゃべったりと、麻雀以外にユーザーを引き付ける要素があった。


私は、このオンラインゲームを自分の主戦場と決め、麻雀配信Vチューバーとして活動していこうと決めた。私は麻雀以外にもイラストに興味があり、よくイラストを描いてはSNSに投稿していた。投稿したイラストの評価はまずまずだった。 配信用のアバターは自分で作成したキャラクターを使うことにした。もともと周りからはアニメ声と言われるほどかわいい声をしている自覚はあったし、喋ることも苦ではなかったのでVチューバーはやってみたかった。


最初の配信に向け、アプリ「麻雀鬼姫」に登録を済ませ、ユーザー名はアヤにした。アヤは自分の本当の名前で、わかりやすい。


私は8月2日の配信開始に向けて準備を進めていた。


SNSに麻雀鬼姫の段位戦を配信することを告知する投稿を行い、たくさんの人が視聴してくれるように、麻雀鬼姫の公式アカウントやハッシュタグで麻雀鬼姫のユーザーを見つけては、いいねやリポストを行いフォローもした。その努力が報われたのか、登録者数は徐々に増えつつあった。


そのSNSの投稿の中でアヤはある違和感を覚えた。麻雀は運と駆け引きが楽しいゲームなので、状況的に理不尽に負け続ける展開もあって仕方がないことなのだが、投稿の内容は批判的な意見があまりにも多すぎる。「牌操作」や「やらせ」「課金者優遇」の言葉が並んでいた。中には昇段したことを報告したり、何を切るかの投稿や、役満報告なども投稿されていたが、圧倒的に批判的なものが多い。でもこうした批判的な意見も私の配信で払拭できればよいなとアヤは考えていた。


その中で、特に気になるコメントがあった。「配信者はいつも良い配牌をもらっているように見えるけど、偶然かな?」というものだった。アヤはそのコメントに対して、「そんなことはないと思いますが、面白い視点ですね」と返信した。


8月2日になり配信が始まった。 「みなさん、麻雀ゲーム配信Vチューバーのアヤです。ご視聴ありがとうございます。これから雀姫聖を目指して戦っていきます。よろしくお願いします。コメントありがとうございます。初配信であまり対応できなくてごめんね、私の対局見守ってね!」段位戦の青銅の間、4人打ちに入場して対局開始を待った。まもなくメンツがそろい対局が開始された。


オンライン麻雀ゲームと雀荘での対局との大きな違いは、


1.相手の表情を読むことができない

2.自摸切りか手出しの判断がつきにくい

3.泣き牌がある場合や上がり牌が出た場合、聴牌した場合に教えてくれる

4.振りてんの場合、チョンボで上がることができない

5.確率操作の余地がオンライン麻雀ゲームにはある

ということだ。5番目の確率操作については企業倫理から考えにくいのだが、実際にはそれを疑うようなアプリのレビューで溢れかえっている。


東1局、親番で始まった。「良い配牌ついてるね」といったコメントが流れている。セオリー通り字牌から捨てていく4巡目、上家からリーチがかかった。早いリーチに対して不要牌の中に現物がない。こちらの不要牌は通らなそう。イーシャンテンだったが一発は避けたいのでひとまず現物を切っておく。


直後、下家がローピンを切った。「えっ」、少し間を置いてCVが「ロンワン」と叫んだ。画面が切り替わり上がり役と点数が表示される。裏ドラが乗って跳満を振り込んだ。


結局この対局は南場になって何も考えずにセオリー通りに切っていったら上がりまくって1位で終えた。段位が初姫1から2に上がった。


コメント欄には「うまい」「初配信とは思えない」「これからも応援する」のコメントが流れていた。 私の初配信は概ねうまく行った。


「この配信を気に入ってくれた方は高評価と登録ボタンのクリックをお願いします。次回配信も告知するので見に来てね! ご視聴ありがとうございました。」アヤは初回の配信を無事終えられたことに安堵した。そして対局の振り返りを行った。


この麻雀鬼姫には過去の対局を振り返ることができる。私は早速、東1局を確認してみた。下家は6Pを面子を崩して切っていた。明らかにおかしな打牌だ。側から上家の捨て牌は字牌が3枚切れてリーチ牌は7Pだった。


その時、アヤはふと気づいた。初配信の時に下家だったプレイヤーのユーザー名が、SNSで気になるコメントをしていたアカウントと一致していることに。アヤはそのアカウントを調べてみることにした。


まずは、このユーザーをSNSでフォローし投稿の内容を確認してみた。Vチューバー、特に「麻雀鬼姫」を配信しているユーザーの投稿に対してコメントを残している様だ。配信後の感想だったり、指摘だったりした。私も初回の配信に対する視聴者へのお礼と次回の豊富なのを書いて投稿した。程なく、このユーザーからもコメントが付いた。

「初配信お疲れさまでした。配信楽しかったです。次回も楽しみにしています。」そのコメントは一般的なコメントでファロー返しもされていた。

『うーん あの打牌は気になるけど考え過ぎかなあ』

あの配信で同卓していたことにも触れていないのは気になるがたまたまおアカウント名が被っただけで別人かもしれない。

「麻雀鬼姫」の方もフレンド登録しようとフレンド登録候補一覧を開いてみたがアカウント名が表示されなかた。

この「麻雀鬼姫」では一度、対局するとフレンド登録できる機能が備わっている。


登録候補リストに表示されるアカウントと表示されないアカウントの違いはよく分からないが、もしかするとサーバーの違いなのかもしれない。

ゲームのサポートチームに問い合わせてみたが明確な回答はえられなかった。


そして私は2回目の配信の告知を行った。すると例のユーザーからもコメントがあり「見に行きます。配信楽しみにしています。」とあった。


配信をスタートさせ前回同様に段位戦の青銅の間、4人打ちに入場して対局開始を待った。まもなくマッチングして対局が始まった。

「えっ」 驚いた、「前回の配信で下家だったアカウントが今回の配信でも同卓していた。」いやいや偶然じゃないでしょこれ


件のアカウントは前回同様下家に座った。


しかも前回と同じような展開で今回もトップで終えた、打ち方は流れに逆らわずに無理な勝負はせずに立ち回った。それでも南場に入ると親番で高打点で連荘しいて快勝した。


試しに、配信せずに対局を行ったところ、例のアカウントとは同卓にならず、東1局から別な配信者アカウントがさらに別なアカウントを飛ばして早々と終了した。


アヤは配信を続ける中で、例のアカウントとの対局が続くことに不安を感じ始めた。彼女はそのアカウントとの同卓がただの偶然ではないことを確信した。


アヤは配信を通じて知り合った別の配信者に連絡を取り、同じアカウントと対局した経験があるかどうかを確認することにした。


数人の配信者から返事があり、彼らも同じアカウントと対局したことがあると証言した。さらに、そのアカウントが対局中に奇妙な打牌をすることが多いという共通点も見つかった。そのことをアプリケーションのサポートチームに問い合わせてみたが返答は曖昧で、具体的な情報は得られなかった。

アヤは諦めずに、SNSで「麻雀鬼姫」の開発者を探し出し、直接メッセージを送ることにした。心当たりがあった「配信者はいつも良い配牌をもらっているように見えるけど、偶然かな?」というコメントを残していたユーザーだ、このユーザーとは相互フォローの状態なのでDMを送ることができる。件のアカウントと同じ名前のユーザー

私は意を決してDMを送った、「初めまして、DM失礼します。いつも配信を視聴いただきありがとうございます。気が付かれているかと思いますが、同じアカウント名を持つアカウント様とほぼ毎回配信時に同卓しています。何かお気づきの点があれば教えてほしいのですが? よろしくお願いします。」と送ってみた。


数日後、このユーザーから返信があり、「君の配信を見ているし、同卓しているのも私本人だ、そして実は、私の正体はこのアプリの開発チームのメンバーだ、そしてあなたも気づいていると思うがこのアプリには配信者用の特別なアルゴリズムが組み込まれていて、良い配牌や自摸が来るように設定されているんだ」という衝撃的な事実が明かされた。

さらに、この開発者は「この事実を公表するかどうかは君次第だが、真実を知ってほしい」と続けた。


アヤはこの情報を元に、次の配信で視聴者に真実を告白することを決意した。そして視聴者に対してどう説明するのが良いか思案して配信の中で公開することを決めた、「みなさん、「麻雀鬼姫」は配信者を優遇する特別なアルゴリズムが組み込まれていて、良い配牌や自摸が来るように設定されていることが分かりました。この対局でそれを判りやすく解説したいと思います。」と語った。対局中に都合よく自摸牌を入れ替えることはしていないが、対局を振り返ってどの様に牌を切っても結果が変わらないことが明らかになった。どう考えても上がる人が決まっているとしか考えられない配牌である。


しかし、この告白からアヤのアカウントはSNS、Vチューバーの配信チャンネルでも酷い誹謗中傷に見舞われた。

「そんな適当な根拠をならべて何を考えている。運営はお前を訴えるはずだ首を洗ってまっていろ」、「こんな奴がVチューバーなんて笑える、麻雀知ってんのか」、「ふざけるな死ねよお前」、「いますぐ「麻雀鬼姫」を辞めろお前が遊ぶ資格なんかねよ!」

まさかこんなことになるとは思わなかった。これもあのユーザーに仕組まれたことだったのか、アヤのカミングアウトに共感する意見は0だ、SNSやアプリケーションレビューで理不尽を訴えているユーザーらしき人からの応援のコメントもない。失敗だ完全に孤立してしまった。最悪このアカウントを捨てれば問題はないのだが、特に未練もない。ただ配信用に作成したアバターはもったいないことをした。


そう考えていた時に、表立って意見を言わなかった配信者達が、アヤの主張を証明する様な投稿するようになった。そこにその主張を証明するかの様に匿名のユーザーから「麻雀鬼姫」のソースコードが公開された、アカウントの管理用のテーブル構造やフラグ、ステータス値が公開され、配信者フラグが立っていた場合の分岐方法やユーザーマッチングルール、配牌のロジックに至ってはランダムパターンと積込みパターンが用意されていた。

当然、運営会社は事実無根と否定はしているが、公開されたロジック通りにアプリケーションが動作していることを否定することが難しい状況だ、公開についても「麻雀鬼姫」のソースコードと断定して公開されているわけではなく、麻雀ゲームサンプルロジックとして公開され「麻雀鬼姫」に似せて作ったとされていた。


アヤは状況的に現アカウントは破棄しSNS、動画配信サイト、「麻雀鬼姫」アプリ内の転生を決めたと言っても「麻雀鬼姫」は当面の間、休止状態となった。

プログラムでなんでも対応可能なオンライン麻雀ゲームは麻雀ではないのだなと理解したアヤだった。

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