第百四話 ロリハーレム
ひめと心陽ちゃんは、意外と相性が良さそうだった。
「じゃあ、ひーちゃんはよーちゃんの『おともだち』なんだねっ」
「はい。友達としていつも優しくしてもらっています。素敵な人だと思います」
「うん! よーちゃんはすてきだよっ。だって、こはるのしょーらいのだんなさまだもん♪」
うーん、もっと魅力的な人がいると思うんだけどなぁ。
この子たちが言うほど俺は素敵な人間ではない。どこにでもいる普通の高校生だと思う。
もちろん、普通(自称)ではない。
普通だけど実はイケメンだったり、普通だけど実は勉強ができたり、普通だけど実は喧嘩が強かったり、そういった裏設定がない正真正銘の『凡夫』である。
良いところといえば『優しいこと』という、このタイプの人間にありがちな特徴しか持っていないのだ。まぁ、とびぬけている能力がないからこそ、せめて人に優しく在ろうと心がけているだけで、そんな大層な人間でもない。
なので、二人に愛されている状況がすごくこそばゆい。
なんというか、普通に照れていた。
(……な、なんて言えばいいんだろう?)
もっとたくましい人間であれば、余裕のある態度をとれるのだが。
八歳と六歳の女児の褒め言葉に本気で喜んでしまうような人間に、この状況で気の利いた一言を発するのはハードルが高すぎる。
なので、無言で二人のやり取りを見守ることしかできなかった。
「将来の旦那様……素敵ですね。わたしは、将来的にはお姉ちゃんが陽平くんと結婚する予定なので、妹になると思います。その時は義理の妹としてよろしくお願いしますね」
「……あ! たしかに、こはるがよーちゃんと結婚したら、ひーちゃんがいもーとだねっ」
まず一夫多妻制になりつつある状況に違和感を持ってほしいところだが、それはさておき。
二人の会話をそのまま出力すると、俺の正妻が心陽ちゃんで、二番目が聖さんになるわけで、その妹がひめなので……つまり、ひめが心陽ちゃんの義理の妹になるということは正しいのかな?
でも、年上の妹って存在していいのだろうか。このあたりは凡夫にはよく分からなかった。当たり前だけど結婚なんてしたことないので調べたこともないのである。
なので、何が間違いかも分からないまま訂正もできず、結局静かにするのだった。
「そうですね。将来的に、こはるさんはわたしのお姉ちゃんですね」
「にひひっ♪ そっかそっか、こはるはおねーちゃんかぁ……!」
心陽ちゃん、すごく機嫌が良さそうである。
ひめがたくさん褒めてくれるからだろう。珍しい……独占欲の強い子なのに、ひめに対してはすごく寛容だった。
心陽ちゃんは、姉が俺に近づくことすら嫌がる重たい子である。
やきもち妬きで、ずっと自分を見てくれないと嫌だと駄々をこねるわがままなタイプだが、ひめだけは特別に見えた。
「そーだ! ひーちゃんもよーちゃんの『およめさん』になったら? こはる、ひーちゃんのこと好きだから、一緒におよめさんやろっ」
よっぽどひめのことを気に入ったんだろうなぁ……あの心陽ちゃんが、まさか俺と他の女の子が結婚することを許可するなんてびっくりだ。
まぁ、ハーレムになりつつあるのが本当に不思議で、俺のことじゃないような感覚なのだが。
「そ、それは無理です。わたしなんかが、陽平くんのお嫁さんなんてもったいないです」
「えー! いっしょにやろっ? 二人でよーちゃんといっぱいあそべるのにっ」
「……遊ぶのは、たしかに楽しそうですね」
「じゃあ、やろー! ひーちゃんもいっしょ♪」
「そうですね……それでは、お嫁さんの末席でお願いします」
いやいや。
そもそも複数人と結婚なんてできないし、大前提として俺にその器がない。
あと、ひめ……君は勘違いしているよ。
(ひめに不釣り合いなのは、俺の方なんだけどなぁ)
どうしてあの子は、自己評価がこんなに低いのだろうか。
それだけは少し、気になった――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます