第二十四話 星宮姉妹に関する噂
久守さんに悪意がないことは分かったので、疑ったお詫びに彼女の聞きたいことはなんでも応えることにした。
とはいえ、仲良くなったのはつい昨日のことなわけで、あまり語れることはないのだが。
「ふむふむ、読書していた時にお菓子をあげたら仲良くなったんすね。ちなみに星宮さんはどんな本を読んでたんすか? あと、何をあげたのかも気になるっす!」
と、質問の内容は終始こんな感じだった。
下世話な話や、スキャンダルめいたことを探られると被害妄想していた自分が恥ずかしくなるくらい、健全である。
「こ、校長室で昼食を……! なるほど、校長先生と食べているという噂はデマだったということっすね。昼食の内容は――やっぱり豪華だったっすか! ほへぇ、すごいっすね~」
ついでに、変な噂の訂正もしておいた。
これでひめと聖さんが奇異の目で見られるのが、少し減ってくれたらいいなぁ。
「聞けば聞く程、只者じゃないっすね」
「でも、意外と普通の子供だよ」
「いやいや! 先輩、すごいっすね……星宮さんをそんな目で見られるのは、たぶん先輩だけっすよ」
一通り、聞きたいことは聞けたのだろうか。
しばらく続いていた質問攻めが終わったので、今度はこちらかも知りたいことを聞くことにした。
「……ひめって、そんなにすごいの?」
「ええ! それはもう――同じ学校に通えていることを光栄に思うくらい、素晴らしい方っすよ! お姉さんも綺麗な方ですし、同じタイミングでお姿を見られることをあたしは誇らしく思うっす!」
もちろんそれは知っている。ひめのすごさなんて、噂に疎い俺ですら理解しているのだが、話を引き出すためにあえて無知を装った。
そのおかげで、久守さんは色々と教えてくれた。
「まず何といっても、星宮さんの頭脳がすごいっす。とある論文に協力したことをきっかけに、様々な研究チームから助言を求められるようになって、それから次々と新たな発見をして……星宮さんの名前をネットで検索したら、それはもう圧倒されるっすよ!」
「へー。そうなんだ」
「そうっすよ! だからなのか、この学校の先生たちは誰も星宮さんに逆らえないみたいっす。自分より頭がいい生徒ですから、当然っすよね!」
「なるほど……じゃあなんで、ひめはこの学校に通ってるんだろう?」
正直なところ、これはずっと気になっていた。
うちの高校は市内でまぁまぁの進学校とはいえ、ひめが通うレベルでは絶対にない。国内で言うとせいぜい中の上程度でしかないというのに、ひめみたいな存在がいることを不思議に思っていたのである。
いったいそれは、なぜなのか。
「あたしもそれは気になってるんすけど、実はその理由は誰にも分らないっす。でも……とある話を聞いたことがあるっす」
さすが、新聞部だ。
どうやら彼女は、俺の知り得ない情報を持っているらしい。
「『お姉さんの入学を条件に、星宮ひめさんがこの学校に通っている』という噂を聞いたことがあるっす」
……裏口入学、というやつだろうか。
なんというか、あの二人が不正をするようには見えないので信じられないのだが――。
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