第八話 ロリコンじゃなくてちょっと残念
星宮さんは素直で純粋な少女である。
だからこそ、俺の『星宮聖とは結婚できない』というセリフを、まっすぐにこう捉えたようだ。
「ご、ごめんなさい……気持ちが先走ってしまいました。陽平くんは、お姉ちゃんがタイプではないのですね」
いや、違う。
あの人で不満だなんて随分と贅沢な話である。星宮聖さん以上の女性を探すとなったら、相当な努力と奇跡が必要となるだろう。
「そういうわけじゃなくて……えっと」
「……あまり気乗りしないようですね。妹のわたしが言うと、贔屓しているようで説得力が薄いと思うのですが……お姉ちゃんはとても素敵な人ですよ? 少し抜けているところも確かにありますけど、優しくて面倒見がいいです……あと、胸もすっごく大きいのです。だから、陽平くんも好みだと思っていたのですが」
……ま、まぁ、嫌いとは言ってないよ。胸が大きいのも、うん。すごくいいと思う。
もちろん星宮聖さんに欠点があるわけじゃない。俺の方に大きな問題があると思うのだが、星宮さんはそんなことまるで考えていないようだ。
間違いない。
この子は俺のことを過大評価している。
そのせいで、あらぬ勘違いをしていた。
「――ハッ。なるほど、わかりました……そういうことだったのですね!」
「……そういうことって、どういうこと?」
「いえ。自分で言うのもなんですが……賢いわたしは気付いてしまいましたっ」
「な、なにを?」
「つまり、陽平くんは――ロリコンなのですね? お姉ちゃんより、わたしみたいな女の子が好きなんですよね? なるほど……興味深いです」
「違う! それは絶対に違うから!!」
ほら、やっぱり変な勘違いをしていた。
断じて、そういう趣味はない。生まれも育ちも見た目も能力も平凡なだけあって、性癖も至ってノーマルだった。胸は大きいのも好きだし、小さいのも好き……って、そういう話じゃなくて!
「否定しなくてもいいですよ? 大丈夫です、わたしは陽平くんが変態さんだとしても受け入れます。あ、でも……さすがに年齢を重ねたら体も成長すると思うので、その時にまだ陽平くんがわたしを好きでいてくれるかが不安ですが」
「いや、否定しないとダメだからっ」
この子、思考が大人すぎる。いや、おませすぎると表現した方がいいのだろうか。
変に物分かりが良くて器が大きいので、ロリコンだろうと受け入れようとしていた。そこはちゃんと否定して、逃げてくれないとなんだか心配だなぁ。
「俺はロリコンじゃないよ。ひめのお姉ちゃん――星宮聖さんが嫌い、というわけじゃないんだ。むしろ、彼女の方が俺を好きじゃないって話がしたくて」
誤解がないように、ちゃんと説明しておく。
そうすると、星宮さんは……なぜかちょっとだけ残念そうな表情を浮かべた。
「そうですか……ロリコンでも別に良かったのですが、まぁいいでしょう。わたしは妹でも十分幸せなので、お嫁さんはお姉ちゃんに譲ることにします」
「……お姉さんは嫌がると思うけどなぁ」
「いやいや。陽平くんなら大丈夫です。わたしがほしょうします。きっとお姉ちゃんも喜ぶと思いますよ?」
その自信はどこからくるのか。
俺なら大丈夫って、俺には絶対に言えない言葉だった――。
//あとがき//
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