陸から追い出された人類が生きる為に
冰鴉/ヒョウカ
原作開始まで生きる為に
序章【失われた英雄】
第1話 とある孤島の、鎮守府で
『敵襲!敵襲っ!12時の方向に敵軍を発見した!鎮守府に居る艦兵達は即座に迎撃に当たれ!』
サイレンが鳴り響く中、港から艦兵と呼ばれた武装を纏った少年少女達が海上を滑って敵軍に向かっていく。
そんな光景を…俺は埠頭から見ていた。
鳴り響く砲撃音に、迸る閃光。敵軍の断末魔に、味方と思われる少年の悲鳴………
様々な音を聞きながら、俺は簡易収納道具に入れてあるボロボロの武装を取り出して身につける。
そして俺は………
【識別No.1:個体名・・・が轟沈しました】
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この世界は…終わっている。
突如海の底から現れた異形の生物兵器達。
そんな生物達が我ら人類の抵抗を物ともせず、陸へと進出して人類の大量虐殺を行った。
何処へ逃げても嗅ぎ付けられ、無惨にも殺された。空に逃げようとも、空を飛ぶ異形の生物に落とされた。
…そんな世界で我ら人類は謎の生物により大きく数を減らした。
そして我ら人類は数少ない生き残りが全滅する前に、大陸を捨ててとある島へと逃げたのだった。
「………長い事、戦ったもんだ」
俺たちが大陸から逃げて、大きな島に逃げて異形の生物達への対策を考え、様々な実験の果てに遂に対抗出来る手段が出来た。
…懐かしいものだ。あれは何年…いや、何十年前の出来事だっただろうか。
艦兵、
それは不思議な力を宿し、銃弾すら効かなかった異形の生物達にダメージを与え、沈めて駆逐する若い少年少女達。
その存在になった時…老化は止まり、我ら人類存続の為に戦う使命を与えられる。
艦兵…識別No.1。
それは…艦兵の試作体でもあり、初めて人類が異形の生物の抵抗を出来た存在でもあり、証だった。
…そんな存在が、とある襲撃で沈んだのだった。
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ズキズキと痛む頭を咄嗟に抑え、起き上がる。
(痛った!なんだコレ…二日酔いか?)
確か成人したばかりであり、ついつい飲み過ぎてしまったのは覚えている…だが二日酔いとはこんなに酷い物なのだろうか。
…そう思ったが、目を開けた瞬間そんな考えは吹き飛んだ。
(何処だ、ここ)
海中に居て、なぜか息が出来てるのはまぁ良い…いや良くないが。
そんな事よりも周りの景色が問題だ。
おびただしい数のバラバラになった肉片に、ギリギリ原型を留めている人型の死体。
そしてボロボロになった謎の機械。一体ここで何があったのだろうか?生贄文化だったとしてもまだマシな光景になりそうだ。
不思議に思いながらも、ボロボロになった機械に触れた…その瞬間、脳が割れるかの様な激しい頭痛が俺を襲い、俺は地面に転がった。
「があああっっぁぁぁぁぁぁあああ!!!」
そして思い出す数々の記憶。
少し裕福だが、よくある一般家庭と言って良いところで生まれた記憶。
小学生の頃にちょっとヤンチャしてた記憶。
謎の異形の生物が唐突な襲撃をしてきた記憶。
中学生に上がり、好きな人が出来た記憶。
なりふり構わずに逃げて、とある島に上陸した記憶。
高校生になり、数少ないながらも友人と楽しく賑やかに楽しんでた記憶。
親の仇の為にも少しでも力になりたくて実験体に志願した記憶。
大学生になり、大学のマドンナと少しお近づきになった記憶。
…艦兵となり、憎しみを糧に異形の生物達を沈めまくった記憶。
そんな様々な記憶が混じり合い、一つの人格が形成されると共に現状を理解出来た。
「あぁ…そうか、俺は転生したのか…そして沈んじまったんだな」
前世の死因は分からないが、俺が今の俺として転生したのは割とすぐ受け入れられた。何せ俺自身がこの世界で生きてきたのを理解してるし、記憶もある。
人格の憑依とかではない…融合をしたのだろう。
「にしてもそうか…ここはゲームの世界だったんだな」
【暁に願いを】
艦船の力を宿した少年少女達を操作し、突如現れた謎の異形の生物達と戦うシュミレーションRPGだ。
とある人類の希望となっていた艦兵が沈み、人類に暗い雰囲気が漂っている時に、一人の少年が指揮官として艦兵達を纏めて快進撃を起こしていくと言った感じのストーリーだ。
「…そんな事よりも今はどうするかって話だよな」
自分の体を見てみる。左腕と右脚は欠損、左眼も潰れ、服もボロボロ。
見ただけでも死にかけ、満身創痍と言った感じだ。むしろ何故死んで無いのかが分からない。
「死んで無いだけマシ…なのかねぇ」
そこら辺に沈んでる機械に腰掛け、上を見上げる。
遥か上の方に見える海面。その上では艦兵達が海上を滑る様に移動している。…ん?あの子ちょっと動きが悪いな。武装の故障…と言うよりも新兵かな?
ボーッと艦兵を眺めながら思う………俺って、海上に戻れるのかな。
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