AYAなキャンサバだけど楽しく生きています♪
塚本 季叡
第1話 予兆
近頃“2人に1人がなる病気”や“三大疾病”など保険会社のCMでやたらと耳にしたことはないだろうか? そう、この病気の名はがん。種類が色々あるから一口には言えないが、最悪の場合には死ぬ可能性もある厄介な病気だ。そんな病気に私はなってしまった――。
それは2018年の正月早々の話だった。トイレに行くとトイレットペーパーにうっすらと赤いものが付く。血だ。しかしその後すぐに生理が来たので生理前の軽い出血だと思って何気無く過ごしていた。そして生理が終わると何事も無かったように血は一切付かない。しかしその合間に病魔は確実に私の身体の中を蝕んでいた。今思えばこれがいわゆる大腸がんを知らせるシグナルとなっていたのだが、私はそんなことも知らずにあろうことか数か月間も見逃して放置していたのだ。もしもっと早くに病院などで検査していたら今頃はもう少し軽い治療になっていたりもしかしたら寛解していたかもしれない。そういう点では対応が後手に回ってしまったことが非常に悔やまれるが過ぎ去ったことをとやかく言ってもしょうがない。
因みにがんになりやすい原因としてよく挙げられるたばこは一切吸ったことが無い。恐らくはっきりとした原因は分からずじまいだろうが、心当たりとして考えられるのは慢性的な運動不足。それからその年の10月に部署異動したばかりで慣れない仕事をしていたことや数か月前に恋人と別れたことによるストレスは感じていたのでそれらが発症の一因になった可能性はある。後は父方の遺伝的なものもあるかもしれない。事実、曾祖母はがんで亡くなったと父から聞いたことがあるし、祖父は初期の大腸がんを患っていたが寛解している。
3月のある日。私は職場のトイレの中で驚きを隠せないことを経験した。突然トイレの水面が真っ赤な鮮血に染まった。まるでホラー映画みたいな話だが事実である。これはまずいと思い、家に帰るなり母に相談した。母からは
「痔とちゃうの? それは消化器内科で診てもらわなあかんわ」
と近所の医院に明日の朝一で行くように軽い口調で告げられた。私も“恥ずかしいけど痔だったら良いな。明日は仕事を休まなきゃいけないことを係長に電話で連絡するのはちょっと嫌だけど仕方ないか”などと今思えば能天気なことを考えていた。まさか自分ががんに侵されているなんて普通に暮らしている中で考えることなんて滅多に無いだろう。ましてや20代半ば。仮に自分ががんになるとしてももっと年老いてからの話だと思っていたのに現実は淡い妄想を遥かに超えていた――。
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