仮面食堂

@Sumomo13

食堂とおばあさん

夜でも賑やかな街の細い路地を進んだ先には、不思議な食堂があるといわれている。



チュン―

鳥が鳴いたかと思ったら、次の瞬間、ミーンミンミン、とセミに邪魔された。初夏という名前に似つかわしくないほどの暑さが体に巻きついてくる。振り払うように細路地の日陰へと逃げる。ふと、その路地の一番先に食堂、という文字が見えた気がした。恐る恐る近づくと、古びた焦げ茶の木の板に太く

「営業中」

と刻まれていた。

看板メニューはかき揚げそば。こんなところにも風情ある食堂があるのかと気付いたら店に入っていた。ちょうどランチ食べたかったし。

「いらっしゃい。」

と声が聞こえた。好きな席に座んな、と店主のおばあさんが言った。黒目の大きな目が特徴的だった。アンティークなものに包まれた店内と魅惑的な雰囲気、そばも美味しかった。なかなかの隠れ家食堂を見つけた。


それから、ランチの時間に週三で通った。かき揚げそばもかなり好きだったけど、何より騒がしく慌ただしい日々の中で心が穏やかになれる店の雰囲気が結構気に入ってたんだと思う。普段こだわりとか無かったから私自身にとっても驚くことだった。

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