第5話 如月湊の資質 その2
4月4日 朝 通学路
いつものビルが立ち並ぶ通学路を、僕はゆっくりと歩いていた。車のエンジン音やクラクションの響きが、忙しない朝の空気を切り裂くように漂ってくる。
風が髪を軽く揺らし、空を見上げると、灰色のビルに挟まれた狭い空間から覗く曇天が無機質な印象を与えていた。
心の中でつぶやき、ため息をつきながら学校へと向かう。
昨日の出来事がまるで幻だったかのように、街はいつも通りの日常を取り戻しているように見える。
その時、突然後ろから元気な声が飛び込んできた。
宮夜はいつも明るく、クラスのムードメーカー的な存在だ。彼女の元気な笑顔を見ると、自然とこちらも元気をもらえるような気がする。
少し驚きながらも、僕は笑顔で挨拶を返す。
すると、伊月は僕の顔を心配そうに覗き込んだ。
彼女の声には、心の底から湧き上がる不安が感じられた。
僕はその気持ちに応えるように、軽くうなずいた。
伊月に笑顔を見せて安心させようとするが、昨日の出来事が頭から離れず、心のどこかでまだざわついている自分がいた。
あぁ、蒼空が電紋って言ってたやつか。そういえばそんなのもあったな、と思いながら、少し後悔した。長袖で行けば良かった……
嘘ではないが、正確でもない。でも伊月には分かりやすく伝えたつもりだ。
こ、
ちょっと気になってたクラス発表イベントの結果を、ネタバレしやがって!!
僕はため息をつきながらも、伊月のペースに合わせて学校へと急いだ。
4月4日 8時10分 学校
学校に着くと、伊月が元気よく僕を案内してくれる。
その声の明るさに、少し不安な気持ちも和らいだ気がした。教室の扉を開けると、見覚えのある顔ぶれが僕を出迎えた。
彼はいつもの気だるそうな雰囲気をまといながら、ゆったりとした動作で僕に声をかけてくる。
思わず突っ込むが、雨音はそれを軽く流す。
その後、雨音は突然思い出したかのように、
雨音は淡々とした口調で言い、僕は返答に困りながらも、なんとか話題を変えることにした。
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