1 対句

001・002 思考は源

1

思考が全ての源である。思考より道理が生まれ、思考のゆえに行動が生まれる。ならば汚れた思考で語り振る舞えば、その者は苦しみを引きずるのだ、荷馬車を曳く牛のごとく。


2

思考が全ての源である。思考より道理が生まれ、思考のゆえに行動が生まれる。ならば清らかな思考で語り振る舞えば、その者は喜びをまとわせる、影が我が身より離れぬように。




Manopubbaṅgamā dhammā, manoseṭṭhā manomayā; Manasā ce paduṭṭhena, bhāsati vā karoti vā.Tato naṁ dukkham anveti, cakkaṁva vahato padaṁ.


Manopubbaṅgamā dhammā, manoseṭṭhā manomayā; Manasā ce pasannena, bhāsati vā karoti vā.Tato naṁ sukham anveti, chāyā va anapāyinī.


パーリ読経

https://www.youtube.com/watch?v=vN2_VgJ0Qso



All that we are is the result of what we have thought: it is founded on our thoughts, it is made up of our thoughts. If a man speaks or acts with an evil thought, pain follows him, as the wheel follows the foot of the ox that draws the carriage.


All that we are is the result of what we have thought: it is founded on our thoughts, it is made up of our thoughts. If a man speaks or acts with a pure thought, happiness follows him, like a shadow that never leaves him.



諸法意先導,意主意造作。

若以染污意,或語或行業,

是則苦隨彼,如輪隨獸足。


諸法意先導,意主意造作。

若以清淨意,或語或行業,

是則樂隨彼,如影不離形。




 ダンマパダはじめの二条は、日本のミームで「マザーテレサのもの」と呼ばれているそれに非常に近いものが出てきている。と言うか「思考に気をつけなさい~」のオリジンを辿って出会ったのがダンマパダである。で結局アレをマザーテレサの言葉として演出された稀代のプロデューサーはどなたなのですか?


 全ては思考が作る、というのは、荘子の記述で言う「道枢」にはまり込んでいる状態である、と考える。もとより我々は世界と一体のものなのだが、その中にあって思考を手に入れ「て、しまった」ため、そうした一体のものから外れるような考え方になってしまった(ただし本来はまったく道より外れていない、上掲経で言う「汚れた思考」に染まるため外れてしまっているよう思い込んでしまうに過ぎないのだけれど)。いいか悪いかはわからない。とは言え自分自身としては、こうして自分であると感じることができるようになった喜びを感じている。


 一方で、再び「自分でなくなる」恐怖はどうしても手放しがたい。死によって斉同の境地に戻るだけと言われても、この斉同でない自分が存在する前に何だったのかはさっぱりわからないし、仮にいわゆる前世があったとしても、なぜこうして思考を転がしているのが前世でも来世でもなく今世なのかがわからない。無論ここは荘子に言わせれば「考えるだけ無駄」なのだろう。わかっているのは今、ここにあること。ここで思考を転がしていること。これだけだし、コントロールがきくのもまたいまの思考だけだ。ならば思う存分思考を転がし、自分を満たすしかない。


 苦楽は我が思考が作る。苦境を楽と思えば楽境であるし、楽境を苦と思えば苦境である。ならば全てを楽境に、とは行くまいが、より満ち足りることのできる日々となれるよう、思考を転がすことは叶うのだ。ダンマパダが始めに思考を語るのであれば、以降はどのように思考を整えること叶うのか、が語られるのだろう。そうしたものを眺め、我が思考に織り込んでいきたいものである。

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