第20話 Bパート
仮面バトラービークルの“自動追尾”により、一定の距離を保って
『直進せよ!』
「ダメだよ!」
『何故じゃ!』
「まだ敵と決まったわけじゃないから、ひき殺すのはよくないって! たまたま集まっている一般クモの方々かもしれないよ!」
『どう見ても敵じゃろうが!』
ゴートの言葉を無視して、勝利はブレーキを強く踏んだ。クモの大群を前にして、急停止する仮面バトラービークル。
「あの、もしよろしければ、ここを通していただけないでしょうか?」
勝利だけがビークルを降りて、もみ手をしながら近付いていく。ゴートはシートに座ったまま。念のため、フォワードベルトは装着している。
「この先に、ボクの上司がいまして」
クモたちが一箇所にわらわらと
「交渉決裂!」
『そりゃそうじゃろ』
「鷲崎さんのために、ここは通してもらう! 変身!」
勝利はサムライブルーの
『ポジションチェンジせぬか?』
ゴートはやれやれといった様子でフォワードの足元に移動し、提案する。フォワードの通常モードでは火力が足りない。子分たち一体ずつのゴールにフォワードボールをシュートしているようでは、夜になってしまう。一刻も早くタクトの元に行かねばならない。
「了解!」
フォワードベルトのボタンを押す。フォワードボールが巨大化し、それに伴ってフォワードの背丈も伸びた。
仮面バトラーフォワードゴールキーパーモード。サッカーというスポーツにおいて、相手から点を取られないように守りつつ、同時に各選手への指示を飛ばす司令塔の役割を担うゴールキーパーを模した強化フォームである。
「うおおおおおおおおおお!?」
『うまくいったのぅ』
「大きくなっちゃった!」
『眺めはどうじゃ?』
「富士山が見える!」
光の巨人と同じ40メートルになったフォワードだが、地上のゴートの声は聞こえている。同時に、この優れた聴覚は他の人々の驚愕と困惑の声も拾っていた。このままでは怪物の一種と間違えられてしまう。
「行くぞ!」
フォワードはフォワードボールを蹴り飛ばした。ゴロゴロと転がったフォワードボールは、ピラミッドのように積み重なったクモたちを押しつぶす。
『よくやった!』
「これ、元に戻るには同じボタンを押せばいいの?」
『戻らずに前進するのじゃ』
「いや……戻ったほうがいいと思うよ」
巨大化には、大量のシンボリックエナジーを消費しなくてはならない。秘密結社『
しかし、正義の味方であるところの仮面バトラーが他の生物のシンボリックエナジーを奪うことはできない。体内にあるシンボリックエナジーを使い果たしてしまうと人間は活動できなくなってしまうのである。
フォワードに変身する望月勝利はその特異な体質によって、本来ならば消耗していくだけのはずのシンボリックエナジーの保有量を回復できる。だからこそ、このゴールキーパーモードはフォワードベルトにのみ実装されていた。リベロヴァルカンにはない。
『何故じゃ?』
「大きすぎて目立つから」
『ふむ』
「いろんな人の視線を感じるよ。怖がられているみたい」
『そうか。ならば、戻ろう』
「はい」
フォワードは元の大きさに戻り、変身を解除して勝利の姿となった。再び、仮面バトラービークルに乗り込む。
「ニュースになっているんじゃないかな。紋黄町に巨人出現! って」
『今後どのような敵が現れるかわからん。さまざまなポジションへとチェンジして、臨機応変に戦っていかねばならぬ。この程度で臆することはない』
「そっか……巨人が仮面バトラーだってことは、みんなに伝えておいたほうがいいよね。アポストロフィーと戦っているのだとわかってもらえれば、怖がられなくなる」
『そうじゃな。仮面バトラー事業部として、タクトが動くじゃろ』
「その鷲崎さんを助けに行かないとね……!」
勝利とゴートを乗せた仮面バトラービークルは、紋黄町南部の集合住宅へと到着した。暗雲が局所的に夕暮れ時の空を覆っている。
「ここなんだ」
『来たことが?』
「サッカー部の先輩と、あと後輩も何人か住んでる。……あ、そうだ。中学の時に、友だちの家に行ったこともあったかな」
『不穏な雰囲気じゃが』
「前はこんな感じじゃなかったと思う。なんだか、お化け屋敷みたいじゃない?」
『タクト……』
「行かなくちゃ」
『うむ。行こう』
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