第14話 Aパート
「来たああああ!」
「……何が来たのよ」
歓声を上げる
「新メンバー候補っ」
応募があると、求人サイトからメールが届く仕組みだ。希望者が入力した簡単なプロフィールと職歴を、募集側は求人サイトの管理ページから確認し、条件と合いそうならば面接の候補日をいくつか指定して、メッセージを送る。
「おお! ボクの後輩、ってことですよね?」
『こらこら。まだ雇うと決めたわけではないじゃろ?』
本日の勝利は、
「そうよ勝利くん。わたしたち、仮面バトラー事業部は、打倒『
そう語りながら、管理ページを開いて、唯一の希望者をクリックした。紋黄町といえば、この国で初めて
「あー!」
『こやつは!』
こまちの肩越しに、画面に表示された個人情報に注目する。勝利とゴートがほぼ同時に反応した。
「なになに、知り合い?」
「はい! この前、ハリネズミ型怪人と戦ったときに会いました! 学生証を見せてもらったので、名前も顔も、この人で間違いないです!」
「ふーん……あっ、
「こまっちゃんも知り合い?」
「わたしの後輩かぁ、って」
『わしは……こやつのことを、信じられん』
難色を示すゴート。こまちはページをスクロールして、経歴を確認する。職歴は空欄になっていた。
「えぇ、どうして? この前もそんなこと言ってたよね」
『どうしてと聞かれると、うーむ。ひょっとしたら、身分を偽っているのではないかな』
「学生証を偽造しているってこと? ……そんなことして、どうするのさ。バレたら大変だよ?」
「それなら、わたしが学生課のほうに確認してみようかな。せっかく応募してきてくれたのだし、できれば、疑いたくはないのだけど、念には念をね」
『すまぬ。わしの杞憂ならいいんじゃが』
こまちは携帯電話を片手に席を離れる。代わりに、お嬢様がマンガにしおりを挟んで、こまちのデスクに近付いてきた。
「この人、いくつ?」
写真を一目見て、朱未の年齢を気にしている。勝利は本人と直接会っているが、写真でもかなり若く見えた。
「ボクの一個上か……ぜんぜんそうは見えない……」
「一度会ってみたいわ」
「えっ」
お嬢様が他人に興味を示している。聞き間違いかと思って、勝利はお嬢様の顔を見た。
「何?」
「なんか、ちょっと妬けるかも」
「勘違いしないでよね。私たちの『仮面バトラー』に積極的に関わろうとしている人間が、どのような人物なのかが気になるだけよ」
「そっか」
「貴方は私の
「それは、もちろん。ボクは仮面バトラーフォワードとして、お嬢様をお守りするのが使命ですからね」
*
一方、クオート支社内。リベロ
「……なるほどなあ」
「この映像と、望月の証言。このふたつから、アポストロフィーの生み出す
リベロ部隊のリーダー格、
「ということだけど、どうする?
「先にヨナガの意見を聞こうかなあ?」
「タクトなら、わざわざ聞かなくとも、わたくしの意見などお見通しでしょう?」
「怪人はすべからく滅すべし」
「せいかいっ!」
夜長は子どものような笑顔になって、大きく手を叩く。タクトと夜長は、同じ青雲学園大学音楽科の卒業生である。学生時代には成績を競い合った仲間だ。一つの騒動があって、お互いに音楽家の道は歩まず、タクトは祖父の持つコンマへ、夜長はクオートに入社した。
「ショーブはどうなん?」
「同じだ」
「せやろな。ショーブは、怪人にやり返したいんやもんね」
「ああ。クモ型怪人を倒し、アポストロフィーを潰す!」
「威勢がええなあ。……リベロヴァルカンは、まだ渡せんけど」
タクトの言葉に、拳をぐっと強く握る勝風。勝利の許可が下りるまで、つまり、リベロヴァルカンの改修が終わらなければ、勝風は戦えない。
「この話、ショーリにはしたんか?」
「していない」
「さよか」
「アイツのことは、兄のオレがいちばんよくわかっている。怪人が人間だと知ったら、アイツは戦わなくなるだろう」
「ウチからショーリに話すのは、ええの?」
「戦う気力をなくさないよう、うまく話せるのならな」
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