はじめまして
芽春
礼儀正しく
変な夢を見た。
舞台は自分の家で、自分、妹、母、家族と団欒している。
しかし、明らかにおかしい者が一名。
見知らぬ赤ちゃんがいた。
と言っても、特にその赤ちゃんにおかしい様子は無い。
ぷにぷにと可愛らしく、無邪気な笑顔を見せていて。
夢の中で、僕はその子を愛で、ほっぺを触って戯れていた。
そうしながらも、やっぱりこの子が誰なのかは気になる。
うちは母子家庭だし、母に再婚の予定も無い。
なので新しい兄弟という線は消える。
知り合いにもこんな赤ん坊が居る家庭は無い。
僕はたまらず母に問うた。
「この子なんて名前なの?」
「『吉行(よしゆき)』君よ。
声で聞いたのに漢字まで分かるのは夢特有の便利さだ。
その情報を受けて僕は考える。
この吉行という名前には聞き覚えが有るような。
吉行と言えば……坂本龍馬の愛刀「陸奥守吉行」か?
いや違う。
もっと近しいところで聞いた気がする……
あ、思い出した。叔父の名前だ。彼は「裕行」という名前だった気がする。
そこまで気づいた所で目が覚めた。
意識はぼんやりしているが、夢の内容はハッキリ覚えていた。
そういえば叔父は最近結婚をしていたな。
職場で縁があった年下の人と……いやまさか。
それからしばらく経ち、叔父は子宝に恵まれた。
叔父とお相手、共に若くは無かったが天運に恵まれたようだ。
そして今、僕は遊びに来た叔父夫婦に赤ん坊の相手をさせられている。
吉行君はようやく首が座り、一人で座ったりハイハイができるようになったりしたくらいで。その様はあの夢とそっくりだった。
しかし、まあ。
生まれてくる前からいとこなんかに顔を見せに
来るくらいだし、ずいぶん礼儀正しい性格なんだな。
……正座で、「よろしくお願いします」とでも言いたげに
うやうやしく頭を下げる彼を見て、僕はそう思った。
はじめまして 芽春 @1201tamago
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