俺は好きなように転生していろんな人生を歩む

角煮 食う

転生は何度したっていい

 俺は椎名しいな賢吾けんご日頃からアニメ漫画小説ゲームをしまくっているただの高校生。俺は朝起きたらゲームをしてログボを受け取って、朝飯食いながらアニメ見て、学校の休み時間もアニメ見てゲームして、帰ってきたら漫画か小説読んでと俺はありとあらゆる2次元に触れてきただが拗らせることはなくいたって真面目な生徒を演じていたそんなある日。


 俺は夢を見た俺が見てきたアニメ漫画小説ゲームの世界が全て少しずつあるカオスな状況だ。


 空にはモンスターと悪魔と天使とロボットが飛んでいたり、地上には数々の見慣れた敵モブがいたり、そして俺の好きな主人公たちが各々で戦っていたり夢のような状況だった。

(まあ実際に夢だからな)


 俺はその光景をずーっとぼーっと見ていた夢にしては長くないか?かれこれ1時間は経っているぞ俺は不思議に思いつつ夢から覚める方法を模索していた。


 ベタに頬をつねってみたり、ビンタしてみたり、わざと敵モブの標的になり攻撃をくらいに行ったりと様々なことをした。

(夢だからか痛くはないんだよな)


 一向に起きる気配はなかった。


 逆張りで寝てみるかと思い寝てみたらビンゴ!目が覚めたと思ったら俺はポツンと焚き火がある空間にいた。まだ夢かと俺は落胆した。


「なんじゃ貴様なぜここにおる?」


 ヨボヨボの爺さんの声がして振り返って見ると某魔法映画の校長のような姿の老人が立っていた。


「いや俺も目が覚めたと言うか何というか…」


 俺は現状をうまく言い表せなかった。


「まあ良いところでお前さんそこがどこか分かるか?」


「いや知らないけど」


「そうか死んだことすら分からんとは」


 俺はこの時考え事(アニメの事)をしていたためこの老人の言っている事を聞いていなかった。


「まあ良い取り敢えずお前さんどんな所に行きたい?」


「うーん取り敢えず異世界は無しで」


 俺はよく考えずに返事をしてしまっていた。


「そうか異世界は嫌か…なら2次元はどうじゃ」


 その言い回しだと本当に某校長を思い出すからやめて欲しい。


「2次元?どんな?」


「ワシはお前さんらの2次元には疎いんじゃお前さんの記憶の中にある2次元で良いか?」


 この爺さん何の話してんのかよくわかんねぇけど俺の好きな世界の夢を見させてくれんのかな?


「いいぜ。でもザ異世界みたいなやつはやめて欲しい」


「分かった。そのまま行くのは流石に大変そうじゃからどんな願いも叶えてやろう」


「じゃが3つだけじゃぞ」


 今度は某神の龍かよと内心でツッコミつつ


「1つ目は俺が満足するまでとことんやらしてくれ」


「2つ目は俺にとって都合よく進んでくれ」


「最後は……最後だけ保留って事には出来ねぇか?」


 自分でも傲慢さが良く分かる願いだとは自負しているがどんな願いも叶えてやろうって言われたらねぇ


「分かった。最後の願いは決まった時にワシの名前を心の中で叫べその時にまた叶えてやる。ワシの名は…そう言えばワシに名前など無かったわ」


 爺さんは何も気にしていないように笑った。まあこんな所で1人だと誰にも会えないし誰とも会話出来ないからな。


「よし!爺さん決めた最後の願い」


「なんじゃ言うてみい」


「爺さんと好きな時に会話できるようにしてくれ」


 爺さんが独りぼっちで寂しそうだったから俺が話し相手だと少しは気が紛れるだろうと俺なりの配慮をしたつもりだがどうだ


「お前さんは優しいのうこんな老耄おいぼれに」


「へへまあな。爺さんも1人じゃ寂しいだろ?」


 爺さんも喜んでくれたみたいでよかった。


「それじゃあお前さんを転生させるからな。うまくやれよ」


 ん?今転生って言ったか?


「爺さんちょまっ



 俺はよく見慣れた世界にやってきた。そこは某死にゲーの世界だ。


 俺は爺さんに転生させられる前にこのゲームを思い浮かべていた。そうしたらこの世界に転生した。俺はこのことから思い浮かべた世界に転生すると結論付けた。


 俺は胸の高鳴りが抑えられない。今にも走り出したい気分だった。


 いけない爺さんに問いたださなくちゃいけないことがあるんだった。


(おーい爺さーん!)


 俺は心の中で叫んだ。


「なんじゃもうギブアップか?」


 いや開始数秒でギブアップするかとツッコミたかったがそんな場合じゃない。


「さっき転生って言ってたけど俺死んでねぇぞ」


「いやいやお前さんがさっきの所に来ておった時点ですでに死んでおるわい」


 は?俺寝てる間に死んだ?


「という事は俺は死んで今この世界に転生したって事でオケ?」


「そうじゃ。聞きたいことはそれだけか?」


「ああそれだけだありがとな爺さん」


 俺いつの間にか死んでたんだ死んだっていう確証も実感も何にも無いから全然わからなかった。


 まあ今はこの世界を楽しもう!


(ああやべーここ死にゲーなの忘れてたー思いっきり胸斬られた。俺せっかく転生したのにもう死んじまうんか?情けねぇ情けなさ過ぎて泣けてくるわ次があるんなら次こそは悔いの無いように生きよ)


(あれ?俺生き返ってるでもセーブポイントに生き返るわけじゃないんだちょっとゲームとは変わってるのかな?)


 俺はそのまま順調に最初のボスまで辿り着いた。うろ覚えではあるが一応動きは覚えているからいけるはず!そう意気込んでいたが…


(ああやべー俺の体だから思うように動かねぇしダメージも死にはしねぇダメージでもめちゃめちゃ痛くて動き鈍くなるし、アイツらってめちゃめちゃ凄かったんだなぁ次はどこで復活するのかわからんが頑張ろ)


(あれ?ボス戦の目の前で復活したこの世界難易度高いとかいうレベルじゃないけど親切設計なんだな)


 それから俺は何度も挑戦したがその度に死んだ。


 俺はこのままじゃ無理だと悟りレベル上げをした35だったレベルをなんとか50まで上げた。これならと思っていたが…


 ダメだった防具着込もうが盾受けしようが痛ぇもんは痛ぇんだよ!俺はもうキレそうだった。


「なんじゃお前さん行き詰まっておるのか?」


「爺さん助けてくれよこのボスがめちゃめちゃ強くてさ」


 俺は藁にもすがる思いで爺さんに助けを求めた。


「うーんと言ってもワシに何か出来ることはないしのう」


「そこを何とか頼むよ爺さん」


「うーん…お前さんの2つ目のお前さんにとって都合よく進むっていうのを変えるか?」


「いいのか?!」


(ていうかぜんぜん都合よく進んでなくね?俺めちゃめちゃ苦労してるんですがどうなってんだ)


「代わりの願いを言うてみろ」


 ここは慎重に決めないといけないと思い俺は長考した。なんて事はなく


「俺のレベルカンストで敵の弱さ1番下にしてくれ」


 なんとも頭の悪そうな願いにしたのだ。


「わかった。それじゃあ今回こそうまくやれよ」


「ありがとな爺さん」


 そこからはもう無双状態だった。


 武器の強化段階は低くても能略値が高いから敵モブはワンパン出来るしクソ思い防具着てもそれなりに動けるしで最高だった。


 それからは難なくいけると思ったんだが現実はそう甘くはなかった…


 結局は死にゲー敵モブに囲まれりゃ死ぬしボスは相変わらず強いしでトータル1000回ぐらいは死んだかな?ってぐらい死んでしまった。


 だがそれもここで終わりだ。


 この死にゲーはラスボスが弱いことで知られている。かく言う私もこのラスボスは一切の苦労なく倒した。たが今は違うきちんと用心しなくてはすぐに死んでしまう。と考えていたのだが…


 あっさりと倒してしまった。


 レベルカンストなのも原因の1つだろうがやはりラスボスが弱かった。


 なんやかんやあったが無事?この世界を終えられた。


(おーい爺さーん!)


 俺は心の中で叫んだ。


「なんじゃ終わったのか?」


「そうだよこの次俺何したらいいの?」


(流石に2周目は辛いのでやめたいのだがどうなるんだろう)


「わかった取り敢えず帰って来い」


 帰るってどこに?と思っていたら、あのポツンと焚き火がある所に戻ってきた。


「お帰りどうじゃった?楽しかったか?」


「楽しかったけど辛いが勝ったわ」


 流石に疲弊していたから俺は眠ってしまった。


 ふと目が覚めた。


「爺さんごめんよ待たせて。疲労が凄くてさ」


「まあ良い次はどの世界に行く?」


(なんか爺さんすごいフランクになった気がするけどなにか良いことでもあったんだろうか

 )


「ていうか次ってどういう事?」


 俺はてっきりこの1回で終わりだと思っていたんだがまだあるらしい。


「お前さん1つ目の願いでとことんやらしてくれって言っておったじゃろ」


「ああそんなこと言ったけど取り敢えず今は休みが欲しいかな」


 体はまだ斬られた感覚を覚えてるし、精神は疲弊してるからいっぱい休みが欲しかった。


「それじゃあ今度はコメディの世界にでも転生させるか?」


「いやそれは見ている方が面白いからなしで」


(コメディの世界はそれはそれで体がもたん)


「今は普通の異世界の方がほんわかしてて良いわ」


 俺は精神を休める為に可愛い女の子がいて普通に友達が出来て学校で青春を送れる殺伐としていない世界を思い浮かべて言った。


「わかった。それじゃあ転生させるからな」


「おう!今度は心構えもばっちしだぜ」



 俺は好きなアニメの世界に転生した。


 その世界は魔法や錬金術、ダンジョンそして冒険者など様々な異世界の要素が入り乱れている世界だ。


「賢吾ー起きてるー?」


「おきてるよー」


 俺は一階におり顔を洗い朝食を食べる。


 白ごはんに味噌汁焼き鮭たくあんこれぞ日本の朝食と言わんばかりの献立だ。


「どう?美味しい?」


 母さんが優しい声で聞いてくる。


「美味しいよ!」


 俺は元気いっぱいに返事をした。


(ああ幸せだ)


「そうそれはよかった」


 母さんはニコニコしていた。その顔を見ると俺まで嬉しくなった。


 ピンポーン


 家の呼び鈴がなった。


「ヤバ!何にも用意してない!母さんちょっと待つように言っといて」


「はいはい」


 今日は幼馴染の秋葉あきはしょうと登校する予定だったのだがのんびりしすぎた。


 3分で身支度をすまし家を出る


「行ってきます」


「行ってらっしゃい」


 これからは幸せな一切殺伐としていない日常が始まっていく。


「遅いぞ賢吾!」


「ごめんのんびりし過ぎた」


 こいつは金沢かなざわかける幼稚園の頃からずっと一緒で兄弟みたいな感じだ。


「さ、はやく行くよ!」


 この子は神無月かんなづき秋葉あきは翔と一緒で幼稚園からずっと一緒で兄妹みたいな感じだ。


 俺たちは急足で学校に向かった。


 キーンコーンカーンコーン


「ギリギリセーフ」


「ほら3兄妹はやく座れ」


 俺たちはいつも3人でいるから3兄妹と言われている。そんな俺たちが通っているのが都立魔法科高校だ。


「今日は魔法基礎やっていくぞー」


 この人は俺たち1年3組担任のさかい雄介ゆうすけ先生だ。堺先生はいつも少し気怠げなのが理由で生徒からはかなり好かれている。


「魔法には何種類の属性があるか分かるやついるかー?」


「はい」


 秋葉が手を挙げた。


「神無月」


「地、火、水、風、空です。」


 秋葉は賢くクラスのリーダー的な存在だ。


「正解だそれじゃあこの5つの属性を何と言うか分かるやつ」


「はーい!」


 翔が手を挙げた。


「金沢」


「5大属性でーす!」


 翔はいつも元気だ。こいつが元気じゃない時は見たことが無いぐらい元気だ。


「正解だ、でももう少し声のボリュームは落としてもいいぞ」


 クラスが笑いの渦に包まれた。


 翔はあははとはにかんだ笑顔を見せていた。


 秋葉はふふっと笑みを浮かべた。


 俺もそんな皆んなの顔を見ていると自然と笑みが溢れた。


 楽しい授業が終わり昼休みになった。


「あっ…俺朝急いでたから弁当忘れた…」


「仕方ねぇなぁ俺のおかずやるよ」


「私もあげるよ」


「ありがとう2人とも」


 俺はいい友達を持ったと改めて認識した。


 その後は最近ハマっているアニメや魔法の事錬金術にも興味がある事など他愛もない会話をしていたら昼休みが終わった。


 午後からは実技だ。


「お前ら魔法は便利だがとても危険だ!その事を念頭に置いて魔法を使うこと!いいな!」


「はい!」


 熱血教師という言葉がぴったりなこの先生は郷田ごうだ浩司こうじ先生だ。筋骨隆々でとても逞しく生徒思いのとてもいい先生だ。


「名簿順で4列に並べ」


 俺たちは素早く並び先生の指示を待つ。


「よし!1番前の4人から間隔を5m空けて正面に魔法を行使しろ。威力が高く無い限り正面の的に出来るだけ当たるように行使しろ!」


 この訓練場はイメージとしては弓道を練習する射場いばのような感じで正面20m程先に円の的がありそこに向かって魔法を行使するという感じだ。


「よし!次の4人!」


 翔と秋葉の番になった。


「しゃあ!いくぜ!」


 翔はいつも通り元気だ。


 翔はかなり魔法の才能があり16歳にしては異例の魔法精度だ。


「流石だな金沢!5発命中だ!」


「ありがとうございます!」


 この歳で1発当たったらかなり才能があると言われる程なので翔の才能がどれほど凄いか分かる。翔の得意な属性は火だ。


 ドーン!!!


 急な轟音にクラス全員音がした方を向く。


「え、あれ?私こんなチカラあったっけ?」


 轟音の正体は秋葉の魔法だったようだ。原作でも秋葉は精度には欠けるが威力はトップクラスだ。秋葉の得意な属性水だ。


「お、おい神無月これお前がやったのか?」


 郷田先生もビックリしている。


「すいません。こんなに強くやるつもりはなかったのですがどうしてかこうなってしまったんです。」


 秋葉は負い目を感じているようだった。


「いや凄い!凄いぞ!神無月!」


 郷田先生は息を荒くして秋葉を褒めていた。


 まあ規格外のルーキーが2人も出てきたらそりゃあびっくりするよねとクラスの全員が思ったことだろう。


「えーと…気を取り直して次の4人!」


 今度は俺の番だ。


 俺はレベルカンストと願ってしまったから全てのステータスがカンストしてしまっているのだ。5大属性も全て完璧に使えるしどうしよ。


(極微量の魔力で魔法を行使したとしても秋葉の威力を越えかねない、慎重に慎重に魔力をスポイト1滴落とすぐらいの感じで)


 ドーン!


(ふーなんとか秋葉よりは威力を抑えれたぞ1番使い手の多い火属性だしあんまり目立たないだろう)


「凄いな椎名!神無月には及ばないがお前もかなり才能があるぞ!今期の生徒は豊作だな!」


 俺の肩をバシバシ叩きながら郷田先生はガバガバと笑っている。


「よし!次の4人!」


 カスッカスッカスッ


(こいつ今3発連続で同じところに撃っていたどんな魔力操作だよ翔以上の可能性もあるぞ)


「惜しいな橘!でも3発も掠るのは凄いぞ!」


 郷田先生はよく見てなかったのか気付いていない。このたちばな太一たいちという男かなり凄腕の魔法使いかもしれない。


 なんやかんやあったが無事実技は終わった。


「おーい賢吾今からゲーセン行こうぜ!秋葉一緒に来るか?」


「私は今日家族と用事があるから2人で行ってきたら?」


「そうかそれならしゃーねぇな、よし!賢吾いっちょ行きますか!」


 否が応でも俺は連れて行くつまらなようだ。


「行くから肩は組まなくていい歩きづらい」


「なんだよつれねぇな」


 翔は少し残念そうに言っていたが歩きづらくてこけてしまっては楽しめるものも楽しめなくなるから仕方なくだ。


 駅近くのゲーセンに着いた。翔は一目散にメダルゲームコーナーに行った。


「賢吾!はやく来いよ!」


「はいはい今行くよ」


 翔はとても楽しそうにメダルゲームをしている。筐体にメダルを飲み込まれても楽しいのか俺の方を向いて悔しそうにしながらも笑みを浮かべていた。


 俺もメダルゲームを楽しみつつ翔とどっちが多くメダルを獲得出来るかと対決をした。結果は僅差で俺の勝利だった。


 そんな楽しい時間を過ごしていたらあっという間に辺りは暗くなっていた。


「いやー今日は楽しかったな!」


「そうだな」


 こんな楽しく幸せな日々がずっと続いて欲しいと思う。


「じゃあな!」


「また明日な」


 俺たちは互いに挨拶を交わし帰路につく。


「ただいま」


「遅かったねどこ行ってたの?」


「翔とゲーセン行ってた」


「そう楽しかった?」


「結構楽しかったよ」


 俺は今日あった事を母さんに話した。


 母さんはすごく楽しそうに俺の話を聞いていた。


「母さん今日の晩ご飯何?」


「今日はハンバーグよ」


「やった!母さんのハンバーグ大好き!」


「まだ時間かかるから先にお風呂入っちゃいなさい」


 俺はゆっくり暖かい湯船に浸かって今日あったことを思い出していた。


(橘ってやつ魔法精度凄かったけど友達になれたりしないかなぁ)


「賢吾ご飯出来たよー」


「はーい」


 俺はハンバーグを楽しみにしつつ風呂から上がった。


 廊下でもハンバーグのいい匂いがした。


 リビングに入るとよりハンバーグのいい匂いが充満していた。


「いただきまーす!」


「どうぞ」


 俺はハンバーグを口一杯に放り込み白ごはんをかきこんだ。


 幸せが舞い込んで来たような感覚だった。


「ふふ賢吾は美味しそうに食べるわね」


 母さんは慈愛に満ちた表情で俺を見ていた。


「母さんのご飯美味いんだもん!」


 母さんはもう1度ふふっと笑い一緒に晩ご飯を食べた。


 寝る前翔からメールが来た。


[明日早く学校行って魔法の練習しようぜ!秋葉は賛成してくれてるしどうだ?]


[わかった今日と同じように俺の家に寄ってくれよな]


[あたりまえよ!今度は待たせんなよw]


[分かってるよ6時には起きて準備しとくから]


 俺はいつの間にか寝ていた。


 時間は6時20分予定より遅くなったが7時までは時間あるしゆっくり準備していた。


 準備を終えてケータイでゲームをしていると家の呼び鈴が鳴った。


「おはよ翔、秋葉」


「今日は準備万端だな!」


「時間無駄にしないようにはやく行こ」


 俺たちは訓練場に着いた。誰かがいた。


「おーい!あんたも朝練か?」


 翔が何も気にせずその誰かに話しかけた。


 その誰かは一瞬こちらを見たがすぐにどこかに去ってしまった。


「なんだよアイツ折角善意で声かけてやったのに」


 珍しく翔が不機嫌だ。


「まああの人にも何か事情があったのかも知らないんだし仕方ないよ」


「そうですよ翔、彼には彼なりの事情があったり人見知りなのかも知れないからそんなに怒っちゃダメですよ」


 俺と秋葉が翔を宥めて魔法の練習に移った。


「切り替えていくぜ!」


 こう言っているが昨日より精度が落ちていた。


「翔何発当てられるか勝負しようぜ!」


 翔を元気付けようと勝負を待ちかけてみた。


「臨むところだ!」


 なんか単純過ぎて少し心配になった。


 翔は昨日の記録を更新して7発も当てた。俺は魔力精度があまり良く無いっぽく3発だった。


「よっし!俺の勝ち!」


「やっぱり翔の魔力精度は凄いな」


 シンプルに感服した。


 秋葉は火力を伸ばす方向にチカラを入れているっぽく朝なんて気にせず轟音を響かせていた。


 生徒が続々と登校して来た。


「俺たちも教室行くか」


 そう2人に言い俺たちは教室に向かった。


 ホームルームが始まった。


「えー今朝近隣住民の方からクレームが来ました。朝練をするのは良いが騒音問題になりかねん練習は控えておくようにとの事だ。」


 秋葉は耳を真っ赤にしてうつむいていた。


「今日は魔力精度と魔力回路についてやっていく。この2つの共通点がわかるやついるかー?」


「はい」


「神無月」


「生まれ持ったもので、鍛錬しても精度や能力があまり向上しない事です。」


「正解だ」


 流石は秋葉だな。


 俺はこの世界の全ての魔法が使えて原理まで理解させられているから退屈で仕方ないが自業自得だ。


「だから金沢の魔法精度が郷田先生に凄いと言われたんだ。火力は魔力量でどうにかなるが精度簡単に言えばコントロールはほとんど生まれ持った魔力精度で決まるから才能って言われてるんだよ」


「金沢のイメージで言えば一撃必殺型なのにまさか技能派だったとはな」


「俺もビックリしてますよおれの性格と真逆なんですから」


 翔は苦笑いしながら答えた。


「さっき言ったけど火力は魔力量でどうにでもなるから基本的には魔法を行使して魔力を減らして回復させての繰り返しだそれで魔力量は次第に増えていく。まあ筋トレみたいなもんだ」


「だが魔力回路はどれだけ魔法を行使しても増えたり変質したりすることは無い。血液型みたいなもんだ」


 ピンポンパンポーン


『火事です。火事です。校舎2階の実験室で火災が発生しました。在校生の皆さんは速やかに避難してください。』


「堺先生!階段まで火の手が回っていて逃げられません!」


 原作にこんな展開はなかった筈なのに俺がこの世界に来たことで内容が変わった?それとも似ているだけで全く別の世界になったのか?そんな事を考えてる暇はなかった。


「誰かこの中に風か空属性使えるやついないか?水属性を行使できるやつはどんなに微力でもいい!火の手を弱めてくれ!」


 この教室は3階だ普通に飛び降りては死にかねん。堺先生は最善の選択肢を提案したが返事はなかった。というか皆んなパニックでまともに話を聞いていなかった。ほとんどは腰を抜かして絶望していた。


 堺先生が膝から崩れ落ちそうになるのを抱えこう答えた。



「任せてください!」

 俺は自信に満ちた顔で答えた。


 火が教室に入ってこないように水の壁を作り地面に地上から5m程の大きさまで膨らませた空気の塊を空属性で作り風属性で5人をゆっくりと窓の外に出しその空気の塊に下ろした。その作業を俺以外全員避難するまで続けた。


「待って賢吾は賢吾はどうするの」


 秋葉が心配で泣きそうになりながらも問いかけてきた。


「他の教室の皆んなも助けないといけないから。大丈夫俺に任せとけ!」


 秋葉はまだ涙を浮かべて不安そうな顔をしていたけど俺の言葉に頷き避難した。


 俺は全身に水をまとい火の中に飛び込んで他の教室に向かった。


 2組の生徒は水属性を行使できる生徒が多くいたが魔力がかなり消耗していた。


「大丈夫か?今助かるからな」


 俺はそう言い全員を3組と同じ手順で助けた。


 1組は地属性を行使できる生徒が何とか持ち堪えていた。


 俺はその地属性の壁に追加で壁を作り1組から3組まで一気に水属性魔法を行使して火を大方消火した。


 その後消防車と水属性を行使できる先生が2階を消火させて難を逃れた。


 俺が最初から水属性を行使しなかったのは俺のせいで誰かが死ぬのを恐れたからだ。


 結局2階は実験室や資料庫といった教室だけだったからこの火災での被害は建物だけで済んだ。


 今回の事はニュースや新聞で大々的に取り上げられ一躍学校の英雄になった。


 家に帰ると母さんに泣きながら心配されたがよく皆んなを助けたねと褒められた。俺は助けてよかったと改めて思った。


 次の日の昼休み俺の話題になった。


「いやーマジで賢吾凄かったよな!みーんな助けちまうんだぜ!男なのに惚れるかと思ったぜ」


 なんて翔が冗談混じりに褒めてくれるのも悪くない。


「でも私は本当に心配したんだからね」


 今にも泣き出しそうな顔で言ってきた。


「でも俺がやらないと皆んなを助けられなかったかもしれないし、俺は現に今生きてるんだからいいじゃん」


 俺は秋葉を元気付けようと言った。


「そうだけど…もし死んじゃったら泣く人がいるって覚えておいて」


「分かった。その人たちが泣かないで済むためにも俺は死なない」


「しみじみするより今は賢吾を褒めてやろうぜ」


「そうね賢吾皆んなを助けてくれてありがとう」


 その笑った顔には少し涙が浮かんでいた。


 俺はもう秋葉を泣かせないと心に決めた。

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