第4話  影の中の秘密

 翌日の午前7時半、捜査会議が開かれた。

 例のごとく、結城は報告をした。

「第2の殺人の被害者は、**佐伯美咲** 、40代の女性で、魚崎匠の元同僚でした。佐伯は同じアウトドア用品メーカーで経理部に勤務しており、魚崎とは長年の付き合いがありました。彼女は冷静で理知的な性格で、職場ではその堅実な仕事ぶりが評価されていました。

 佐伯は仕事に対して非常に責任感が強く、数字に厳格な一方で、同僚たちには優しく面倒良い存在でした。魚崎とはプライベートでも友人関係があり、彼女のアドバイスを魚崎が参考にすることも多かったとされています。


 しかし、最近になって会社内での経理処理に関するトラブルが発生し、彼女は何らかの不正に関与していた可能性が浮上していました。魚崎の死後、彼女は何らかの恐怖に怯える様子を見せていたようです」


 結城は、美咲が見つけた通天閣の歴史に着目した。通天閣は、戦時中に様々な改修が施され、特に地下には秘密のトンネルが作られていたという。そのトンネルは戦争が終わった後に封鎖され、長らく忘れ去られていた。


「これが影の中の秘密かもしれない…」結城は美咲に語った。「このトンネルが事件の鍵だとしたら、犯人は何かを探しているに違いない」


 美咲と藤堂は、地下トンネルの調査を進め、ついにその入り口を見つけ出した。だが、トンネル内部は崩壊寸前で、危険が伴うことが判明する。


「このトンネルが閉鎖されたのには、何か理由があるに違いない」藤堂警部は慎重に調査を続けることを指示した。


 **藤堂誠**は、大阪府警に所属するベテラン刑事である。50代半ばの藤堂は、長年にわたり数多くの難解な事件を解決してきた経験を持ち、同僚からの信頼も厚い。堅実な捜査手法と鋭い観察眼で知られ、特に刑事課内ではその名を轟かせている。


 藤堂は、クラシック音楽を深く愛する人物でもある。捜査が行き詰まった際や集中力を高めたい時、彼は執務室で静かにクラシック音楽を流しながら思索にふける。特にベートーヴェンやショパンの楽曲を好んでおり、これらの音楽が彼の思考を整理し、事件の手がかりを導き出す手助けをするという。


 また、藤堂は捜査の最中に喫煙する習慣を持っている。彼の机の上には、常に煙草と灰皿が置かれており、煙草の煙が静かに立ち昇る中で、藤堂は事件の細部に目を凝らし、冷静かつ論理的に思考を巡らせる。藤堂にとって、この一連の行動は単なる習慣に留まらず、彼の捜査スタイルの一部として確立されている。


 大阪府警の内部においても、藤堂の存在は際立っており、若手刑事たちからもその経験と知識を学ぼうとする者が後を絶たない。彼の捜査に対する厳格さと徹底したプロ意識は、チーム全体に良い影響を与え、府警全体の士気向上にも寄与している。


 藤堂の捜査手法は極めて慎重かつ計画的であり、その冷静沈着な姿勢から、捜査対象に対しても感情に流されることなく事実を見極める力を備えている。そのため、彼が担当する事件は高い確率で解決へと導かれている。クラシック音楽と喫煙を伴う彼のスタイルは、一見すると時代遅れにも見えるが、藤堂にとっては捜査の真髄を体現するものとなっている。

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