第5話

 少年しょうねんうみていた。

確証かくしょうしかったんだ。きみぼくだということはわかっていたけど、だれかがここにたのははじめてだったから」少年しょうねんった。

「このネックレスがその確証かくしょうになるんですか?」おれった。

おぼえていないの?」少年しょうねん自分じぶんのポケットからネックレスをしてこちらにせた。

 にぎっているチェーンはおれっているのとちがって光沢こうたくはなっている。れているレンズは四角しかくい。

見覚みおぼえはあるけどどこでたのかおぼえてないですね」おれった。

「もしかして、きみげられたのか……」かれった。

げられた?」

「この浜辺はまべにね」

「それはつまり……」

わすれられたということだよ」

だれにです」

真野まの夕希ゆうきに、だよ」

「でも、おれおれですよ。真野まの夕希ゆうきだ。ちゃんとここにいる」おれ自分じぶんからださわった。これが現実げんじつではないというのだろうか。

きみはなんらかの理由りゆう本体ほんたい真野まの夕希ゆうきこころからはなされたんだ。はなされた理由りゆうこころたりはない?」かれった。

 おれだまってかんがえたがなにもおもいつかなかった。

とくにないです」おれこたえた。

「そうか」かれ残念ざんねんそうに砂浜すなはまあしした。

きみはどれくらいここにいるんですか? 何歳なんさいなんです?」

「11さいだよ。きみはずいぶんおっさんだな」

「そりゃ、まあね。おれが11さいのころってこんなふうだったかな」

おぼえてないだけだよ」

「11さい以来いらい、ずっとこの浜辺はまべにいるということか」おれった。

「そうだよ」かれはレンズをじっとていた。

「ということは、おれも?」

「そういうことになるね」

「これから、ずっと?」

残念ざんねんだけど」かれはこちらをあわれんだた。


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