第3話

 「退学になっちゃうよ」


 私が、平然として言うと取り巻きの令息達は尻込む。


 「た、退学になんてならないわよ」

 「そう言っていたじゃない。人を貶める様な事をすれば退学になりますって」

 「………」


 もしかして、貶めるという意味がわからなかったのかしらね。


 「仲良くしないとダメなんだよ。そうだ。一緒に叔父様の家に行かない?」

 「へ?」


 四人は、いきなりの言葉に目をぱちくりとする。


 「お母様に叔父様に一月に一回顔を見せる様に言われているの。でも一人で行くの何となく怖くて。一緒に行ってくれると嬉しいな」

 「うん……」


 令息の一人が頷くと、他の二人も頷き、令嬢も仕方ないわねと頷いた。


 「悪かったわ」


 こうして和解後、彼らを引き連れてプロンテヌ侯爵家へと出向いた。


 「お友達が出来たの!」


 そう言って、少しはしゃいで見せ、プロンテヌ侯爵は驚いた様子を見せるも安心した様子だ。

 お母様の手紙にも年齢が近い子とお友達になったと書いた。

 大人も安心させた事だし、勉強に励みますか。


 5年はあっという間に過ぎ、私達5名は無事薬師になれた。

 彼らは卒業して、それぞれの家に帰り貴族学園に通う。

 私は、経営家科でさらに2年勉強を受ける為学校に残った。


 「まあ、あなた、同じ領の子なの? 私もよ」

 「そうなのですか。お姉様、宜しくお願いしますね」


 経営家科は、一年毎にペアになって授業をする。それが、同じ領から来たセセリア様。5つ年上の17歳のご令嬢。

 銀のストレートの髪に瞳で、凛々しく美しい。

 彼女は、おしゃべりだった。


 「弟がね、あなたと同じ年なのよ。学園卒業後、領にある経営家科に通う予定なの。それでね、私は、王都に住む令息に嫁ぐからこっちで経営家科に通う事になったの」


 聞きもしないのに話す彼女は楽しそうだ。


 「彼ね。三つ年上で今同じ学校にいるのよ。薬師科。だから週末こっそりデートするの」


 本当に楽しそうだな。私には、婚約者すらいない。まあ今は、デートだなんて余裕ないけどね。

 なんとしても2年で卒業するつもりだからね。

 一年間、彼女とペアを組み、次の年には違う令息とペアを組んだ。

 彼は、対照的に無口いや寡黙だった。黙々とこなすタイプらしい。

 こうして経営家科も無事卒業して、後は2年実践を積むだけだ。


 「お父様、お母様。ただいま!」

 「「おかえりなさい」」


 懐かしい我が家。

 うん? 知らない人たちが家に居る。

 お友達でも呼んでいたのかしら? にしてもくつろいでいるわね。


 「あー。今まで黙っていたのだが、私の妹家族だ」


 お父様が、三人をそう言って私に紹介した。

 今まで黙っていたと言うけど、お父様に妹がいるのを知っているし、たぶん一度ぐらいは会った事はあると思うけど。

 なんだか、歯切れが悪いわね。


 「実は、事業に失敗して……一緒に住んでいるんだ」


 最初の方は私に囁くように言ったお父様。

 一緒に住んでいるって、聞いていないんだけど!


 「一度お会いした事があったと思うけど、覚えてないわよね。しばらく御厄介になる事になったの。この子は、あなたと同じ年のアンナ」

 「こんにちわ。アンナです。よろしくね。レネット」


 大きな茶色の瞳に少しくすんだ朱色のふんわりとした髪のアンナが、ちょっとぶりっ子ぎみに自己紹介。

 確か、ウルミーシュ子爵一家だったわね。


 「よろしく。で、いつまで居るの?」

 「できれば、アンナが学園を卒業するまで居させてほしいのよ」


 なんですと!

 この世界では、そういうのを出戻りというのよ。まあ、旦那もついてきているから違うのかもしれないけど。


 「彼らには、私の手伝いをしてもらっている」

 「薬師の資格を持っているの?」


 持っていないとお父様は、首を横に振った。経営家の資格があると言わないところをみると、それも持ってないのよね。つまり、雑用しかできないと。


 妹だからって住まわせるのはどうなのよ。一人ならまだしも3人よ。

 私が言うのもなんだけど、私が王都の学校に通っていたからそこまで余裕ないと思うのだけど、大丈夫だったの?

 でもまあ、私がどうこう言っても仕方がないので、にっこりとほほ笑んでおくのだった。

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