第2話

 今年の入学者は、薬師科100名、経営家科40名の計140名。その中で、薬師科と経営家科両方受かったのは私一人。いや両方を受けたのは、私だけだった。

 本来は、経営家の資格を有する者が薬師を雇う。自分で営むとしても伴侶がどちらかの資格を持つ。我がグリンマトル伯爵家もそうだ。お母様が経営家の資格を持っていた。

 経営家科のみだと3年通う事になる。


 寮の部屋は、薬師と経営家で分かれており私は、薬師の寮で一人部屋だった。


 「いい? 王都に私の母親の兄上でプロンテヌ侯爵がいるから何かあったら頼るのよ。ちゃんとお願いをしておくから。月に一度は、手紙を頂戴ね。それと……」

 「お母様。大丈夫よ。お手紙も書くし、ちゃんとプロンテヌ侯爵にも月に一度、顔を見せるわ」


 私がそう言うと、安心したようにお母様は頷いた。


 「まさか、両方とも受かってしまうとは驚いたわ。確かに本は読んでいたけど。叔父様もあなたを大絶賛していたわ。跡取りでなければ、嫁に欲しかったって」

 「嫁!?」

 「もちろん、孫によ。それにしても、学園に通う頃まで会えないなんて寂しいわね」


 お母様は、シュンとしてしまう。

 いずれ薬師か経営家になる為に学校に通わせるつもりだったとしても、家から通える学校で王都ではなかったはず。

 貴族は、15歳から2年間、貴族としての規律を学ぶ為に学園に通う。

 私は、王都に13歳までいる事になり14歳から実家で経営を実際に学びつつ、15歳から学園に通う事になる。

 留年と言う制度はあるけど、私には1年しか猶予はない。学校は、二重で通えないのよ。

 頑張らないとね!


 入学式は、次の日だった。

 制服に着替え、食堂に行くと注目される。

 薬師科も経営家科も令息が多いのだ。その中で最年少の令嬢。


 「はい。お名前は?」


 どこぞの令嬢が、私におぼんを渡してそう尋ねて来た。

 大体の生徒が、学園を卒業してからここに通う。もし受かっても留年して、途中で通えなくなれば意味がないからだ。

 彼女も今年17歳以上のご令嬢だろう。私より10歳も上だ。

 学園を卒業していれば、私の様な子供を苛めたりなどしない。


 「はい。初めまして。私は、レネット・グリンマトルと申します。お姉様、宜しくお願いします」


 ここは、幼さを利用しておこう。


 「私は、ミチル。宜しくね」


 こうして、私はお姉様達に優しくしてもらえるのだった。


 入学式は、薬師科と経営家科との合同で、薬師科と経営家科の教室の建物の真ん中にある講堂で行われる。

 眠くなるお偉いさんのお話を聞き、在校生の挨拶に新入生の挨拶を終え、先生の紹介が行われた後、各教室へと移動する。


 私は、薬師科1年1組。1クラス20名。先生は1名。

 自己紹介で、今年10歳の令息が3名と令嬢が1名いると判明。その他は、17歳以上の令嬢と令息。

 たぶん、学園に通う前の者達は、私達5名だけなんだと思う。


 入学式当日から授業はあり、これからの流れの説明後、早速事業がはじまった。

 最初は、薬草について。

 調合は、明日から行われるらしい。楽しみだわ。


 授業が終わり、夕食まで部屋で一人まったりと過ごす。

 そうそう日記を書かないとね。経営の本に書いてあったのよね。自分の事もそうだけど、天候や大きな出来事などを書いておくと、後々役に立つと。


 こうして、学校の生活は順調そうに見えた。けど……。


 「あなた、生意気なのよね」


 デーンと、私の前に立ちはだかる10歳の令嬢。その横に3名の令息達。

 一か月程経ったある日、鼻息荒く声を掛けられた。

 生意気と言われてもね。あなた達よりできるから生意気って事なんでしょうけど。


 私は、わざと首を傾げてみる。


 「いい? 私より下なのに私より出来るわけないでしょう! 私は、薬師の名家の令嬢なのよ!」

 「そうですか」


 一応、田舎だけど私もそうなのよね。


 「本当に生意気ね! わからせてやりなさい」

 「え?」


 彼女が私を指さし言うけど、取り巻きの3名はどうしたらいいんだという顔。

 そりゃそうよね。問題を起こせば退学だもの。

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