第3話 注意 恋愛注意報発令?!

 今度は、デパート内でショッピングを楽しむ人々が行き来する通路を、カートを押す専業主婦たちを避けて、魚の振る首の向きに右に左へふり回される!!


 僕が嵐のように通り過ぎると、決まって後方から強風によって、飛ばされたような悲鳴がした。当たり前か……。でも、ひたすらにデパ地下を目指した。こうなってしまったら、仕方ない。と、諦めたんだね。


 エスカレーターは幸い空いていた。


 空いていたといっても、人はいる。僕は地下へと降りるまで、今度は狭いエスカレーター内で魚が高速で右に左に首を振り続けるので、踊った。それはタコ踊りのようであって、誰が何と言おうと魚踊りだろう。


 ……。


 魚は、多分、喜んでいるのだろうけど…。


 僕は周りの視線が凄く痛いぞ。

  

 やっと、エスカレーターから飛び出ると。


 やった!!

 デパ地下だ!!


 それじゃあ、このまま鮮魚売り場まで走り通すのみ!!


「どうか死なないでね。目的地はすぐそこだよーーー!」


 僕は魚に言い聞かせるが。

 ビチビチと激しく動いている魚は、至って元気だった……。


 ゴールイン! 地下一階の鮮魚売り場まで、なんとか走り通せたな。でも、体力が限界だよ。幸運にも鮮魚売り場に、水の張った手頃なバケツがあって、その中に魚を入れられた。


「はあ……疲れた……」


 両足がガクガクとするし、腕もいたいので、魚を見守りながら一息入れていた。ふと、あたりを見合わすと、大勢の人が僕に大注目していた。


「あ、いや。僕の魚のペットがダダをこねてね。金魚鉢から逃げ出してどうしても、魚が食べたいって言うんだよ」


 とても恥ずかしいので、僕が得意な冗談を言うと、皆信じられないものを見るかのような目でこっちを見つめ。迷惑そうな顔をしてきた。だけど、一人だけクスリと笑ってくれた人がいた。

   

 その笑ってくれた人は、僕と同じ年恰好の女の子だった。その子は、クスクスと僕の顔の方を向いて、一通り笑うと、このデパートのエレベーターホールの方へとスタスタと歩いて行ってしまう。


 僕はその子がとても気になって、魚の入ったバケツごと持ち出しては、エレベーターホールへと走った。

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