晴れ時どきに青空に一目ぼれ

主道 学

第1話 注意 空海現象発令!!

「内山さん。確かに、空海(そらかい)現象というのがありますよね。ゲリラ豪雨のように雨が、バケツの中の水をひっくり返したように降って、雷に見舞われる現象とは少し違って、異常気象の影響で、海に大量発生した大型竜巻の影響で、空から時々魚も降る現象です」

「ええ、2027年に提唱されたその現象は、人々の注目を浴びて、それから、その日。世界でトレンド入りになったとか……」

「そうそう。そうです。そして、この現場付近に一匹の魚が落ちたのでしょう」

「まあ、確かに、私もそうなんじゃないかなあとは思いますね」

「近年増えているそうですよ」


 

 テレビをさっさと消して、花柄のテーブルからトーストを口に含んだら玄関へと走った。

 今日も夏真っ盛りだ。

 サンサンとした太陽からの強い日差しが、肌を焼いていく。

 

 いつもの大通りに繋がる公園に着く頃には、トーストを食べ終えた。


 周辺に常緑樹が立ち並ぶ公園の大時計を前に、デパートまで電車を使おうか、それとも、歩いて行こうかな。と考えた。


 学校は今日から夏休みに入ったので、友達と新しくできたデパートを見に行こうと思ったんだ。


 結局、歩いて。いや、走ることになった。

 大通りから駅へ向かう最中に、ゲリラ豪雨のような信じられない大雨になってしまったからだ。雑多な通行人も迷惑そうな顔をして、傘を差している。まるで、バケツをひっくり返したような。でも、幸い雷はない。


 ジャバジャバと降りだす雨に、傘を忘れてしまった僕は走りに走ることになった。でも、否が応でもデパートで雨宿りすることにしたんだ。


 どうせすぐに雨が止むとも思っていた。

 その時は……。


 周囲の人々も、きっとそう思っているはずだし。みんな雨宿りの場所を探して、傘を差しながらの慌ただしい大移動をしている。


 と、その時。


 僕の目の前に、一匹の魚が空から降ってきた。


 なんだろう?


 この魚?


 青々とした普通の魚だ。

 

 魚屋さんが、雨で濡れるのを恐れて逃げる際に、魚の入ったバケツを盛大に蹴ってしまった? それとも、近くに水族館があるから、そこで爆発でも起きたのか?


 あ、そうか!

 これが空海現象だろう!

 都内では珍しいんだ。


 初めて目にする生きた魚は今も、ピチピチと雨に濡れた地面で跳ねている。けれども、僕には、何故かその魚が苦しそうにしているように思えてきた。


 パクパクと口を開閉しているし。

 跳ねる力もどんどん落ちてきているから。


 激しい大雨が突然に止んだので、ぼくはデパートに行くことも忘れ、スマホで友達を呼ぶことも忘れ……。

 

 魚を掴んで、近くに水槽か何かを探してやることにした。

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