『現代ドラマ』なのか『恋愛』なのか?

崔 梨遙(再)

1話完結:1300字

 水原京介は営業職、その日は重要なお客さんの接待をしていた。そのお客さんは風俗が好きだった。まず飲みに行ってから、お客さんお気に入りの人妻専門の風俗店に入った。


 お客さんは、お気に入りの馴染みの女性を指名して先に出て行った。事務所からホテルへ行くスタイルの店だった。京介に、馴染みの女性はいない。正直、誰でも良かった。どうでも良くて誰を指名するか決めるのに少し時間がかかった。


 そんな京介に、店長が話しかけた。


「水原さん、特に指名したい女性がいなければ、指名していただきたい女性がいるんですけど」

「どんな女性なん?」

「新人なんです。風俗も未経験。名前はみなみさんというのですが、信頼できる水原さんに、彼女の初めてのお客さんになってほしいんですよ」

「ほな、その女性でええよ」


「お待たせしました、どうぞ」


 事務所から出たら、髪の長いスレンダーな女性が待っていた。


「みなみです。よろしくお願いします」


 か細い声。小声だ。女性は俯いた。接客業で俯くのはどうかな? と思ったが、風俗未経験ということなので、“やっぱり最初は緊張したり恥ずかしかったりするのかな?”と思い、一人で納得した。そして、ホテルへ。


「湯船にお湯を溜めます」

「あ、みなみさん、風呂の準備は必要ないで」

「え! どういうことですか?」

「Hなこと、せえへんから」

「じゃあ、なんでこういう店に来たんですか?」

「お客さんの接待で来ただけ」

「私は何をしたらいいんですか?」

「何もせんでええよ、話したいなら話相手になるけど、寝たければ終了時間まで寝ててもええし」

「本当に、それでいいんですか?」

「うん、だって、僕には妻子がいるから」

「奥さんに気を遣ってるんですか?」

「うーん、だって浮気したくないし、浮気されたくないし」

「でも、“風俗は遊びで浮気じゃない”と言う男性が多いんじゃないですか?」

「うん、多いね。せやけど、逆の立場で考えてしまうねん。もし嫁が女性向け風俗に行ったとしたら許せるのか? 僕は許されへん。だから、僕は風俗でもHなことはせえへんねん。嫁以外の女性とはしない」

「そうなんですか?」

「結婚して10年経つけど、まだ結構嫁と夜の営みをしているし、欲求不満でもないねん。まだ嫁が相手をしてくれるから」

「奥さん、幸せですね」

「どうやろ? 嫁が幸せやったら嬉しいんやけど」

「もし、奥さんが風俗で働いたら、どうしますか?」

「それはツライなぁ、でも、まずは理由、事情を聞く。行動には必ず理由や事情があると思うから」

「旦那には言いにくい借金のためだとしたら?」

「金額を聞く。それから、嫁と一緒に返済計画を立てる。ツライ時に支え合うのが夫婦、家族やからな」

「……」

「あれ、なんで泣いてるん?」

「あなた、ごめんなさい!」


 みなみ、いや、京介の嫁の純奈はウイッグを取った。それから京介にしがみつき、泣きたいだけ泣いた。



 純奈は事務所に行き、スグに店をやめた。純奈は友人の借金の保証人になって借金が出来たのだった。これから家に帰って夫婦で返済計画を立てる。



 お客さんには適当に言い訳をして、先に帰ってもらった。京介は純奈と手を繋いで帰った。







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『現代ドラマ』なのか『恋愛』なのか? 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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