音楽とファンタジーっぽい感じで。タイトルはそのうち。

吉備響

第1話 兄との出陣

「味方の敗北、閣下は消息不明です。」


戦地から戻った兵士が兄様に報告している。攻め込んできた共和国を迎え撃った王国軍は総崩れ、父は生死不明ではあるが生きている可能性は低いようだ。


「兄様···」


兄様の顔は青ざめ、言葉が出てこない。私も血の気が冷めていることがわかる。冬でもないのに寒気がする。

父様はどうなったのか、私達はどうしたらいいのか。


「レイシア、軍を集めよ。魔術士であるお前を残す事はできない。領地の残った兵を掻き集め、共和国を追い返さなければならない。」


「兄様···」


「領地の魔術士は私とお前、あとは爺やと代官をしているロフトと子供二人だ。父上に従った魔術士に生き残りがいればよいのだが。」


兄は優れた剣術と陣地を作るのに適した土魔法を使う。私はゴーレム、と土を少し、あとは基本程度だ。爺やは植物の生育で有名ではあるが戦には向かない。ロフトも風属性だが力が弱くあまり効果的な運用を出来ない。子供は情報がない。実質的には兄と私だけの戦力だろう。


私のゴーレムも今まで運搬以外に使ったことはない。しかし負ければ私達は領地も今までの立場も全て失う事になる。


改造したゴーレム馬車にウッドゴーレムを積み込む。私が同時に使えるのは2体、損傷も考えて3体積んでいる。侍女は連れていけないので庶民が着るようなワンピースを何枚か用意させた。あとは水。私も自分の分程度は魔法で用意できるが兵士の分もいる。


子供2人が連れてこられた。魔術士だろう。可哀想だが戦力だ。


「君たち名前は?」


赤毛の子が答える。

「レムレス。こっちの緑はタタン。」


「レムレスとタタンは何ができるの?」


「僕は石魔法。土、砂を投げやすい大きさに固めたり、邪魔な大きな岩を崩したりできる。」


「それはいいね。タタンは?」


「こいつは話すのが苦手なので···タタンは浄化です。部屋の掃除が主ですが、食材を腐りにくくできます。あと飲めない水も飲めるようにできます。」


「戦闘向きではないけど役に立つわね。荷物の用意は出来ている?食べ物、飲み物は用意するから着替くらいね。今の時期はまだ肌寒いからマントがあれば寝やすいけど、あなた達は私と一緒に馬車で寝るからダイジョブかな?」


「お嬢様と一緒ですか?」


「魔術士は貴重だからね。これで負ければお兄様も私も終わり。あなた達には期待しているわ。」

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