第45話 引っかかり
翌朝。日曜にもかかわらず、
職員室に居た教師に許可をもらってから教室に入り、忘れ物を通学鞄へ回収した。その拍子、藤井の席が目に入った。
連動して
(……僕は……間違ってない……)
静まり返った教室で、鵜飼は何気なく自席に座っていた。
「鵜飼? あんた何やってんの?」
聞き覚えのある鼻声が、鵜飼の不意を打った。反射的に声がした方を見ると、とても冷え切った表情をした女子生徒が、教室の入口に立っていた。
マスクをしていないため、女子が
「……み、見郷?」
鵜飼はビクッとしながら立ち上がった。
「あんた驚きすぎだって」
見郷は冷ややかに言った。
「ていうか見郷――」
軽率に父親のことを聞けるはずもなく、鵜飼は咄嗟にその先の言葉を飲み込んでいた。
「何? 何か言いたいことあるの?」
「ううん……何も……」
「あっそ」
見郷は怠そうに腕を前で組んだ。
(いつもの見郷……だよね……)
見る限り、いつもの調子だ。とても父親を失ったとは思えない。
「ねえ……。見郷は、何で学校に来てるの?」
「忘れ物取りに来たのよ」見郷は颯爽と自分の席へ向かった。「コレ、取りに来たの」
見郷は机から筆記用具を出し、通学鞄にしまった。
「鵜飼は何してたの?」
「……僕も忘れ物……」
フッと、見郷はバカにするように笑った。
「あんたって結構マヌケね。そこは見た目通りってやつ?」
「あ、うん……」
「さっきから静かすぎてキモい! いつもみたいにギャーギャー騒ぎなさいって!」
見郷は足に体重を乗せた。女の子の体重のためか、まあまあ痛い程度の痛みであった。
「わ、分かったから……。とりあえず離れてよ……。ね?」
離れ際、見郷はローキックを放った。それは結構痛かった。
「……ねえ、鵜飼さ、学生証持ってきた?」
見郷は腕を前で組みながら、鵜飼に問うた。
「うん、持ってきてるけど……。それがどうかしたの?」
「ああ、ちょっとね」
見郷は肩まで伸びた黒髪を、鬱陶しそうに後ろへ払った。
「あんたさ、これから暇? あの彼女と約束とかしてない?」
口に何も含んでいないはずなのに、鵜飼はむせてしまった。
「か、
鵜飼が慌てふためくと、見郷はニマッと口元を緩ませた。
「ようやくいつもの勢いが出てきたようね」
見郷は何だか嬉しそう。
「じゃあ、今から鵜飼にちょっと付き合ってほしいんだけど?」
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