魔法少女な世界観だけど明らかに俺だけ時間帯が違う件
カラスバ
第1話 EP0
郁江なおが魔法少女になった理由なんて、それこそ日常の延長でしかなかったのだ。
元々魔法少女という些か子供染みたモノが好きだった彼女は、ソシャゲ「ウィッチ・クラフト」にハマっていた。
学生だったから微課金プレイをせざるを得なかったが、それでもゲームを心の底から愛してプレイしていたし。
だからこそ、彼女は魔法少女として選ばれたのだ。
「お見事! 君は魔法少女に選ばれたよっ」
……「ウィッチ・クラフト」というゲーム自体が魔法少女となる存在を選別するものの一つである事を知ったのはその後だった。
兎に角、彼女はそれから魔法少女スフレに変身し、この世界に存在する悪の存在と戦う事となったのだ。
闇から生まれる魔物、モンスター。
そしてその親玉であるレイドモンスター、縮めてレイダー。
それらを倒し、人々を守る存在こそが魔法少女であり、そして魔法少女スフレは確かに魔法少女として活躍をしてきたのだった。
お菓子魔法を用いて飴玉銃とかフルーツナイフ、最終手段としては魔力のほとんどを消費する事によって敵そのものをお菓子に変えたりして。
可愛らしく如何にも子供らしい見た目をしている、何より16歳の割に童顔なので猶更子供っぽく見られる彼女だったが、それでも戦闘面で言うのならばトップクラスのセンスを持っていたのだ。
そんな彼女はいつも通り魔法少女だけが使えるデバイス「ウィッチホン」を確認していると、一通のメールが届いている事に気付いた。
……まさか、それに悪質な魔法が仕込まれている事なんて気づかずに彼女はそれを開いてしまい。
気づけば、彼女は異世界へと召喚されていた。
メルヘンチックな画風の異世界。
いきなり異世界へと飛ばされて困惑しているのは彼女だけではなかったし、その中にはスフレにとって顔馴染みの魔法少女の姿もあった。
友達の魔法少女、リオル。
駆け寄って来るリオルが何か話しかけてくるよりも前に――その存在は現れた。
「君達には、これから脱出ゲームをして貰うもん」
不気味なマスコット、モンポ。
その外見はパンダにも見えるが、しかしその口(に見える部分)から告げられたのは不愉快にもほどがある現実だった。
「これから沢山のミッションが与えられるけど、それをクリアしないとこの世界から抜け出せないもん!」
ちなみに、とそれは付け足す。
「ミッションはそれぞれ別のものが与えられるけど、この中には人を殺すだけで脱出する事が許される、殺人鬼も混ざっているから気を付けてもん♪」
そう言い放ち、姿を消したモンポ。
……困惑していた魔法少女達だったが、「ウィッチホン」に転送されてきたミッションを各々確認し、その後何も言わずに姿を消してしまう魔法少女もいた。
とりあえず、スフレはリオルと情報を共有する事にする。
「その……貴方はどんなミッションが与えられたの?」
「私は「ゴブリンを五体倒せ」だった。その一って書かれているから、多分その二もあるんだろうね」
「そっか」
「貴方は?」
「私も、同じ」
「……ならば、一緒にゴブリンとやらを探して、協力して倒そうか」
二人は頷き合い、それから紫色に渦巻く空に飛びあがり、そして探索を開始するのだった。
幸い、ゴブリンと呼ばれるモンスターはすぐに見つかり、そしてそれ自体も極めて弱いモンスターだったが故にあっさり二人は倒し切る事に成功する。
ミッションが完了された事を告げる、恐らく次のミッションの指示であろうメールが届いた音。
しかしながら、二人は「ウィッチホン」を確認する事が出来なかった。
何故なら――そこにレイダーが現れたからだ。
「くっ……」
それは一言で言うのならば、巨大なドラゴン。
ただし二足歩行で人のようになっているため、どちらかと言うとドラゴニュート……竜人間と表現するべきかもしれない。
どちらにせよ――それは素早い身のこなしで二人に襲い掛かって来て、そしてスフレが作り出した飴細工のシールドを容易く砕いてしまう。
「ま、不味い……!」
腕に生えているブレードがリオルに迫る。
目の前で友人が真っ二つになる未来を幻視したスフレは思わず目を瞑り。
――しかしながら、その未来は訪れなかった。
が、きぃん!!!!
「危ないな」
――その少年は。
一見、普通の学生服を着た男の子。。
金髪のウルフヘアで中性な顔立ちをしている。
ブレザーを着ている少年の手には機械仕掛けのロングソードが握られていた。
どうやら少年はそれを用いて攻撃を防いだらしい。
「おい、トカゲ野郎――俺が相手してやる」
そう言い、少年一枚の金属で出来ているかのように見える一枚のカードを取り出し、その表面に触れた。
……そのカードを剣に差し込み、そして彼は不敵に笑いながら、言う。
「変身!」
刹那。
その機械仕掛けの剣からガラスみたいに透明な刃が出現する。
と、同時に少年の身体が青白い燐光によって包み込まれ、そして中から白銀の鎧を見に纏った魔法戦士(?)が姿を現した。
「モンスターだから言葉を理解しているか分からないが、一応伝えておいてやるよ」
戦士は言う。
「地獄への切符は片道だぜ?」
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