第104話 微睡の中で

旧ゲイルズカーマイン地域での戦闘の合間、フレミアとマリリアによるジュードの治療は続けられたが、聖者の力によって治療が飛躍的に進み、戦闘後に出血する事が少なくなっていた。それに伴ってジュードの体も熱を取り戻し始めている。だが連日の帝国軍との激しい戦闘でジュードは疲労していた。この日もフレミアとマリリアによる治療が行われるのであろうが、食事と翌日に向けた作戦会議を終えて自分にあてがわれた寝所に戻ったジュードは既に微睡まどろみの中にいた。


フレミアとマリリアは薄手の寝巻きにケープを羽織り、いつもとは違う面持ちでジュードの寝所を訪ねた。フレミアが何か話しかけて来たようだが、半ば眠っているジュードはうまく聞き取れない。何も応えずにいると、2人がベットに上がってジュードの服を脱がせ始めた。治療が始まる。ジュードは2人に身を任せた。


暫くして治療が終わった。いつもなら治療が終わる頃にはジュードは熟睡しているが、この日はまだ僅かに意識を残していた。フレミア達はじきに部屋を出て行くだろうと思っていたが、2人はそのままジュードの左右で横になっている。徐々に2人の体温が伝わってくる。


「治療が終わったのなら自分の部屋に戻るんだ。」


ジュードは目を閉じたままで2人の退室を促した。あまりの眠気に、うまく声に出来たのか、あるいはもう夢の中なのか自分でも分からない。


「あとは私達に任せて、ジュードはもう休んで下さい。」


ジュードの耳元でそう言うとマリリアは更に体を寄せ、半ばジュードの体の上に覆い被さった。フレミアも腕の中に入り込んでジュードの肩に自分の頭を乗せている。ジュードは2人をどかそうとしたが体に力が入らない。睡魔の限界に達していたジュードの意識は遠ざかっていった。


翌朝目が覚めると2人の姿はなかった。



第七部 完

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る