第七部

第90話 ジュードの目覚め

時はアゼルヴェード達がハルザンド王都を陥落させた頃に遡る。


ハルザンドの北にある港町、そこからかなり離れた場所にある海にほど近い横穴の奥でジュードは目を覚ました。小枝や漂流物で組んだ粗末なベッド、そこに布切れや草を重ねて寝具とし、その上に裸で寝かせられていた。1人の裸の女性がピタリとジュードに体を合わせて眠っている。女性とジュードの上には寝袋の代わりだろうか衣服が被せられていた。


「ここはどこだ、なぜ俺は裸で眠っていたんだ。」


「まぁ、ジュード様、ようやく起きられたのですね。良かった。ジュード様のお体がとても冷たくて、添い寝して温めていたのですよ。」


女性はマリリアの専属侍女となっていたフレミアだった。会話のために上半身を起こし、裸が露わになっても、フレミアは気にしていない様子だった。確か決闘裁判で関係のあったヨミナス家の長女で、ジョルジアの反乱鎮圧に貢献した女性だった。


「未だお体が冷たいですね。もう少しこのまま温めさせて下さい。」


「いや、若い未婚の女性にそんな事はさせられない。」


「うふふ、そうなふうに思って頂けて嬉しいです。でも今はジュード様のお体を元に戻す事が私にとって一番大事なんです。だから嫌でも添い寝させて頂きます。」


笑顔を向けながらフレミアは再びジュードに覆い被さった。肌を通じて彼女の体温が徐々に伝わってくる。それに伴って自分の体の滞った血が少しずつ流れ始めたような感覚になった。そうして暫く2人で横になっていると、横穴の入り口付近で人の気配がした。


「フレミアさん、ジュード様が起きられたのでしたら少しお話しさせて下さい。そちらに行っても大丈夫ですか?」


「ちょっとお待ち下さいね。」


フレミアはそう声の主に応えると、自分は裸のままで先ずはジュードの衣服を丁寧に着せ、次いで寝袋の代わりにしてシワだらけになった自分の衣服を慌ただしく着た。服を着せられた時に気付いたが、未だ自分の体を自由に動かせる状態ではなさそうだった。フレミアが水の入った器をジュードの口へと運び、ゆっくりと飲ませてくれた。


「クリスさん、お待たせしました。こちらへどうぞ。」


入ってきたのは、クリス、ガイ、それにゴルドルという名の異形の者だった。

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