第87話 連合国軍の反撃
ハルザンド王国を襲った悲劇は各国へと伝わり、直ぐに新王アゼルヴェードを討伐する為の軍が差し向けられた。これはゲイルズカーマイン帝国が解体された際に締結された条約に依拠するもので、他国から責められた際に周辺国が救援すると言うものだった。西方諸国から、アルムヘイグから、ジョルジアから、そして旧ゲイルズカーマイン地域から、4方向からの進軍だった。これに対するアゼルヴェード軍は、旧ハルザンド国軍を闇森人の下で再編成し、各地域からの討伐軍に備えた。西方諸国方面はイェリアナが、アルムヘイグ方面はシルリアが、ジョルジア方面はマリリアが、旧ゲイルズカーマイン方面はケララケが率いていた。
アゼルヴェード側はその後も北の大陸から部隊が次々と到着しているが、兵数的には連合国軍の方が遥かに多い。しかしその分だけ補給部隊も多く、進軍速度を遅くせざるを得なかった。一方でアゼルヴェード側は少数で機動力があり、自国内のために有利な戦場を確保し易く、また補給の面でも有利だった。
神性を持つケララケだけでなく、精霊石によって力を得たマリリア達も同様に普通の攻撃は受け付けない。強力な攻撃で一方的に連合国軍の兵を薙ぎ倒していく。加えて闇森人の矢による遠距離攻撃は正確無比で、近付く連合国軍の兵を次々と射殺ろしていった。連合国軍側は数を頼みに飽和攻撃を仕掛けるが、その準備が整う前にアゼルヴェード側は機動力を活かして戦場を移動してしまい、痛撃を与える事が出来なかった。
特に連合国軍側を悩ませたのは、神装具の使用によって光を纏ったマリリア達の存在だった。光を纏ったその姿は、連戦連勝で大陸を駆け巡った英雄王ジークを連想させる。その姿が現れると、兵達はどうしても及び腰になってしまった。
連合国軍は3ヶ月程度は粘ったが、被害の拡大により戦線の維持が難しくなると、撤退せざるを得なかった。
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「次はこちらの番だな。先ずはアルムヘイグ、次にジョルジアを落とせ。」
アゼルヴェード軍は連合国軍の撤退を確認するとアゼルヴェードの掛け声で反転攻勢を仕掛けた。アルムヘイグ方面を守備していたシルリラを中心とし、西方諸国方面のイェリアナ、ジョルジア方面のマリリアが合流してアルムヘイグへと侵攻した。この侵攻に合わせて王都からアゼルヴェードも出たが、基本的には女達の戦いを後ろから眺めるだけだった。ケララケはハルザンド王都の守備についた。
シルリラ、イェリアナ、マリリア、それにアゼルヴェードを含めた4隊は、兵数こそ少ないが、アルムヘイグ国軍では防ぐ事が出来なかった。僅かな期間で王都が陥落し、ハルザンドと同様に王族は全て斬首、統一教は弾圧、合わせてシルリラの家族も斬首された。アルムヘイグの守備にシルリラの部隊を残し、その他の3部隊は次のジョルジアへと向かった。
前年に発生した反乱で疲弊していたジョルジアが陥落するのは更に早かった。ジョルジア王都への攻撃ではマリリアが先陣を務め、瞬く間に王宮まで攻め落とした。王宮にいた父王マルスと王太后マルグリットはマリリアが自身の手で射殺ろした。ジョルジアに於いても、王族の斬首、統一教の弾圧が実施された。
こうしてアルムヘイグとジョルジアの歴史は幕を閉じた。
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