第86話 ハルザンド王都の陥落

ケララケに主人と呼ばれた男、名はアゼルヴェードと言う。この男が連れて来た兵はこれまでとは違い闇森人と呼ばれる褐色の肌をした背の高い種族だけだった。彼等は、ある者は文官として、またある者は軍人として専門の知識技能を有するいわゆるエリートで、アゼルヴェードが率いる一団の中核だった。


アゼルヴェードが乗って来た軍艦には200名の闇森人が同行していたが、軍艦は北の大陸へとって返し、また次の一段が港町へ送り込まれてくる。そうして第2陣、第3陣の各400名が送り込まれるまで、アゼルヴェードは港町に留まった。


「第3陣が到着しました。」


「よし、編成を終えた部隊から進軍せよ。俺が着くまでに城塞都市とやらは制圧しておけ。」


寝所でケララケからの報告を聞いたアゼルヴェードは直ぐさま指示を出した。寝所の奥のベッドではマリリア達が霰もない姿で横たわり、静かな寝息を立てている。指示を受けて部屋を出ていったケララケを横目に、アゼルヴェードはベットへと潜り込み、寝ている女達を愛撫し始めた。


ーーーーーーーーーー


闇森人の進軍は速やかに始められ、5日後に城塞都市を囲んだ。相手が少数と侮ったハルザンド国軍は打って出たが、闇森人の軍には全く通じず、直ぐに城壁の中に戻り、硬く門を閉じた。闇森人の弓兵は精強で、門の上に立つハルザンド兵を確実に射抜いていく。そうして城門を守る兵が駆除されてから闇森人の軍は城門破壊に取り掛かった。闇森人の軍が城門を突破するのに半日と掛からなかった。


城門が破られてからは一方的な蹂躙が始まった。兵も民も関係ない。闇森人は出逢ったそばから城塞都市の住人を射殺し、或いは斬り殺していった。


城塞都市が制圧されてから2日後、アゼルヴェードが到着した。ケララケやマリリア達も同行していた。港町へと移送されていたゴルドルはそのまま港町の守備を命じられた。


「次は王都だな。女達の力も見せてもらおう。」


数日後、アゼルヴェードが率いる軍はハルザンド王都の城門に近い位置に布陣した。軍の前にはマリリア、イェリアナ、シルリアの3人が立っている。シルリアは魔術を放ち、凄まじい音を立てながら城門や城壁を破壊していく。マリリアは同時に2本3本の矢を放ち、手当たり次第にハルザンド兵を射殺していった。2人のその攻撃は、闇森人よりも、また以前のマリリア達による神装具の攻撃よりも、遥かに強力だった。


シルリラが城門が破ると、イェリアナを先頭に闇森人達が王宮へと進み、立ち塞がる兵を切り倒していった。王座にはイェリアナの父であるイェガス王が座っていたが、イェリアナは会話する事もなく父王を切り殺した。病床にあったイェルシアは敵軍の王宮への侵入を知って既に自害していた。その他の王族は全員が斬首され、政務は闇森人の文官に引き継がれた。闇森人の軍の一部は周辺都市の制圧に向かい、次々と制圧していった。


数日後にハルザンド王が打倒され新たにアゼルヴェードが王になった事が宣言された。ハルザンド王家の歴史は否定され、王家に関する全ての記録文書は破棄された。合わせて統一教の信仰を禁止する旨が布告された。教会関係者は徹底的に弾圧され、宗教関連の書物は焼かれた。


長い歴史を持つハルザンドの歴史はこうして幕を閉じた。

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