第70話 ヤンキリングの叛逆
応接室から会議室に場を移して査察が始まった。会議室は入り口から奥に向かって長く、そこに高級そうな長机が置かれている。入り口の右手は窓側、その窓側にヤンキリング侯爵と財務担当が座りその後ろに護衛4名、反対側にはマリリアが座りその後ろにジュードとガイとクリスの3名が立っていた。
「この様に領地の収益と王家へ治める金額は例年と同じ水準です。ですが新たに農地開発を始めましたので、その資金を捻出する為に増税が必要でした。数年は領民にとって苦しい時期が続きますが、先々は領民も豊かになる筈です。」
「なるほど、分かりました。」
「ご理解いただけて何よりです。それで殿下、他にどの様な説明が必要でしょうか?」
「そうですね、もう直ぐ現れると思います。」
「現れる?」
ヤンキリング伯爵が質問しかけた時に会議室の入り口が開かれ、フレミアと、縄で縛られたゴードンが現れた。唖然とするヤンキリング達を横目に、フレミアはゴードンを引っ張ってマリリアの近くまで進んだ。ゴードンはモゴモゴと何か話している様だったが、猿轡のために聞き取れなかった。何人かの兵がフレミアを追って入って来たが、兵達の前にガイが立ち塞がった。
「マリリア殿下、反乱軍を率いていた男を連れて参りました。この男がヤンキリングと繋がっていた証拠も押さえています。」
「フレミア、よくやってくれました。この男を捕らえたのはお手柄ですが、何より貴方が無事で良かった。」
「なっ、裏切ったのかフレミア。このワシの恩を忘れたか。」
「金銭を援助する代わりに体を要求する様な下衆な者に恩義など感じません。私が恩義を感じるのはマリリア殿下だけです。」
「いっ、いつからだ。」
「お黙りなさい、ヤンキリング卿。先ずは反乱の話が先です。仮に卿が内乱罪の首謀者か共謀者であれば例外なく死罪となりますよ。」
ヤンキリング侯爵は頭に血が登ってドス黒い顔になっている。
「えぇい、どうやらマリリア殿下は気が触れた様だ。兵達は何をやっている、早くマリリア殿下の身柄を拘束せよ。その他の者は斬り捨ててしまっても構わん。」
「血迷いましたか、ヤンキリング卿。これは明確な叛逆行為ですよ。」
「どうかご心配なく。少しの間、身柄を拘束させて頂くだけです。王家との交渉が終わりましたら解放いたします。それまでに私が殿下を再教育しましょう。」
ヤンキリング侯爵がそう言い終わると兵達が一斉にマリリアへと迫ったが、その兵達をジュードが剣で払った。ジュードはマリリアとフレミアの前に立ち、次々と襲いかかる兵を斬り伏せていく。近くではガイも同様に兵を斬り伏せていた。ヤンキリングの護衛も後から入ってきた兵も次々と倒されていった。ジュードはマリリアとフレミアの守りをクリスに任せ、ガイと2人でヤンキリングを追い詰めていった。
「ジュード、殺してはダメです。」
ジュードはマリリアに向けて頷き、手刀でヤンキリングを気絶させた。
同じ頃、領境に陣取っていた国軍がヤンキリング領に集結していた兵達に向けて攻撃を開始した。国軍は大した被害も出さずに相手を降伏させ、兵を指揮していた名門貴族家の者達を拘束した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます