第67話 反乱軍討伐作戦の開始
「騙されているとは言え、反乱に加わった民衆は罰せねばならない。内乱罪を適用すれば首謀者・共謀者は死罪、共犯者は10年程度の禁固刑となる。」
「あれだけの人数を収容できる場所はない。ある程度の財貨を支払った者については罪を免じる事も考えてはどうか。」
「その財貨は占領地から奪ったものかも知れない。それを見分けるのは不可能だ。そんな事を許せばこの国で略奪が横行する。」
「やはり農場や鉱山での強制労働しかない。多くの民衆がいなくなるとこの国の生産力が大きく落ち込んでしまう。」
文官達が反乱軍を討伐した後の事を激しく議論している会議室の隣の部屋では、マルス王とジュード達が討伐作戦を検討していた。ガイとクリスも同席している。反乱軍の総数は不確かだが、少なく見積もって3万ほど、小国であるジョルジアにとって小さな数字ではない。しかし実態は一般の民衆の寄せ集めであり、非戦闘員も相当数いると思われた。国軍を動員すれば討伐は容易い。
「元は善良な国民だった筈だ。騙されただけの民衆の被害はなるべく抑えたい。」
「その為には偽英雄王を釣り出さねばなりませんが、奴は前線に出てきません。何度か民衆を打ち払って、奴が前に出ざるを得ない状況にする必要があります。」
「手加減して戦闘が長引けばかえって被害を大きくする。マルス王の気持ちは分かるが、先制攻撃で大きく削るべきだ。」
「ジュードは出ちゃダメよ。マリリアも顔が知られてるからダメ。2人には後ろで操ってる奴らを退治して欲しいわ。」
「分かっている。そっちはどうにかしよう。」
「どうにかって、どうするのよ。何か方法があるの?」
「そうですね...相手に手を出して貰えれば早いのですが。少し考えがありますので、私にお任せ下さい。」
王都から反乱軍討伐の部隊が出陣したのはそれから数日後の事だった。この軍にはイェリアナとシルリラが従軍している。但し2人には神装具の使用を禁じていた。神装具は来るべき神々との戦いまで秘匿するつもりだった。
反乱軍の侵攻は予定通り進んでいた。その反乱軍の後方にある大型の天幕ではゴードンが大勢の半裸の女性に囲まれて座っていた。英雄王は自分だとゴードンが民衆に語り、少し胸の紋章を光らせれば、馬鹿な民衆は簡単に騙される。今では誰もがゴードンを英雄王だと信じ、様々な宝物や美姫を差し出してくる。このまま勢力を伸ばせば、口煩い名門貴族のジジイ達も、更には王家でさえ、倒す事が出来るかも知れない。
「失礼します、国軍が接近しているとの情報が入りました。」
そう報告してきたのは副官のマチルダだった。この女をどこで拾ったのか忘れたが、体の相性が良いのと、周囲の者達の扱いが巧かったので、副官とした。先々は妃の1人にしても良いだろうとゴードンは考えていた。
「どれ程の距離だ。それと規模は?」
「かなり近くまで接近されています。今日の午後には接敵するでしょう。規模は中隊レベルで、後詰は確認されていません。」
「その程度なら任せる。」
そう言うとゴードンは周囲に侍る美姫達に身を埋めた。
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