いけいけ勇者様94

最上司叉

第1話

勇者と仲間たちが一緒に暮らす家から出ていくことを話し合った数日後。


【ガチャ】


朝食が済んですぐに玄関のドアが開く音がした。


「もう行くの?」


魔王が魔法使い兼薬師に聞いている。


「そうだね、まあ元々国の魔法学校に入る予定だったから」


「そうだったんだね」


「これからは国のお抱え薬師をしながら魔法学校へ通い腕を磨くのさ!」


「頑張ってね」


「言われなくても頑張るさ!まあせいぜい君たちも頑張ることだね!」


「うん、今までありがとう」


「ホントにね」


こうして魔法使い兼薬師が一番最初に家を出て行った。


魔王は少し寂しくなっていた。


皆といろいろありながらも楽しく暮らしてきた月日は思い出深いのである。


次に出ていくのは誰だろう?ふとそんなことを考えてしまう。


最後には皆家を出るのに。


魔王は少し涙目になりながら自室へ戻る。


するとそこへ誰かがドアをノックした。


【コンコン】


魔王は慌てて涙を拭うと部屋のドアを開けた。


そこには勇者が立っている。


「どうしたの?」


「あぁ、話があって」


「私に?」


「あぁ」


「なに?」


「とりあえず入って良いか?」


「あっ!うん、ごめんね入って」


【バタン】


勇者は魔王の部屋に入りドアを閉めた。


「話って?」


「あぁ、俺この家を出てからのこと考えていたんだがしばらく諸国を廻って来ようかと思っている」


「うん」


「魔王は魔王城に帰るんだろ?」


「えっ!」


「?」


「…」


魔王は黙ってしまった。


「亡くなった魔王のお母さんにも最近会えて一緒に過ごしたいだろ?」


「…それは…そうだけど…!」


「どうした?」


「私は…!」


「魔王?」


するとそこへ誰かの声が聞こえてきた。


「鈍いヤツやのう」


「!!」


勇者は辺りを見回してドラゴンの女を探す。


「魔王は勇者と一緒に居たいだけなのにのう」


「?!」


勇者は訳が分からず魔王を見た。


魔王は俯いている。


「ドラゴンの女が言っていることはホントなのか?」


魔王は顔を少し上げて頷く。


「!!」


はっ!


そういえばこの間から魔王が変なのは俺のことを?


いやいやまさかな


いや待てよ


勇者は混乱している。


すると魔王が口を開いた。


「…一緒に行きたい!」


「!!」


「ダメかな?」


「いや…ダメじゃないが…」


魔王は勇者のその言葉を聞いてとびきりの笑顔になる。


「!!」


勇者は魔王の笑顔を見てこの前のことを凄く反省するのだった。


するとそこへドラゴンの女とは別の声が聞こえてきた。


「国のことは任せておけ」


「お母様」


「心置き無く行ってこい」


それが残していった娘へ最後にしてやれること


いつまでもコチラの世界にはいられない


いや


いてはいけないのだ


だが娘が戻って来るまでは…


そして盗人と盗人に取り憑いている?前魔王様とドラゴンの女は魔王城へと旅立って行った。


そして勇者と魔王の2人も諸国巡りに旅立つ。


勇者と魔王は住んでいる国の王様に旅立つことを告げて国を出た。


王様はこの国に残ってもよいと言っていたがしばらくはこの国に近づかない方がいいだろう。


勇者は魔王に言う。


「行くか」


「うん!」


勇者と魔王の諸国巡りが始まるのだった。


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