〜再転生先は、ぼっちな魔王様の奴隷でした〜

溶くアメンドウ

第1話 いつもの転生と、ただの魔王様

見慣れた景色。


「また君かぁ壊れるなぁ…メンタル」

「…ご無沙汰です。神様」


金ピカエナメルのマイクロビキニに謎にボロボロのマント。

マシュマロをそのままおっぱいにしたような

悲壮なOL感漂う黒髪メガネの人は女神様。

あ、神様だから人ではないのか。


「うわ。またこんなに善行ポイントを貯めて来やがって…」

「またですか」

「こっちのセリフだわボケチンが」

「アハハ。じゃあいつものお願いします」

「はぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁ」

「溜息が長過ぎません?」


人間は皆、死ぬ前にイイことをしたり多くの人に愛されると

善行ポイントというものが貯まるらしい。

具体的にどれくらい貯まっているのかは分からんのだけど、

転生先を神様直々に見繕って貰える人は相当珍しいのだとか。

それも常連・・にとなると、尚更の事らしかった。


「これか…いやこっちのが方がイイかな?」


10分経過。


「ぬわああああああんめんどくせぇなもおおおお」

「手頃な奴で大丈夫ですよ」

「いやいやいや仕事だから。ちゃんと選ばんと」

(真面目なんだか不真面目なんだか分からないや)


20分経過。


「あーそこそこ! お前マッサージ上手いな」

「それは良かったです」


30分経過。


「じゃん」

「けん」

「「ポン!!」」


…………………


…………………負けた。


「っしゃあああああじゃあこっちの奴ねいってらー」

「人の人生じゃんけんで決めないで下さいよおおおおおおおおお」


ご満悦そうな神様に見下ろされながら

僕はグニャグニャした変な空間を落ちていった。



◇◇◇◇◇◇◇


(今回はどんな世界に転生したんだろう…)


見上げた先には妖しく輝くつぶらな蜂蜜色の目があった。どうやら女の子らしい。屈んで僕の事を見下ろしているのでパンツが見えそうである。


「人間…私の言葉は分かる? というか言葉を理解するだけの教養と知性とそれを的確に使い分ける感性を持っている?」

「……」


 その質問に「はい、持ってます」と答えるのは多分持ってない人だけだ。つまりここは「いいえ、持っていません」と答えるのがベスト!!


「持ってないかな」

「そう…また友達作りの練習はお預けみたいね」

「ちょちょちょちょ待って待って。

 その魔剣を、一旦下ろしてもらえるかな?」


 闇夜の天に輝く星々みたいに美しいドレスを

纏う女の子は、一旦下ろして、そしてまたすぐ魔剣を振り下ろそうと構えた。


「早過ぎるて」

「でも一旦下ろしたよ?

 どうやら教養も知性もないし感性も乏しいの

 だけは真実みたいね」

「…じゃあ10秒だけ待って」

「?」


 僕はえらく毒舌で綺麗な蒼い髪を揺らすこの女の子の手を握った。


「僕はシンジ。只の人間だ。君の名前は?」

「!」


何故か女の子は目をいっぱいに開いてみせて、それから魔剣をその辺に放り投げて小さい両手で一杯に握手してくれた。…握手、好きなのかな?


「私はディアネシア…ただの魔王よ」

「ディアネシア…」

「シンジ…」


魔剣が投げられた方角から凄まじい轟音と瓦礫の雨が降って来ている。手入れのされていないこの城らしい建物は、どうやら崩壊しているらしい。


「なにしとんねん」

「やっちまったわ」

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