王子様になれない従者とヒーローになりたい眠り姫との3年と25年の間に流れるキセキみたいなコイガタリ。
うさぎパイセン、オーナーはもうダメだ。
第1話 光る姫君
放課後の校舎裏の空き地。
今年小学6年生になった
そらした先で見えた飼育小屋で飼われるうさぎが全匹、足をたんたんたん、と踏み続けている。
(ああ、確かピンチの時にそうするんだったっけ)
うさぎは滅多に声が出ない生き物だ。
自分から話もできずに臆病で弱く、なのに寂しいと死んでしまう。
自分に良く似てると思う。
何故か全員にまじまじと見つめられるのが嫌で鼻の先まで長く伸ばした前髪。黒くすっと流れた直毛。
それを見て久しぶりに会った時のおばあちゃんは「光の
俯いていると、声がかかる。
「おい、ゲボクー」
乙丸とは、平安時代の従者の名前。
先生が言った途端私に妙に絡んでいた男子に目に映る餌を得た肉食獣の光。
小声で聞こえるように。「じゅーしゃって、下僕のことだろードレイだよドレー」
そこからは、地獄だ。
その後に、連れられてきたこの処刑場。
周りの男が人型をした何かお化けのように訳の分からないものに見えてくる。
「ヤーイジューシャージューシャゲボクドレー、ドレーだからロクにメシも食えねーんだろ鶏ガラ、てか前髪ながすぎキモイ、やーい男女、え本当にお前女いやオカマだろ?いんやおなべってゆーんだぜッオーナーベッオーナーベッ」
何人もの声が心を切り裂く。
「うわっ……」
「汚ねーっ!」
あ……。
黒の膝丈スカートから伸びる
初潮だ。
その様に鼻の穴を膨らませて、オスガキ共が。
「うわきたねオメーオトコ女なのにセーリアンノーン?マジかよwwわっくっせwwwオナベなのにセーリッセーリッ手を叩いてダイガッショーしよーぜっホラホラァッセエリーッギャハハハハ」
もう死にたい。
この状況を、ではない。この状況を引き起こした原因の先生でもない。女ひとりをよってたかって貶める目の前のクソ野郎どもたちへでもない。
こんなに、こんなに酷いことをされているのに泣き声一つ出すのも、そうそれこそ足踏みひとつできない、背を丸め震える手で自分すら抱きしめらず棒立ちになってる弱い自分を、だ。
笑い声は消えない
「ギャハハハハハーーー……ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ!!」
いや、
「悪者めーッ!弱き女の子によってたかってひどいことをッ!テンチューウ!ここに!スーパーヒーロー!スメラギヒメ!ただいまさんじょーっ!!」
一番嫌な声が止まった
……顔を上げる。オスガキの大将首が地に伏せ股間を抑えて動かない。
その後ろで「ふう、つまらぬものを蹴り上げてしまった」と先の尖った靴を脱いだ、ふわふわの茶髪、体が小さく柔らかい華奢な女の子がニマッ!と不敵に笑った。お姫様みたいなヒーローだ。
いや、ヒーローみたいなお姫様?
お姫様がいい。私もあなたみたいにヒーローになって、あなたを私のお姫様にしたい。
そんなことはつゆ知らず、お姫様が悪をバッタバッタと打ち倒して。
「わぁーッもう勘弁ーッ」
伏していた一番の害悪が耐えきれずブルブル震えて股間から小水を垂れた途端、股間を庇って泣きながら逃げていく小悪党ども。
闇に覆われた光の元に、光りの姫が。
お姫様だけを助ける王子様じゃない、弱いものがピンチの時に悪を打ち倒すかっこいいヒーローが。
そんなヒーローを自分だけのお姫様にしたいと思った
光る姫、君は助けに来てくれたんだ。
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