ある日、俺はまた幼馴染彼女に裏切られた
タカ 536号機
第1話 偶然の発見と出会い
「
授業後、彼女こと
「ごめん、今日はちょっと用事が出来てしまった」
そんな彼女のセリフに対し、俺は少し申し訳なさを覚えつつもそう返した。俺だって彼女と帰りたいのは山々だが今回は先約がいるのだ。自分で了承しておいてほっぽり出すことは出来ない。
また怒るだろうか? 俺は少し怯えながら彼女の返事を待っていたが、彼女の反応は少し予想外のものだった。
「...そっか。分かった」
少し不満げではあるものの、コクリと頷いてみせたのだ。普段の彼女だったら、「じゃあ、待ってるよ」「誰との用事?」などといって俺を困らせてくるのに珍しい。
「ごめん。じゃあ、また明日」
「うん、また明日」
少しひっかかりを覚えつつも都合が良かった為、特に問いただすこともなく俺は彼女にそう告げる。そして、彼女もそれに応えるようにニコリと笑みを浮かべると、クルリと俺に背を向けゆっくりと教室を出ていくのだった。
*
「ふー、終わった。終わった」
とある用事を無事済ませたは俺こと
流石にこの時間になると部活動と言えど大抵終わっているようで、俺以外に人影は見えない。
「んっ?」
意気揚々と自転車置き場へと向かっていた俺にここで1つ問題が発生した。俺はいつものように中庭を使う下駄箱から自転車置き場への最短ルートを歩いてきていた。
しかし、車が停まっている為中庭が通れないのだ。いや、正確に言えば少し隙間が空いてる為通れなくはない。
だが、暗い中この隙間を無理矢理通るのは少しリスクだ。
俺は少しでも無用なトラブルを避けるべきと考え、ため息をつくとUターンをして引き返すことにした。やや遠回りではあるが裏庭ルートを使うことにしよう。
にしても、何故あんな所に車が停まっていたのだろうか? そう言えば、今朝先生が今日は植木の伐採があるとかなんとか言ってたような...。となると、あれは業者の車ということになるのだろうか。
だとしたら、余計に無理矢理通らなくて正解だったな。
「はいポーズってほら笑顔、笑顔」
「ごめん、ごめん」
「やだなー、全然いいよ」
そんなことを考えながら裏庭を歩いていると、じゃれあっている男女の声が聞こえてきた。こんな時間に何やってるんだ、と少し呆れていた俺だがその2人の姿を目にした途端に慌てて近くの木の影に隠れる。
なにも俺が隠れたのはその男女がそういう行為をしていたからとかではない。というか、流石にこの時間とはいえこんな所で公にやる馬鹿はいない。多分。
問題は2人とも顔見知りだったことだ。男の方は
そして、何故か特に接点はないのだが俺のことを
が、正直この人はどうでもいい。
問題は女子の方だ。俺の見間違いでなければ彼女は俺の幼馴染である黒澤 鈴その人である。
黒澤 鈴は俺が知る限りでは特段大きいわけでもなく、特段小さなわけでもない自分の
そんな彼女の容姿は整ってはいるものの可愛い系か美人系かと聞かれれば困ってしまうので、美少女というくくりに入れておくことにする。
性格は落ち着いていて目立つのが嫌いなタイプ。運動はからっきしだが勉強はテスト4位と上位層である。
性分故にあまり目立つことがない為、そこまで男子から人気があるわけではないが隠れファンはそこそこいたりする。
そんな彼女と俺の関係は幼馴染であり12年間もの付き合いがあり、毎日一緒に登下校をする仲だ。
とここまでは現状何も問題はない。
問題は俺と黒澤 鈴は付き合っているということである。いつ頃だったかはもう覚えていないが、ある日彼女に告白された俺はそれをにの返事で了承。そして俺の記憶に間違いがなければ彼女に別れを切り出した覚えも切り出された覚えもない。
今の今まで俺と鈴は彼氏彼女であったはずなのである。
それに加え、鈴は俺の前では桐咲先輩をかなり嫌っていて東海のゴミとさえ評していたはずである。
何故、そんな鈴と桐咲先輩が
すると、なんとも運の悪いことに鈴とばっちりと目が合ってしまい気がつかれてしまった。まずい、桐咲先輩に気がつかれる。
ところが、鈴は予想に反し俺に気がつくと慌てるわけでもなく声を出すわけでもなく余裕の笑みで、逆に桐咲先輩にバレないように俺の方を見つめ返してきた。
今更、取り
「
俺がショックを受けて固まっていると、突然後ろから凄い怒鳴り声が聞こえてきて鈴と桐咲先輩がこっちを向き、木の影に隠れていた俺も驚きのあまり体を出してしまう。
そして怒鳴り声の主であるとある女子生徒の姿を見た俺は更に驚く。
なんとその主は
表上先輩と言えばこの辺りでは有名な名家の生まれで、容姿端麗で茶道部部長を務めテストでは学年1の座を誇る完璧美人として学校内外でかなりの有名人である。当然の如くファンも多い。なので、俺も特に関わりがあるわけではないが多少情報を持っている。
確かに桐咲先輩の彼女である表上先輩からすればこの現状は許しがたいものであったのだろう。
見れば拳をギューと握り締め、唇を噛んで必死に怒りを抑えていた。
「だれって僕の彼女だけど。たった今できた。というか、君にはさっきメールで別れようって送ったはずだよ。もう君は僕の彼女じゃない。だからこれは浮気でもなんでもない。僕に許されたただの正当な権利だよ」
しかし、そんなことは桐咲先輩には関係なかったらしくヘラっと笑うとむしろ呆れたようにそんな言葉を投げつける。
「そんなのっ——」
「君が許さないとか関係ないよ。僕は君とこれ以上付き合う気はない。僕にはもう新しい彼女がいる。ね?」
表上先輩の怒りも胃に介さず桐咲先輩は淡々とそう述べ、わざわざ俺の方へと向き直ると鈴に同意を求め鈴もそれに頷く。
「というわけだよ白くん。残念だったね。君の方の彼女は君のこと眼前にもないってさ」
そして、桐咲先輩は心底嬉しそうに俺にそう告げる。なるほど、先輩が俺に対して当たりが厳しかった理由がやっと分かった。この人は最初から鈴のことを狙ってたんだ。
「じゃあ、こんな負け犬2人なんかに構ってないで僕らは行こうか」
そして桐咲先輩は呆然と立ち尽くす俺と表上先輩を尻目に、鈴と共に去っていってしまうのだった。
*
残された俺はしばらくして当初の目的であった自転車置き場に向かって歩き始めた。鈴にまた裏切られたことは確かにショックだ。でも、だからといってなにか俺に出来ることがあるわけでもない。
俺はいつまで経っても無力なままである。
「待って」
しかし、そんな俺を1人の声が呼び止めた。まさか話しかけられるとは思ってもいなかった為、俺が驚いていると表上先輩はそんな俺の戸惑いなどお構いなしにある1つの提案をしてきた。
「復讐をしないかしら?」
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