あなたに買われました

描空

購入そして決意

 私は奴隷だ。


 幼い頃に両親が処刑され私は奴隷商に売られた。


 小さ過ぎてあまり覚えていないが、父上も母上もとても優しい人で私は幸せにすくすく育っていった。


 そんな幸せな日常は長くは続かなかった…


 ある日領地で内乱が起こった。


 父上は圧政や重税を科したりは一切なくとても領民思いな領主であった。


 何故内乱が起こったのかは大人になっても分からなかった。



「おい!さっさと働け!」


「は、はい…すみません叩かないでください」

 畑を耕したり、馬の世話をしたりとマシな仕事もあるのだが最近は降水量が少ないから不作でまともに食事を食べていないせいでまともに体も頭も働かない。


 辛い。この日常から抜け出したい。


 私の他に3人ほど奴隷がいたが残っているのは私だけ。


 もう死にたい…


 私は運が良かった。今日野焼きの為に使ったマッチが落ちていた…


 私は何も考えず私を買った奴の家に火をつけた。


 私は大人になったから初めて心の底から笑えた。


 とても幸せだった。


 世界に色が戻った気がした。


 これからやっと私の第2の人生が始まる。


 何をするにしても楽しかった。ただ歩くだけただ息をするだけで幸福を感じた。


 もうこれ以上は無いと思っていた。


 私がニコニコしながら郊外を歩いていたら周りの人から怪訝な目で見られたが何も気にならなかった。


「領主様。こんにちは」


 周りの人達が何か言っているが私には関係ないと思いスキップしていたら誰かにぶつかった。


 その人はかなり大きくそして筋肉質でとてもハンサムな人だった。


 見惚れていたがふと我に返った。


「すいません」


 さすがに浮かれすぎだと反省し、その場を立ち去ろうとしたが腕を掴まれた。


「何処に行く」


 私なにかやらかした?この人に悪い事した?色々考えているうちに


「おい!聞いているのか?」


「すいません。でも私お金持ってなくて」


「すいません。すいません。すいません」


 もう奴隷になるのは嫌で必死に謝った。


「そんなに謝らんでもよい。ところで其方そなたそのなりはどうした?」


 ヤバい私が奴隷で放火したなんてことがバレたら処刑されるかまた奴隷にされるそれは避けないと。


「私名もないような辺鄙へんぴな村からここに出稼ぎに来たんですが、道中で…


 咄嗟に嘘をつきどうにか逃れようとした。


「そんな嘘をつかんでもよい。其方奴隷であろう?」


 バレたこれからどうなるの他の人の所でまた奴隷にされるの?そんな事を考えていたらお腹の空き過ぎでいつの間にか気を失っていた。


 目が覚めるととても綺麗な天井が目に入った。


「何処ここ?!」


 私は慌てて体を起こした。どこか懐かしいとても綺麗な部屋だった。


「おはようございます。私この家でメイドをしているメアリーと申します。貴方様の身支度をするようにおおせつかっております。」


「へ?」


 私は突然の事に腑抜けた返事しかできなかった。


 私のことは気にせずメイドが手際よく身支度を終わらせていく。


「終わりました。どこかきつい場所はありませんか?」


「大丈夫…です。」


 私は戸惑いながらも長らく忘れていたこの感じに浸っていた。


 ところで私はどうしてここにいるんだ?


「1つ質問してもいいですか?」


「もちろん構いませんよ」


「私は今どんな状況に置かれているのですか?」


 もちろんここがどこなのかも気になるがこの方がより多くの事をしれると思いこう聞いた。


「それは旦那様にお聞きするのが一番手っ取り早いかと思われます。」


 その旦那様っていう人も気になるし私がこれからどうなるのかも気になる。


「その旦那様に会うにはどうしたらいいのかしら?」


「俺に何か聞きたいことが?」


 道でぶつかったあのハンサムな人が立っていた。


「え、えーと…あのー…」


 どうにも言葉が詰まってしまう。


「私はこれからどうなるのでしょうか」


 勇気を振り絞って聞いた。


「そんなことかお前は俺に買われたんだ」


 え?私また奴隷になるの?でも今はとても綺麗な格好もさせてもらっているし、メイドさんも優しく接してくれているし訳が分からなかった。


「俺がお前を嫁として買ったんだ」


「はい?」


 きっとこの人は冗談を言っているのだろうと私は思った。


 それが事実だとしてもこの人に何のメリットがあって嫁に買ったのか私は欺瞞ぎまんに満ちた目で見た。


「そんな目で俺を見るな」


「すいません」


 何故か私はいたたまれない気持ちになった。


「とりあえずお前は今日から俺の嫁になったんだ…そうだお前名前は?」


「私の名前はレイ=アスカードです。」


「そうかレイお前などと言って申し訳ない。俺はカーリン=フレイラだこれからは夫婦としてよろしく頼む」


 私は現状について何も理解出来ていないがこんなハンサムな夫とこんなにも綺麗な家に住めるんだから文句の1つもない。


「はい!よろしくお願いしますカーリン様」


 これからどんな幸せな生活が始まるのか私はまだ知らない。








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