成り行きで、戦います。

ぱるぷ

第1話 始まり

きっかけは友達から聞いた話だった。


なんてことはない、どこの地域にでもある怪談話だったのだが妙に好奇心を誘われた。


私は鈴宮涼華すずみやすずか。高校2年生。

「ねぇ涼華、知ってる?」


話しているのは同級生の和泉日向いずみひなた。派手なロングのツインテールが特徴。こらそこ、それって初⚪︎ミクみたいな?とか思わないで。

「何を?」


「怪談だよ、か、い、だ、ん」


「…あんまりそういうの信じないんだけど」


「まあまあそう言わずに〜」


細かいことは省くが、言われた話はこんなことだった。


[深夜12時に学校の裏山の神社の祠を開けると呪われる]


両親は忙しく、ほとんど家に帰ってこない。


絶好のチャンスだ。

退屈な日々に飽きていたかもしれない、私は刺激を求めて例の神社へ向かうことにした。


「寒い………」


春先とはいえ、やはり夜は冷え込んでいる。


それに加えて山を登るのであまりのしんどさにちょっと友達を恨みかけた。


「ついた!」


神社、とは言うものの、鳥居のを通ってすぐに小さな祠があるだけだ。


「これを開けるの…?」


恐る恐る手を触れて、ゆっくりと開く。


   ギィ………




中には鬼?を模したお面のような物がひとつ、ぽつりと置いてあった。


「お面…なんで祠にお面が?」


しかしその直後、景色がガラリと変わった。


真っ暗だった空はドス黒い赤色に変色し、木々はこれまでとは桁違いにゆらめいている。


そしてゾワッとした気配が背後にあるのを感じた。


「…………」


(声が出ない!)

極度の緊張により手足がぴくりとも動かない。



「おーい」



「!?」


(どこからか声が聞こえる!どこ!?)


答えは単純


「ここです、ここ」


目の前だ、お面が喋っている


「え、なんで、お面がしゃ、喋って…」


お面はカタカタと動き始め、ふわふわと宙を舞い始めた


「今一番重要なのは…拙者が喋ることではありません」


瞬間、ギネスにでも登録してあげたいぐらいの綺麗な土下座が出た。


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」


(わ、私が祠を開けたからぁぁ!!??)


あまりの迫力にお面は少し困惑している。


「ま、まあ落ち着いてください、拙者は敵ではありません」


「ふぇ?あ、そうなの?」


「そうです、お名前は?」


「あ、ご丁寧にどうも。鈴宮涼華です」


「それは良い名でござる。拙者の名は…拙者の…名…は?」



「もしかして、思い出せないの?」


「どうやらそのようでござる…申し訳ない」


「まぁとりあえず…鬼のお面だし、鬼さんって呼ぶね」


「承知した!」


(これで一件落ちゃ……って違う!)


涼華の思った通り、空は依然として赤いまま。


そして、なんだか嫌な予感がする。



ガサガサッ



茂みの中から現れたのは、黒い人の形をした影だった。


影は明らかにこちらを見ている。


「な、何あれ!?」


すかさず鬼さんが説明してくれた


「あれはカゲビト、人の形をしているが奴らは冥界のモノ。捕まれば殺される!」


「うえぇっ!?で、でもどうすれば?」


「拙者が力を貸す!」


そう言うと、鬼さんの口からぬるりと一本の刀が出てきた。


「拙者を被って、その刀を握るのです!」


言われた通りに面を被り、刀を握って、カゲビトと対峙した。


その瞬間、体は鎧に包まれ、錆だらけだった刀はみるみるうちに純白の刀身を見せた。


「す、すごい!なにこれなにこれ!」


「涼華殿!目の前の敵に集中するのだ!」


呼びかけはむなしく、カゲビトの攻撃が当たってしまった。


「いっっっっった!!」


咄嗟とっさに刀でガードしたものの、今まで生きてきた中で体感したことのない衝撃を感じた。


「とりあえず、斬る!」

普段の何倍もの力が働き、軽く踏み込んだだけでありえないスピードが出た。


「グギャァァァ!!」


首を綺麗に刎ね、カゲビトはそのまま消滅した。


「なーんだ余裕じゃ〜n」


シャッ!

油断したのも束の間、次のカゲビトが攻撃を仕掛けてきた。


「ひょえぇ!」


情けない声を出しつつも華麗に避けてみせた。


(運動部入っといてよかったぁ〜〜!)


あたりを見渡すとうじゃうじゃとカゲビトが寄ってくる姿が見えた。


「どんだけいんのコイツら!?」


「カゲビトが現れると言うことはこの近くに冥界からの入り口があると言うこと!その結界を破壊するのだ!」


(あった!)


冥界からの入り口は、、、、、鳥居にあった。


「ま、入り口らしいっちゃらしいけど…!」


先ほどと同じように足を踏み込み、加速する。


「シャァァァァァ!!!」


入り口を破壊しようと斬りかかった時、ちょうどカゲビトが出てきた。


(びびってばっかりじゃダメダメ!)


「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」


全身の力を集中させ、カゲビトごと結界を切り裂く!


ピシッ!


結界はボロボロと崩壊し、夜空は元の漆黒を取り戻した。


「ハァ…ハァ…つ、疲れた…」


「初めての戦いでこの戦果。涼華殿、カゲビト退治の才能があるのかも知れぬな」


(頭が回らない、情報量でパンクしそう……)


ドサッ!


あまりの疲労に涼華は気絶してしまった。


「涼華殿?涼華殿!!」



続く。

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