提灯行列
九文里
第1話 交差点のおばあさん
高2のお姉ちゃんが、夕方になってヤバイ事を言い出した。
「プリンが食べたい」
中2の僕が買いに行く。
こんな時間に食べると晩御飯が食べられないだろ、と思ったがお姉ちゃんは怒ると怖いので買いにいかざるを得ない。
おまけに小3の弟が一緒に行きたいと言い出した。
退屈なのか。
こちらも、ごねるとうるさいので連れて行くしかない。
僕は半ズボンに手を突っ込んで外に出ると、住宅街を既に赤味を帯びた空が取り囲んでいた。
黄昏時だ。
こんな時間にあの交差点を通るのは、ヤバイ。
コンビニに近道をするのにはあの交差点を通らなければならない。
住宅街の中にある四つ角だからそんなに大きな交差点ではないのだけれども、山の方から結構多くの車が降りてくる。
それで事故が頻繁に起こるのだ。
山の方から来る車が見えるように、警察はカーブミラーを設置するぐらいの事しかしていない。
2週間前も子供が車に轢かれて、交差点の中には血が飛び散っていた。
何でも、その道は昔は何とか街道だったらしく、宿場町と宿場町を結んでいた幹線道路だったらしい。
コンビニに行くには、その何とか街道を横切って向こうの道に行く。
交差点の手前には、高さ1メートルほどの石碑が建っている。何か字が彫られているが、古くて何て書いてあるのかは分からない。
向こうの道は、少し上側にずれている。その道の下側は公園になっていて、木が茂っている。こちら側から見れば、正面に公園が見える感じだ。
公園の前を通る道は、カーブになっていて先の方は下の方に下っていて見えなくなっている。
公園には、子どもに人気のあるタコ型の大きな滑り台がある。中には、トランポリンが付いているので人気があるのだ。
それで、子ども達は公園を見ると条件反射的に交差点に飛び出すのではないかと思う。
その上、交差点の手前に石碑があるから、子どもも上から降りてくる車も互いに見にくいのではないかと思う。
そして今、その交差点の手前まで来てドキッとした。
向こう側の道の真ん中に、着物を着たおばあさんが正座して座っていた。
四つ角の直前にくるまで、石碑に隠れて見えなかった。
具合が悪くてへたりこんでいるのかと思ったけれど、両手を膝の上に置いて正座している。
異様だ。
僕はヤバイと直感して戻ろうとしたら、おばあさんが右手をスッと挙げた。
それと同時に弟が四つ角の中に飛び出した。
その直後、目の前を車が走り抜けて行った。
僕は、おばあさんが右手を挙げたと同時に弟の腕を掴んでいたので、弟はスレスレで車にあたらずに済んだ。
おばあさんを見ると何事も無かったように膝に手を戻して座っている。
僕は、恐ろしくなり急いで四つ角から元の道を戻る事にした。
その際、おばあさんが何か言っているのが聞こえた。
「○○○が明け4時にやって来る」
僕は、何の事だろうと思ったが、弟の腕を引っ張って逃げるように離れ、遠回りになるが別の道からコンビニに行く事にした。
頭の中では、あのおばあさんが事故を起こしていたのかも知れない、子ども達を道路に飛び出させ、車に轢かせていたのかも、とずっと考えていた。
それと後から気になってきたのだが、飛び出した弟の腕を掴んで引き戻した時、感触が変だったような。
やけにフワッとした感触だった気がした。
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