小説家が塾の先生になったらどうなるのか
沼津平成
第1話
俺、
俺、佐藤龍河が小説家であることを、俺の両親は知らない。俺の両親が俺が小説家であると知ったら反対するだろうから。「兄のアランと、姉のせいか、この二人の職業を考えなさい」って。
だから俺がアパートに住んでいることも、両親は知らない。
*
朝起きたら携帯電話が鳴っていた。
俺はとりあえずそれに出てみた。知らない電話番号だった。
「スグラ塾です」スグラ塾が俺に何の用だろうか。「塾長の
典型的なアルバイトの声だった。アルバイトが塾長と話せるのだからそれほど大きくない塾なのだろう。
俺は指定されたビルに向かった。
*
駅を降りると、そのビルはすぐだった。ビルの六階に、青地に白く「スグラ塾 四ツ谷キャンパス」とある。下に小さく電話番号が書かれていた。( )の中がもやがかかって見えない。
受付で、「相良さんはおりますでしょうか」と聞くと、「ああ、小林秋音さんですね」オトヒロ、案内してやってくれと男が声をかけた。
秋音……それは、俺の書いていた小説の主人公だった。
頭の中に、倒しかけのパソコンがうかんだ。
オトヒロに案内された大手テレビ局の準備室くらいの広さのドアを開けると相良さんと思しき初老の白髪男が立っていた。
「はじめまして。相良トオルです」男の隣の息子らしき男が挨拶した。
「翔です」白髪男が頭を下げた。
「あなたは秋音さんの小説の著者の……」俺の方をじっと見つめながら相良トオルが聞く。
俺が答えようとするが、相良カケルの方が一瞬速かった。
「佐藤龍河さんだよ」
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