第2話 方向音痴
嫁いですぐのことでした。
義理の妹夫婦が来るということで、何かお茶菓子を……。と思った私は、義母に尋ねました。
「一番近いコンビニってどうやって行くの?」
すると、義母、
「ああ、ここ左に曲がってまっすぐ行くでしょ? で、そこを左に曲がってね、大きい道路2つ目を右に曲がって………」
と、教えてくれたのはよかったのですが。
「もしもし」
夫に電話をかける私。
「どした〜? わかんないか〜?」
「墓場に出た」
「……どうやって?」
「言われたとおりに走ったら」
「……帰ってこい」
「無理」
「行った道を何で帰れないのよ?」
と言われ、
「頑張る」
と帰っていたら、余計わからなくなりました。私は、行った道が戻れない可哀想な子です。
周囲は、ひたすら畑の中に、ぽつん、ぽつんと似たような家が建っているだけのところなのです、そもそも。
完全迷子。
「どこにいるのかわからん」
夫に再度電話する私。
「最寄りの家に行って、そこの看板読んでみ?」
「あ……」
「なんて書いてある?」
「うちでした」
無事帰宅後(目的は果たしてない)。
「どうやったら墓地に出るのよ?」
夫に言われ、義母様に言われた。と、教えられた通り言うと、
「なんで左折して次も左折なのよ、右だろ?」
と、義母に言う夫。
「なんで曲がらせるの? 真っ直ぐ行って国道まで出たら、曲がるとこ一つじゃん」
と、義妹も言い。
なかなかの方向音痴仲間ができたと思いました。
そんな義母様と、お寺に用事があって行くことに。
乗せていくよ、と言ったはいいが、お寺に行ったことなどございません。義母の記憶だけが頼りです。
流石に、年に何回も来てるんだし、わからぬはずが……。
迷いました……。
しかも、市内で一番広い国道で迷う(汗)。
「ご、ごめん、番地教えてくれる?」
「えーとね、17条☓丁目かな」
北海道の道路は、〇〇市西5条11丁目という風な番地で、聞けば大体の位置がわかるようになっています。で、近くの信号にもそれを書いてあるのです。
「あ、じゃあ、今13条だから、あと4本ね」
と、私が17条を曲がろうとすると、
「あ〜、違う違う、一本向こう!!」
「え?」
今のところが17条なんだけどなあ、と思って、次を曲がったら、いきなり行き止まりでした。
「……行き止まりだねえ」
「さっきのとこだよ、多分」
「ここの筈なんだけどねえ」
不思議がる義母をつれて、改めて17条を曲がると、無事に寺が現れました。
帰り、遅くなったので、近道して帰ると、
「そうそう、私、いつもこっちから来るからわからなくて〜」
いや、そういうレベルではなかった気がするが……。
また、こんなこともありました。
義父が家出して(笑)、勝手にグループホームに入ったのですが、それがまあ、住宅街のアパートとかも多い、道路も全然東西南北に走っていない地区。
私も、(予告なく帰ってくる)義父を乗せて行ったことがあるのですが、曖昧にしか覚えていなかったのです。半分ナビに頼ってたところもあったし。
義父がいきなり入院しました。
市で一番大きな病院に。
義母と一緒に、一旦グループホームに寄って、着替えやら、入院に必要なものやらを用意して、病院へ。
この時は、義母の運転でした。
病院が移設したので、場所が大きく変わっていたのですが、行くときは良かったのです。私がなんとか道を覚えていて、最短距離で行けるよう教えながら行きました。
「この道を行くと、大きな通りにも出なくていいし、車通りも多くないし、簡単だからね」
と教え。
さて帰りです。
「はい、じゃ、そこ左ね」
の私の言葉を無視し、まさかの直進。
「違う違う違う、今のところ左!」
「えっ? 左?」
直進したまま左折する義母。そして直進。
「あ〜、じゃなくて、今の所左だったんだけど……いいや、どっかで止まって。どこ走ってるんだかわかんなくなった……」
と言ってる間も走行をやめない義母。
大抵の道は縦横に走っているので、左折したら元の道に戻れそうなものなのだけど、絶対この道、さっきカーブしてたよな(泣)。もう私にも、自分の位置がどこなのか全く見当もつきません。
「お願い、一旦止まって。スマホのナビで現在地確認するから(泣)」
「こんなとこ止まれないでしょ?」
「いやいや、左に寄せて止まって」
「左かい?」
左折する義母。
誰かー、誰かタスケテー。
「一旦、左に寄って、止まって欲しいの」
と言った頃には、細い道に入り込み、そんなこともできない感じに。
と、目の前に、自動車学校の車が。
「あれについてったら、広い道に出るから!」
と、ついて行くと、もう本当に奇跡的に広い道に出ました。
「あ〜、ここならわかるわ〜」(私もわかる)
じゃなくて。義母様、私はどうやったら、あそこからここに来れたのかがわからんわ!
その後も、もう一度、義父のグループホームに足りないものを取りに行くのに、道を一本間違えて。その道を戻るということを知らないらしく、近所をぐるぐる彷徨い。
「うん。わかった。今度からは、私の車で行こう!」
と、運転を引き受けたのでした。
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