第37話

「サーバー違ってても、住んでる所が離れてても。 私たちは友達だよ。」


ニコっと、笑みを浮かべて加奈が言う。


加奈の言葉に、彩子の涙腺が再び緩み始める。


「わぁ! ストップ! ストップ!


泣くの辞めて!


彩子の涙で、既に私の服は重くなっているんだから!


これ以上、泣かれると最大所有重量ウェイトオーバーで動けなくなるから!」


オーバーアクション気味で加奈が言う。


「なによ、それ。」


緩みかけた涙腺を、なんとか制御する彩子。


「加奈。 あの時は、本当にゴメンなさい。」


彩子が、頭を深く下げて加奈に謝る。


「本当に悪いと思ってる?」


「うん。 本当にゴメンなさい。


謝っても、許さるとは思っていないけど。


ゴメンなさい。」


頭を下げたまま、彩子が言う。


「うん。 許す。」


加奈の言葉に、ポカンとした表情で加奈を見る彩子。


「大体、カラオケボックスでも言ったように。


私は、何も気にしていない。


だけど、彩子が許して欲しいなら、私は許してあげる。


なんか、不満あっかぁ?」


加奈の言葉に、無言で加奈に抱きつく彩子。


「ありがとう。 加奈……。」


「うん……。」


加奈も彩子を抱きしめ返す。


そのまま、数十秒の時間が流れる。


加奈の携帯が震える。


ポケットから携帯を取りだして見てみると、メール着信ありの表示が見て取れた。


「叔父さんからメールだわ。彩子、ちょっとゴメン。」


受信メールを開いてメールを確認する。


【百合に走ったのか? 周辺に注意。】


メールを確認すると、こんな文章が。


メールを見て、ふと周囲を確認するように首を巡らせると………。


抱き合う2人を、物珍しそうに見る通行人が多数。


そりゃ、こんな人の行き来の激しい往来で、美少女2人が抱き合っていれば注目の的にもなろうと言うもの。


加奈は慌てて、彩子を引き剥がすと。


「それじゃ、彩子。


ちゃんと連絡ちょうだいよね。」


そう言って、叔父の居る場所に向かって走り出していく。


「うん! ちゃんと連絡するから!


加奈! またね!」


大きく手を振りながら、加奈に向かって言う。


「うん! またね!」


加奈も綾子に向かって大きく手を振り、叔父の車に乗り込んで、ドアを勢いよく締める。


「ちゃんと、別れの挨拶しなくて良いのか?」


運転席から、叔父の声が聞こえる。


「うん、大丈夫。 すぐに連絡取れるから。」


笑顔で答える加奈。


「そっか、良かったな。」


「うん。 ありがとね、生来イクル叔父さん。」


「どう致しまして。 さて、帰るとしますか。」


そう言って、エンジンを掛けて車を走らせる生来イクル


彩子は、車が見えなくなるまで、ずっと加奈の乗る車を見送っていた

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