祖父の隠されていた真実

なめがたしをみ

祖父の隠された真実

私の実家は食堂を営んでいる。小さい頃から祖父母と両親は、朝から晩まで食堂で忙しく働いていた。


私は二人兄弟の次男で、祖父からは小さい頃から「次男は大人になったら家を出るものだ」と教えられていた。言葉が悪いかもしれないが、我が家は「長男絶対主義」であり、長男は必ず家を継ぎ、それ以外の子どもは高校を出たら家を出るのが基本だった。私も例外ではなく、小さな頃から長男との格差を十二分に感じていた。


七五三の祝いも長男だけであり、未だに根に持っているのはお年玉の額の違いである。小学校六年生の時、学校の宿題で「大人になったら何の仕事につきたいか?」というテーマの作文を家で書いていた。


私はその時、料理人になりたいと思い、それを作文にしたためていた。しかし、それを後ろから読んだ祖父は、何故か私が実家を継ごうとしていると勘違いし、激昂してきた。そして、初めて殴り合いの喧嘩をしたのを覚えている。追記ではあるが、当時の私は身長180センチ、体重98キロあったので、一方的に殴り続けたことに関して今は反省している。


そんな祖父であるが、私が20歳になる頃、持病の糖尿病が悪化し、入退院を繰り返し、そのまま意識不明となり亡くなった。私は当時、ブラック企業に勤めていたので、どうにかお通夜には参加できたが、すぐにとんぼ返りで仕事に戻ることとなった。


そこから10年、あまり実家には帰らずに生活していたが、急に祖母から電話がかかってきた。

「おじいちゃんが亡くなって10年経つから、そろそろ遺品を整理しようと思うの。あんた、仕事で買い取りとかやってるわよね? 買い取れるものがあるなら全部持っていっていいわよ」

私はその時点で買い取り業の仕事をしており、休みも自由に取れるようになっていたので、一つ返事で了承した。


実家に行くと、祖父の残した遺品は思った以上の量があり、中には火縄銃や日本刀まで様々な物を収集していた(火縄銃も日本刀もきちんと証明書も残っていた)。


大量の遺品を車に乗せ、最後に押し入れの中にある物を物色していると、第二次世界大戦関係のDVDが段ボールに大量に入っていた。

「おじいちゃん、そういうの大好きだったからね」

「あっ、そう」と軽く返事をして、DVDが大量に入った段ボールを手前に引くと、その後ろに黒いファイルがあるのを見つけた。外側には何も貼られていないファイルであったが、手に持ってみるとかなりの重さであった。

「これも第二次世界大戦関係のDVDかな」とチャック式のファイルを開けてみると……そこには……



エロ雑誌に付録としてついてくる240分とかのエロDVDが大量に保管されていたのだ。しかもタイトルはあ行からきちんと並んでいるではないか。一ページ、一ページを開くたびに、次々とエロDVDが終わりなく出現してくる。


私の頭の中には様々な不思議が浮かんでは消えていった。これはどのタイミングで収集を始めたんだ?うちはかなりの田舎で、エロ雑誌を買おうにもかなり遠出をしないといけないはずだ。いや、待て、祖父は祖母と同じ部屋で生活していたはずだ。このエロDVDはいつどのタイミングで観ていたんだ?一人の時間など家にはなかったはずだ。あの毎日働いていた祖父が、いつ雑誌を買ってこのエロDVDを隠していたんだ?


私は何も言わずに天を仰いだ。

「何か金目の物でもあったかい?」と祖母の声が聞こえた。

私はファイルを脇に挟み「あぁ、うん」とだけ答えた。


このことは誰にも伝えずに墓に持っていこうと思っていた。しかし、誰にも言わずにいて本当に良いのかとも考えていた。今回、このような企画で私の祖父の隠された真実をお話させていただいたが、貴方の身内にも、もしかしたら知らない真実があるのかもしれない。


私から最後に言えることは、自分が亡くなる前にエロDVDはきちんと処分したほうが良いということだ。


じいちゃん、このエロDVDを見つけてから貴方への怒りは全てなくなったよ。あの時は殴って本当にごめんよ。あと、エロDVDはたくさんあるのに雑誌は一冊もないのはなんでかな?もしかして幼少期に実家近くの公園に落ちてたエロ雑誌は……いや、考えるのは止めておこう。

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