ライアーっぽい感じのゲーム部

@iwashi_184

第1話 いっせーのーで1!

「部活動紹介か……」

高校生になって一週間、帰る前に高校内の部活動について紹介するプリントが届く。


テニス部、水泳部、卓球部、いやいや運動部に入りたいわけじゃない。

吹奏楽部、美術部、演劇部、あんまり興味がないな。

他には……


「ねえ宅田、ゲーム部なんてどうかな?」


いきなり名前を呼ばれて振り返るといつの間にか真横にいる幼馴染のレイちゃんが居た。


「ゲーム部?」


レイちゃんは指を伸ばしプリントの端にある部活名を指さす。

そこには確かに遊戯部と書かれている部活動がある。


「レイちゃんは興味あるの?」

「楽しそうだし、行ってみたいけど、宅田はどう?」


確かに気になる。


紹介文を見る限り長い歴史があるようだ、部員数三人、活動場所……


「なんだこれ?」


あまりにも無茶苦茶な一文に自然とその言葉が私の口から発せられる。



活動場所を示す文章には

『活動場所 NEWSならW、つまり4の左側に映る2と3の間のダンスホールは?』

                               と書かれている



謎解き?不親切にも程があるだろう。


「そうそう、そのことで宅田に聞きたかったんだけど何か分かるかな?」


「えっと…多分あの場所かな?」


「もう分かったの!?」


「まあね」


私は謎解きが好きだ。

こういったカジュアルな謎解きも嫌いじゃない。


「多分ここかな?」


そこは、三号棟の2階と3階の間にある踊り場

目の前には倉庫があるようで、中から明かりが見える上に声も聞こえてくる。

しかし、そこに遊戯部という張り紙がなければただ単に倉庫の中で作業しているようにしか見えない。


「どうして分かったの?」


後ろについて来ているレイちゃんから疑問が投げかけられる。


「口で説明すると分かりにくい話にはなるんだけど、NEWSが方位Wは西、ダンスホールは直訳、2と3の間はそのまま階層を示していて、NEWSのWは三番目で4の左隣は3だから……


「ごめん!良くわかんないかな!」


説明の途中で理解は放棄されたみたいだ。

しかし、こんな変な場所に部室があるとは、踊り場の倉庫って教室ですらないし。


「本当に大丈夫な部活なのか……」


私はチラッと倉庫の中を覗き込む。

中には二人が座っているようだが、何をしてるんだ?

一人は銀髪にアホ毛が特徴、もう一人は金髪でツインテールが特徴だ。

私は部屋の中の会話に注意を向ける。


「暇だね、なんかするゲームあったっけ?」


「無いって事はないと思うが……


ツインテールの方がそこまで言ったところで、アホ毛の方が握った両手を指の位置がピッタリと合うようにくっ付けた後に、両手の親指を上げながら言い放つ。


「いっせーので2!」


なんだこの人たち……突然いっせーのでゲームを始めた?

地域によっては指スマとも呼ばれるゲームだが、遊戯部でやることがそれなのか!?


「なんだよ急に……


ツインテールは面倒くさそうにしていながらも片方の親指を出していた。


「次そっちの番だよ」


アホ毛の方に急かされて、少し気怠げな雰囲気を見せながらツインテールはゲームを進行させる

「いっせーのーで、1」


これから私はさらに困惑を深めることになる。


「お前、それ何本指出してるの?」


「10本だね!」


アホ毛の人が凄く堂々と両手の指を全て出している。

いっせーのーでゲームで指を全て出している、何故だろうか。


「出し過ぎだろうが!!」


ツインテールの怒りの声と同時にアホ毛の女が扉まで吹っ飛んでくる。


「あっ……」


眼が合う。吹き飛んで来た目の前の人とだ。


「おやっ、新入生かな?もしかして部活見学ってやつ!?」


「まあ……」


「はい!面白そうだなって!」


凄くテンション高く話しかけてくるなあ、この人。

レイちゃんは気が合いそうな気もするけど。


「どうしたんだそいつら?」


部屋の中から素朴な疑問が投げられる。


「そこで拾った入部希望者!」


入部希望とまでは言ってないのに……


「ん?じゃあ、自己紹介でもした方がいいか」


金髪でツインテール、ややつり目な印象を持つ彼女が名乗り始める。


「私は金井淵 望(カナイブチ ノゾミ)遊戯部の副部長で二年生だ。趣味は映画鑑賞、よろしくな」


続けて銀髪アホ毛、全体的に軽そうな印象の先輩が話し始める。


「同じく二年、白木 奈々(シラキ ナナ)だよ!趣味は漫画、以上!」


続いては私の左やや後方からの自己紹介。


「私、一年の輪島 怜沙(ワトウ レイサ)です。好きなものは星!よろしくお願いします!」


流れ的に私の自己紹介の番か。


「輪島の友人の宅多 小南(タクタ コナミ)です、趣味は読書ということでよろしくお願いします」


自己紹介が一回り、金井淵先輩が話し始める。


「まあ、とりあえず座ってくれ」


床にはダンボールが何枚か敷いてある。

ここで周囲を見回してみると、本棚以外には大量に置かれたダンボールの箱だけ、ただの倉庫だから窓すらない、本当に最低限の部屋という感じだ。


「悪いねえ、何も無いところで」


聞きたい事はいろいろあるが、どうしようかと考えているとレイちゃんが先に質問をする。


「ゲーム部って何するんですか!?」


「うーん、いろんなゲームやるんだが、この遊戯部には代々受け継がれてきたゲームがあるんだ。一回やってみないか?」


「ちょうどいいゲームがあったよね!確か92番に」


「やってみたいです!」


レイちゃんは乗り気みたいだ。

まあ、せっかくの機会だゲームくらいやって帰るか……


「どんなゲーム何ですか?」


「今からするゲームは『カード式いっせーのでゲーム』さ!」


いつの間にやら白木先輩は『ゲーム部考案108のゲーム集』というファイルを持っている。


「まあ、やってみればすぐ分かる単純なゲームだよ」


「単純に言うと指の代わりにトランプを使ってするだけのいっせーのーでゲームなんだが……」


「ゲーム部考案オリジナルゲームなのには訳がある!何故なら……」


「「このゲームには必勝法がある」」


必勝法?


「それじゃあ一回、順序立てて練習をしてルールを把握しようか。金井!頼んだぞ」


白木先輩は全員にトランプの、A、2、joker、の3枚を配る。


「そうだな、まずは私が一番最初というテイで練習してみるか。①全員が手札にA、2、joker、を持つ。ここはもうやったから②「いっせーのーで」って言う人の順番を決める。ここは私が一番最初という事にするからスルーして、次にやることは③だな。③「いっせーのーで」と言う役の人が裏向きでトランプを出す」


金井淵先輩はそこまで説明してトランプを一枚裏向きで床に置く。


「④ここから次の⑤の順番になるまでの間他のプレイヤーもカードを一枚裏向きで出すことが可能になる。まあ、一枚裏向きで出してみな」


先輩に促されるまま私はAのカードを裏向きで出す。

他の二人もトランプを出し、場に4枚の裏向きのトランプカードが揃う。


「ここから⑤だ。⑤は順番の人が「いっせーのーで〇〇」って数字を言いながらカードをめくる。他の人もそれに合わせてカードをめくって表向きにする。一回やってみるぞ。いっせーのーで5!」


金井淵先輩がトランプを捲るのに合わせて全員が自分の出したカードをめくる。


A、2、joker、2


この4枚のトランプが表になっている。


「⑥私はさっき『5』って言いながらめくったが、Aが1扱いで、jokerが0扱いなことを考えればすぐ分かると思うが、出たカードの合計がピッタリ合っている。こうなるとゲームの⑦に進む。⑦はプレイヤーのカードの中で一番値が大きいカード、つまり今回は2だな、これをゲームから除外する。これを繰り返して最初に手札がゼロ枚になったら決着がつく」


そう言いながら金井淵先輩は出した2のトランプを一そのまま関係のないダンボールの上に乗せる。


「外した場合は当然カードを捨てずに、次の順番の人に版が回る。まあ基本はこれだけだ」


「後説明するのは制限行為だけだね!」


「ああそうだ、制限行為と禁止行為を説明しないとな。制限されてる行為がいくつかあるんだ。まず⑥の時にトランプを出していなかった場合、トランプを複数枚出していた時、トランプがA、2、jokerのどれでもなかった場合、この三パターンは本人の出したトランプは0扱いになる。つまりjokerを出した時と同じ扱いだな」


「つまりトランプの出し方を間違えたら、『いっせーのーで』で言うところの指を出してない状態、0扱いってことですね」


「その考え方で良い、普通の『いっせーのーで』も出し遅れたり、変な手を出してたら無視して侵攻する事はあるだろ、そういう考え方だ。後禁止行為なんだが言うまでもないことばかりだな、他人のカードの強奪禁止、カードに傷をつけてはいけない、つまりは常識さえ守ってくれれば問題ないぞ」


「思ったより全然簡単でしょ!」


「凄いわかりやすかったです!」


「確かに簡単ですね……」


必勝法なんて思いつかないほど……


金井淵先輩がカードを手札に戻している間に白木先輩から一枚のA4程度の紙を渡される。


「一応ルールの原本のコピーも渡しとくよ。困ったら見てね!」


「当然私たちはそっちが使うまでは必勝法は使わないから安心してくれ、それじゃあ本番を順番決めから始めようか」


こうして遊戯部での最初の部活動が始まる。



ルールブック

カード式いっせーのーでゲーム(難易度normal〜hard)


①全てのプレイヤーはトランプのjoker、A、2を1枚ずつ手札として持っておく。(Aは1、jokerは0という扱いでゲームを進行する)


②余ったトランプの束をシャッフルして引いたカードの値が一番大きい人から時計回りに『いっせーのーで』を言う順番となる。(他の手段でも可)(今後『いっせーのーで』と言う順番のプレイヤーは親のプレイヤーとも呼称する)


③親のプレイヤーが手札のトランプを一枚裏向きで出す。(必ず出さなければならない)


④親以外のプレイヤーもトランプを一枚裏向きで出すことが可能になる。


⑤親プレイヤーが自分の出したトランプもめくりながら数字を一つ宣言する。プレイヤー全員の出したトランプの値の合計が宣言した数字と一致しているかを確認する。


⑥宣言した数と出ているトランプの合計数が一致していた場合⑦に進む


⑦プレイヤーの手札の中で最も大きい値のトランプを捨てる(ゲームから除外する)


⑧手札を捨てる行為によって手札が0枚になった場合そのプレイヤーが勝者になりゲームから抜ける。②〜⑧の行程を手札を持っているプレイヤーが一人だけになるまで行う。


制限行為 以下の行為が行われた場合joker一枚を出した時と同じ扱い、0の値のトランプを出した扱いとしてゲームを進行させる 

(親プレイヤーがトランプを出す前に他プレイヤーが自らのトランプを出す行為が行われた場合

 プレイヤーが複数のトランプを出した場合

 プレイヤーがトランプを出していない状態である場合

 他プレイヤーがトランプを出したことまた、裏返したことを確認できないようにプレイヤーがトランプを出す、またはめくるなどの行為をした場合

 柄が違う傷がついているなど明確に一目で裏向きであったとしてもトランプの種類がわかってしまう場合

 A、2、joker、その全てに該当しないトランプを出した場合)


禁止行為 ゲームの進行そのものを止め問題に対処しなければならない行為

トランプに傷をつける

他人のトランプを強奪する

暴力行為

契約書による強制力のある制約の作成

用意されていないトランプの使用

許可なく過剰に動き回り他人の手札を見ようとする行為等


記載されていない行為であったとしても問題が明らかな場合ゲームを中断させる


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