第7話 亜空間旅路

光に包まれた俺は、心の奥底に広がる平安を感じていた。過去の記憶や未解決の感情をすべて受け入れ、そして自分自身を完全に許したことで、成仏への準備が整ったことを確信していた。しかし、その心の中にはまだ少しの不安が残っていた。それは、成仏した後に待っている世界がどんなものか、完全に把握していないからだ。


光が徐々に収束し、目の前には青空が広がっていた。気持ちの良い風が吹き、温かい日差しが心地よく感じられる。周囲には広がる草原と、遠くには山々が連なる景色が広がっている。この場所は、まるで新しい世界のように感じられた。


「ここが…新たな世界なのか?」


俺はその場に立ち尽くし、周囲を見渡した。ここには過去のような記憶や感情に縛られることはない。ただ、広がる自然と穏やかな風景があるだけだった。少しずつ歩き出しながら、心の中でこの新しい世界に馴染もうとする。


歩いていると、前方に小さな村のようなものが見えてきた。村は静かで、まるで時間が止まっているかのように穏やかだった。俺はその村に近づいていき、住民たちと接触してみることに決めた。


村に着くと、住民たちは俺に温かく迎えてくれた。彼らの目には、優しさと穏やかさが満ちており、俺はすぐに安心感を覚えた。村の長老らしき人物が近づいてきて、にこやかに言った。


「ようこそ、この世界へ。君は新しい旅路の始まりに立っている。」


その言葉に、俺は深く頷いた。この世界は、過去の執着や未解決の感情がない、完全な安らぎを提供してくれる場所だ。だが、同時に新たな挑戦や成長が待っていることも感じていた。


「この世界で、俺は何をすればいいのですか?」


長老は微笑みながら答えた。


「この世界では、自分自身を新たに発見し、成長することが大切だ。それぞれの人が、自分の目的を見つけ、その目的に向かって歩むことが、この世界での役割だ。」


その言葉を聞いて、俺は自分が何をしたいのか、何を成し遂げたいのかを考えた。成仏することが目標ではなく、新たな世界での成長や探求が重要なのだと理解した。


「俺は、自分の使命を見つけて、この世界で成長していきたいです。」


長老は満足そうに頷き、手を振って俺を村の中心に案内してくれた。そこには、さまざまな人々が集まり、交流を深めている風景が広がっていた。村の広場では、音楽や笑い声が響き、まるで新たな人生の祝福をしているかのようだった。


俺はその光景を見ながら、心の中で新たな決意を固めた。この世界での人生を充実させるためには、自分自身を深く知り、周囲の人々と共に成長していくことが必要だ。新たな目的を見つけ、その目的に向かって進んでいくことで、この世界での自分の役割を果たしていきたいと思った。


夕暮れ時になると、村の人々は一緒に夕食を囲みながら、互いに楽しい時間を過ごしていた。俺もその輪に加わり、温かい食事と共に彼らと交流を深めていった。ここでの暮らしが、どれだけ幸せで充実したものであるかを実感することができた。


「これが、新たな旅路の始まりなんだな。」


その言葉を心の中でつぶやきながら、俺は夜空を見上げた。星々が輝き、静かな夜の中に、未来への希望が広がっていることを感じた。この新しい世界で、自分自身を見つけ、成長し、充実した人生を送ることができると信じて、俺はその日を迎える準備を整えた。


こうして、俺の成仏の旅路は終わりを迎え、新たな人生の始まりを迎えた。過去を超え、新しい世界での冒険が待っている。これからの未来に希望を抱きながら、俺はこの世界で新たな一歩を踏み出す決意を固めた。







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