陸上部のダウナー系彼女はあなたと一緒にサボりたい~小日向小夏のサボり同盟~

@weekday

【1】夕立の教室、自己紹介と寝ぐせ

◇シチュエーション:夕立の降りしきる放課後。聴き手が教室にひとりでいるところに小夏が現れる。

〈SE:窓の外で降る夕立:ここから〉

〈SE:開く教室のドア〉

(部活をサボり教室に入ってくる小夏。マイク位置⑯より遠く)

⑯より遠く「あぁ~だるー……」

〈SE:近づく足音、床:ここから〉

⑯「わっ、まだ教室に人いたんだ」

⑯「ふぅん……マズいとこ見られちゃったな……」

〈SE:近づく足音、床:ここまで〉

(聴き手の方を向いて正面の椅子に座る。マイク位置⑨)

〈SE:椅子を引く〉

〈SE:椅子に座る〉

⑨「放課後、誰もいない教室、外は夕立のせいで大雨」

⑨「君も乙な場所を知ってるねぇ」

⑨「君は確か……あー……えっと……クラスメイトの……」

⑨「まあ、名前なんてどうでもいいか」

⑨「細かいことは気にせずに」

⑨「私のことは知ってるでしょ」

(二秒ほど間を空ける)

⑨「なんか反応薄くない?」

⑨「一応、短距離で県大会とか出てるんだけど」

⑨「学校で表彰されたこともあったり……」

⑨「知らないかぁ」

⑨「学校じゃ、割と知名度あると思ってたんだけどなぁ」

⑨「コホン、それじゃ、改めまして」

⑨「私は、小日向こひなた小夏こなつ

⑨「あだ名は、ココナツ」

⑨「あんまり南国系ってタイプじゃないけど」

⑨「部活は陸上部」

⑨「まあ、この格好を見れば分かるよね」

⑨「テレビとかで見たことあるでしょ」

⑨「セパレートユニフォームってゆーんだけど、これみたいに胸と腰で上下に分かれてて、運動するのに特化したヤツ」

⑨「普通のシャツは、胸があるせいでお腹の布が風でパタパタして走りづらいんだよ」

⑨「ただ、欠点が一つあって」

⑨「動きやすいけど、日焼けの跡が致命的なほどくっきり残るの」

⑨「てか、すでに絶賛残り中だし」

⑨「どんなに可愛い水着を買っても日焼けしてないところが変に浮き出ちゃうわけ」

⑨「まあ、そんなことはどうでもよくて……」

⑨「メインは100とか200とか短距離」

⑨「勉強の方はぼちぼちかな」

⑨「部活に専念したいし」

⑨「とか言って、今はそんな気分でもないけど」

⑨「ほら、外雨降ってるでしょ」

⑨「昔からダメなんだ」

⑨「低気圧で頭痛がするとかってわけじゃないんだけど、なんか空がどんよりしてると気分もどんよりしちゃってさ」

⑨「更衣室でユニフォームに着替えたものの、今は絶賛サボり中」

⑨「だから、絶対誰にも言わないでね」

⑨「君もサボりの共犯者ってことで」

⑨「ん……やっぱり反応薄い」

⑨「まあ、いいか」

⑨「それで、君はなにしてたの?」

⑨「んん……? あ、やっぱり何も言わないで」

⑨「当てて上げる」

⑨「んー……その寝ぐせ……さては、ホームルーム中に寝て、そのまま放置されてたんでしょ」

(身体を傾けて聴き手の髪に手を伸ばす。マイク位置⑩)

⑩「証拠はその寝ぐせ」

⑩「髪の毛跳ねてる」

⑩「随分と寝てたな」

⑩「うむ、君は実にサボりストとして有望みたいだね」

(傾けた身体を戻す。マイク位置⑨)

〈SE:スクールバックを漁る:ここから〉

⑨「ちょっと待って……たしかカバンのここら辺に……」

〈SE:スクールバックを漁る:ここまで〉

⑨「あったあった」

⑨「櫛でその髪、直してあげる」

⑨「実はこういうの結構好きなんだ」

⑨「ほら、動かないで」

(再び身体を傾けて聴き手の髪に櫛を入れる。マイク位置⑩)

〈SE:髪を梳く:ここから〉

⑩「うん、君って結構いい髪質してるよね」

⑩「意外と簡単に櫛が通ってく感じがする」

(吐息)

⑩「ん…………ぅ……………………ふぅ………………ん………………ん………………ん~………………………んぅ……………………」

〈SE:髪を梳く:ここまで〉

⑩「これでよし」

⑩「前髪は良い感じ」

⑩「次は後ろ側」

〈SE:椅子を立つ〉

(後ろに回り込みながら。マイク位置⑩から⑪⑫を経由しながら⑬へ)

〈SE:左側を回り込む足音、床〉

⑩→⑬「君は動かないで。顔の向きはそのまま」

〈SE:髪を梳く:ここから〉

⑬「やっぱり」

⑬「後ろも跳ねてる」

⑬「でもこれは、さっきついたわけじゃないなさそう」

⑬「もしや、今日一日ずっと跳ねたままだったのかな」

⑬「せっかくだから、ついでに直してあげる」

(吐息)

⑬「ん…………んん…………………………………………んぅ……………………………ん……ぅ……………………ん……………………………………」

⑬「ところで、知ってる?」

⑬「髪を人に触られるっていうのは、癒し効果があるんだって」

⑬「美容院や床屋さんで、髪を切ったり洗ったりしてもらってるとき、眠くなっちゃったことってない?」

⑬「私はそういうとき絶対寝ちゃう」

⑬「もちろん、そもそも相手を信頼しているからこそ触られてリラックスしちゃうんだけど、今はどんな感じ?」

⑬「眠たくなって来たりしてる?」

⑬「眠くなってきてれば、私は信頼されてるってこと」

⑬「そうじゃなければ、まだまだ私は君が信頼するには値しないってことかな」

⑬「んふっ、初めて話したばかりなのに信頼するってのは難しいかもしれないけど」

(吐息)

⑬「…………ん…………………………………………ん…………………………ぅ……………………ぁは…………………ん………………………………ん…………………………………………ん……………………………」

〈SE:髪を梳く:ここまで〉

⑬「んぅ~……実はさっきからなかなか直らない寝ぐせがあってね」

⑬「ホントにちょっと跳ねてるだけなんだけど、手強いなぁ……」

⑬「やり始めたからには絶対直してあげるからね」

(本腰を入れ聴き手に近づく。マイク位置⑤)

〈SE:髪を梳く:ここから〉

⑤「ここの、頭の横に少しだけ跳ねてる髪があって……」

⑤「この、このっ」

(気合が入り、聴き手の左側に寄ってくる。マイク位置④)

④「おかしいなぁ」

④「全然直らない」

④「ちょうど、耳の辺りなんだけど……」

(さらに気合を入れ完全に聴き手の左側に寄る。マイク位置③)

③「やっぱりダメかぁ」

③「ダメ押しでもうちょっと……」

(吐息)

⑬「…………ふっん…………んっ…………………………んん…………ん………ん…………………………………ん…………………はぁ………………………ぅ…………………………………………ん………………………んん……ん……………………………ん………………………………………」

〈SE:髪を梳く:ここまで〉

③「はぁ~やっぱりだめだ」

③「てか、さっきよりむしろ酷くなってる気もする……」

③「反骨精神っていうのかな……?」

③「まったく強情だね」

(聴き手の後ろから離れ、聴き手の正面に戻りながら。マイク位置③から⑩を経由し⑨へ)

〈SE:左側を回り込む足音、床〉

③→⑨「こうなったら奥の手だ」

⑨「本当は使いたくなかったけど、仕方がない」

〈SE:スクールバックを漁る〉

⑨「じゃんっ」

⑨「濡れたタオルを使います」

⑨「さっき部室にいったんだけどさ、そこまで屋根ないから、ちょっと濡れちゃって頭とか体とか拭いたんだよね」

⑨「これを使えば、いい具合に濡れてるし、きっと寝ぐせも直るはず」

⑨「……なにその目」

⑨「だいじょぶだよ。ちょっと拭いただけだし、汗とかの臭いはしないはずだから……」

⑨「して……ないよね」

(鼻を鳴らしてタオルを確認する)

⑨「すん……すんすん……………………すぅぅう…………はあ……うん」

⑨「ほら、だいじょぶ」

⑨「完全に清潔なまま」

⑨「むしろ柔軟剤のいい匂いがするくらい」

⑨「そんな目で見ないで」

⑨「やってみないと分からないでしょ」

〈SE:椅子を立つ〉

(聴き手側面へ近づいて寝ぐせにタオルを当てる。左側面に回り込みながら。マイク位置⑨から②を経由しながら③へ)

〈SE:左側を回り込む足音、床〉

⑨→③「ほら、じっとしてて」

〈SE:擦れるタオル:ここから〉

③「ゆっくりと、焦らずに、ちょっとずつ寝かせるように……」

③「やっぱり」

③「段々直ってきた」

③「このままこのまま……」

(吐息)

③「…………ん……………………んん……………ん………………ぅ……………………ん………………………ん…………………………………ん………………んぅ………………………」

③「うん、もうほとんどいい感じ」

③「でももっと入念に……」

(吐息)

③「……………ん………………………んん……………………ん……………………………ん………………………ん………………………ん…………………ん………………ぅん………………ん………………んん……………………………………」

③「これで、よし」

③「うん、いい感じ」

〈SE:擦れるタオル:ここまで〉

③「なかなか直し甲斐のある髪だったよ」

③「でも、まあ、私にかかればざっとこんなもかな」

〈聴き手の正面に戻りながら。マイク位置③から②を経由して⑨〉

③→⑨「ふっふっふっ、所詮は敵じゃなかったね」

⑨「やっぱり私の汗……じゃなかった」

⑨「雨で濡れたタオルで拭くのは名案だったね」

⑨「君だってよかったでしょ」

⑨「心身のリラックスにサボることは欠かせない」

⑨「罪悪感なんて感じる必要ない」

⑨「サボることによって、よりいいパフォーマンスが出せるんだから」

(身を乗り出して、聴き手右側面へ近づきながら。マイク位置⑨から⑧を経由して⑦へ)

⑨→⑦「それで、もし君がよかったらなんだけど」

(囁き声:ここから)

⑦「また、一緒にサボらない?」

⑦「君だって、まだサボり足りないでしょ」

(二秒ほど間を空ける)

⑦「ん、じゃあ、約束」

⑦「これで、私たちはサボり同盟を結んだ仲間ってことで」

(囁き声:ここまで)

(聴き手から離れながら。マイク位置⑦から⑧を経由して⑨へ)

⑦→⑨「今日はもう十分サボれたかなぁ」

⑨「そろそろ部活に行かないと」

〈SE:椅子を立つ〉

⑨「君はもう帰る?」

⑨「それとも、まだ寝足りない?」

⑨「どっちにしても、同盟のこと、忘れないでね」

〈SE:遠ざかる足音、床〉

(聴き手から遠ざかり教室のドアを開ける。マイク位置⑯より遠く)

⑯より遠く「それじゃ、また近いうちにねー」

〈SE:閉まる教室のドア〉

〈SE:窓の外で降る夕立:ここまで〉 

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