第11話 冒険者ギルド

冒険者ギルド。それ皆さんお馴染みの冒険者に仕事を斡旋したり、支援したりする互助組織です。


「これだよ、これ!これが見たかった!!」


剣と盾、魔物を組み合わせたロゴ。大きな数階建ての建物。運び込まれる魔物たち。

俺は猛烈に感動している。


「これで一階が酒場だったら完璧だったらなぁ……」


あいにく酒場は隣の建物だった。一応、渡り廊下で繋がっているようだ。


「それでは早速行くかーー!」


そして、絡まれる初回イベント。力を見せて俺TUEEE。きっとあるはずだ、いや有る!路上でも絡まれたし!!


まずは入口に魔物の搬入している人がいるので場所を聞いてオークを課金。それからその金で冒険者登録をする。俺は扉を開き、めぐるめく冒険者の世界に旅立った。


・・・・・・・・


・・・・・


・・・


「ーー以上になりますが大丈夫ですか」


「あっ、はい」


何もなかったよ (´;ω;`)


まぁ、現実なんてそんなもんです。綺麗なお姉さんたちがカウンターに並んでいたけど、淡々と処理されました。さながら市役所の事務員です。


俺がやった事は渡された書類への記入のみ。ステータス確認や模擬戦なんかも一切なかったよ。


「あの……ステータス確認などは必要ないのですか?」


「ステータスは冒険者様の力の源ですので、秘密にされる方が多いです。なので、こちから確認する事はそうそう有りません」


隠す必要なかったじゃん!これでも色々悩んで設定まで作ったのにぃぃ!!


「そうそう。討伐されたオークの魔石を納品して頂きましたので、1つ上のEランクからのスタートになります」


はいはい、皆が知っての通りの冒険者ランクは依頼の難易度であり、力の指標です。ステータスと同じで下から順にF〜A・S・SSと登っていく。


SSSは無いのかって?


過去現在そのランクに到達した人はいないので存在していないらしいよ。そもそもステータスの最高値はSSだと思われてるからね。


「こちらがギルドカードになります」


手渡されのは銅で造られたカード。

このカードは冒険者を示す身分証。名刺の様に使えて本人の情報やどんな魔物を討伐したかなどが記載されている。


「他に何かございますか?」


「他……そうだ。浮かれるあまり使い魔登録忘れてた」


『そうですよ! マスター酷いです!!』


「ごめんごめん」


「えっ? 今の声は何処から?」


受付嬢さんが声の主を探して、周囲をキョロキョロ見渡した。


「あっ、ここです。ここ」


ポケットを捲りミュウの可愛い姿を受付嬢さんに見せる。


「〜〜〜〜っ(可愛いぃぃ)!!」


おお、受付嬢の鏡だ。咄嗟に声を出さない様に口を押さえ込んだ。


「彼女の登録をお願いします」


「かっ、可愛いです。妖精ですか? お名前は何でしょう?」


事務的だったお姉さんに年相応の女性らしさが戻った。目をキラキラさせている。


「ミュウです」


「ミュウちゃんと言うのね。よろしくね」


『よろしくなのです♪』


「〜〜〜っ!」


ポケットの縁に手を掛けてお辞儀するミュウの可愛さに魅力されて受付嬢さんはノックアウト。萌えを覚えた。

ミューは……いやミュウは可愛い。ちょっと淫の気が強いけど、どちらも一撃でハートブレイクする魅力を持っている。


ミュウのなでなで権を進呈しよう。本人も受付嬢さんが気になるみたいだから。


受付嬢さんは恐る恐る人差し指でミュウの頭を撫でてほっこりしていた。


その後、ギルドカードに使い魔情報を記載して貰った。


「カードのこの場所に体液を付けると何時でも情報が確認出来ますので内容に問題ないかご確認下さい」


なんと、ギルドカードは神の恩恵を受けているそうで、討伐情報が即更新されるらしい。モ〇ハンのカードかな?


取り敢えず簡単に唾液をポチャ。


ふむふむ、書類で記載した名前や出身地が出た。他にも冒険者ランク、使い魔情報、討伐記録が問題なく表示された。


討伐履歴:オーク 4体


1体じゃ無くて4体か……ミュウが倒してた分も使い魔の戦闘という事で俺の記録になるらしい。


内容に問題がなかったので依頼掲示板を教えてもらい、受付嬢さんの寂しそうにミュウを見詰める視線から逃げる様に向かった。


「どんな依頼があるかな?」


依頼掲示板を見に行くと時間的にあまり残ってない。常時募集の薬草採取。町のお手伝いやゴミ掃除がメインの様だ。

街の情報収集も兼ねて回復系の依頼があれば良かったんだけどーー


「って、有るじゃん。治療の依頼」


ランク:制限なし

内容:教会での治療士

報酬:回復力に応じて支給。治療人数で特別ボーナス有り。最低銅貨10枚確定


「受けます!」


早速、さっきの受付嬢さんに依頼書を持っていった。


「依頼を受け付ける前……ミヤビ様は指名制度というものをご存じですか?」


指名制度とは手数料を支払う事で好きな受付嬢さんに担当して貰う制度らしい。勿論、その受付嬢が拒否した場合は受けられない。


「メリットが多数有ります」


まず、依頼掲示板でクエストを吟味せずカウンターで確認できる。また、張り出されてない隠しクエストも見る事が出来るそうだ。

次に個室利用。受付嬢への相談や秘密の共有に使える様になる。

その他、外部との仲介など盛り沢山。


「今ならなんと月に銅貨10枚で私が担当致します!!」


彼女は何度もミュウをチラ見しながら猛プッシュ。手を伸ばそうとするのも我慢している。

ミュウにまた触りたいんですね。


……手持ちはまだある。手数料は今回の最低報酬と同じか。ミュウの事も有るし、これは受けた方が良いな。


「それじゃあ、お願いします」


「ありがとうございます」


隠れてガッツポーズしていたのを、あとでミュウが教えてくれた。


「それではお試しも兼ねて依頼の説明を個室でしましょう」






「こちらです」


案内された部屋はテーブルとソファだけがあるシンプルな部屋。でも、扉や窓には魔法の気配がする。鑑定で確認すると防音と傍視対策が施されていた。


「もう、ミュウちゃんを出して貰っても構いませんよ」


「だってよ。出ておいで〜」


『ふう〜っ、ポケットも悪く無いけどずっと隠れるのは疲れーー』


"ガシッ"


『えっ?』

「えっ?」


「きゃあぁぁ、可愛いぃぃ! ずっと抱き締めたかったぁぁ!!」


『にょわぁぁ〜。まっ、マスタ〜。ヘルプ〜。助けて〜』


受付嬢さんの抱き締めスリスリ攻撃でミュウが目を回している。


「受付の姉さん落ち着いて!ミュウが目を回してる!!」


「はっ、私とした事が!? 申し訳有りません」


『あ〜う〜、モウ〜マン〜タイ〜』


どうやらミュウは普通に大丈夫そうだ。

ミュウをソファーに寝かせ席に着く。


「それでは改めまして、ミヤビ様を担当するシャロンと申します。先程は流行る気持ちを押さえきれず申し訳ありません。ミュウちゃんもごめんなさい」


「いえいえ、こっちに知り合いはいないので仲良くしてあげてください」


「話しの前にクッキーを持ってきたのだけど食べませんか?」


『クッキー!? 食べたいです!!』


飛び起きたミュウに一枚あげて俺たちも食べる。サクサクとした食感と甘さが絶妙なハーモニーを奏でて美味い。


「ほわわわ〜」


シャロンさんの視線の先を見ると、ミュウがリスのようにクッキーを食べていて癒された。


「それで依頼の話なんですが……」


「……っ、はい!」


「教会が回復要員を求めるのは珍しくないですか? これだけ大きな町だと人数がいる気がするのですが?」


「それは……ここだけの話にして欲しいのですが、汚職した治療士が多く神殿に回収されました」


「はい?」


「確か2週間程前ですかね? 教会の汚職を改善するよう巫女や神官たちに神託があったんだとか。それで調査が入り寄付金の横領や治療費の水増しで大半の治療士が拘束されました」


捕まった治療士たちは神殿へドナドナドナ〜


わかってたことだけど教会の治療士が不足。ダンジョン都市という土地柄怪我人はひっきりなし。治療士の増員が急務。

でも、あっちもこっちも問題発生で増員する人手がない。仕方なくギルドの治療院からも派遣しているがそれでも足りない。


「ーーというのが現状なんです」


これは神聖魔法のレベルをあげるチャンスなのでは!?


「はい。やりますやります。俺に任せて下さい。これでも神聖魔法はレベル7ですから!!」

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