ドラコニア王国編
第9話 サポート妖精
「すごっ……」
神界ゲートの先は光のトンネル。少し歩くと浮遊感を感じ始めた。事前に聞いていたのトンネルを飛んで移動する。地上と神界は簡単に行き来が出来ない様に特殊な空間を挟んでいるから歩いて通り抜けると結構時間がかかるらしい。
「おっ、アレが話に聞いてた出口か」
地面に降りて光るゲートを潜り抜けた。トンネルを抜けるとそこは鬱蒼と木が茂る森でした。知ったけどね。
ふと気になって背後を振り返るとゲートは既に消えていた。
「まず、最初にするのは……」
ミューとの約束だな。アイテムボックスに手を入れて例の結晶体を取り出した。彼女の話では割ると使い魔が現れるとのこと。早速やってみよう。
"パリンッ"
強化した手で結晶を握り潰すと欠片からモヤが溢れ出し何かを形作る。
「さてさて、どんな使い魔が……ええっ!? ミュー!? 何で!?」
なんとモヤが生み出したのは15cmくらいのミューだった。それを抱き寄せ膝に寝かせる。その際、背中にうっすらと羽根が生えている事に気付いた。
どうやら本人が来たという訳ではないらしい。そうだ、こういう時こそ鑑定さんだ!
「〈鑑定〉」
名前:なし
種族:妖精(ニュンフェの分霊)
その他:閲覧不可
詳細を見れねぇ……。鍛えた鑑定でもダメか。これは鑑定のレベルが低いというよりかは何かしらのプロテクトが神界から掛けられているって気がするな。
「起動方法は確か……」
体液の摂取。場所は口で良いかな?
最初は唾液で良いと言っていたが、何故か連呼していたんだよな。少し気になるが今は起動させる事を考えよう。俺は口に唾液を溜め子指を浸すと彼女の口にゆっくりと付けた。
"ちゅぱちゅぱ"
すると赤ちゃんが母乳を吸うように指が吸われ始めた。ある程度吸うと指を離し、彼女は目を開いて話し始めた。
『体液を摂取。唾液と確認。初期起動エネルギーは十分。契約成立。起動します。名前を付けて下さい』
「名前? なら、ミューにソックリだから少し変えてミュウとか?」
『ミュウ。承認しました。以後、サポート妖精として、マスターの冒険者をサポートさせて頂きます。よろしくお願いします』
「あぁ、よろしく」
『マスターに報告。神界からのアクセスを確認。情報を同期。本体をマザー・ニュンフェに委任しますーーーあっ、ミヤビだ。上手くいったみたいだね』
「うん? ミューなのか?」
『初めての試みが上手くいって良かったよ。私の一部を妖精にしてみたんだ。これだと離れて居ても会話が出来るし、物理的にも繋がれるからね』
「はっ?」
『あっ、私が言った通り最初は素直に唾液を与えたんだね。でも、エネルギーは少ないからこのままだと明日の朝には停止するよ。魔力の多い体液が必要不可欠。つまりは分かるね』
ミューは妖精の身体を確認しながら目が飛び出るようなことを言い出した。
「え〜〜っと、俺には分からない〜。血液で良いのかな?」
「ミヤビの子種」
「いやいや大きさを考えろや!!」
俺のナニがこの娘に入るとでも!? 大きさほぼ一緒なんですけど!?
『えっ? でも、ミヤビの世界の妖精をモデルにしたから大丈夫でしょ?』
「俺の世界の妖精? それって一体……」
嫌な予感がする。ミューと行ったピンクの店で確かに妖精が描かれたパッケージを見た記憶がある。
『オ〇ホ妖精』
「アウトォオオーーッ!!」
どこの世界にオ〇ホールをリアルに再現する女神がいるんだよ!! じゃあ何か、入るのか物理的限界を無視して入ってしまうのか!?
『流石に誰が見ても物理的に全部入れるのは無理だから魔法でこ・こ・と繋げて拡張しました。言ったでしょ『物理的にも繋がれる』って。妊娠も出来るよ。やったね。あっ、昼間に入れるのは止めてね。バレたら恥ずかしいから。でも、ミヤビがどうしてもって言うなら……』
「補給は夜にします!!」
『残念』
流石にそういうプレイは迷惑になるし早すぎると思います。
『それとは別にミヤビにお願いがあるんだけど』
「外出中なのでエッチなお願いで無ければ出来る範囲で引き受けます」
『それじゃあ、お願い。この娘の心を育てて。時間なかったし、初めての試みだからそこまで手が回らなかったの』
「育てるといっても何すれば?」
『一緒にあっちこっちを冒険して美しい景色を見たり、美味しい物を食べたり、エッチしたりして仲良くすれば大丈夫』
いい話っぽいのに、最後いらなくね?
あっ、エネルギー補給で必須条件なのか。
「分かった。任せて」
『お願いね。それじゃあ、変わるよーーアクセス終了。ミュウに戻りました』
「お疲れ様、ミューに身体を任せて影響は何かある? それと機械的な話し方は止めて、タメ口でも良いからもっと崩した感じにしないか?」
『口調検索……は〜い、マスターの要望理解しました〜。こんな感じ行くからね♪ それと問題が1つあるよ』
「それは何?」
『ミュー様と同期したからエネルギーが更に減っちゃた!早くマスターの子種を飲みたいな。ダメ?』
「……早めに宿を取る事にします」
『言質ゲット!街に向かってレッツラゴー!行先はあっちだよ』
「広域〈魔力感知〉!」
普通の魔力感知とは違って、魔力量の大小だけを優先することで広い範囲が見れて対象との距離感も把握できる技法だ。
今回は街という人が集まる場所とあって、魔力が重なり合い1つの大きな塊の様に感じられた。
「流石はサポート妖精。街の位置はバッチし。結構離れてるけどよく分かったね。しかし、バレないようにする為とはいえ、ここはかなり奥地だな」
『当然。地図のスキル持ってるからね。そうだ奥地にいるなら移動ついでに魔物を狩れば? 情報によれば貰った路銀もそこまでないんでしょ?』
手ぶらで放り出されなくて良かった。最低限の通行料と宿代、登録費用は用意して貰っている。
「あっちに手頃な魔物がいるよ。距離5mで数1体」
まだ気付かれていないなら確実に殺れる。ミュウに離れて貰いスキルを発動した。
〈気配遮断〉
気配を断ち見つかりにくくする。
〈自然体〉
そこにあるがままに。存在を見られても気にならなくなる。
保険をかけてて正解。背後からバレずに来たのに直前で見つかった。鼻をしきりに動かしいるから俺に付いたミュウの匂いで気付いたのかもしれない。
「(それにしてもオークが1人とは珍しい)」
"スパッ"
「ふご? ……ふぐっ!?」
正面からゆっくりとナイフを自然な動作で首に添わせた。オークは死ぬ瞬間まで首を切られた事を認識出来なかった。
「やっぱりこのスキルはヤバいな」
手に入れたのは偶然だった。アレス師匠との訓練に負け続け、なる様になれとゆっくりと歩いて急所に一撃をいれたら習得出来た。
師匠曰く、他にも条件があってかなり厳しいのだが、あの瞬間に偶然満たしたとのこと。
「血抜きや解体は後でいいや。今は街に着くことだけを考えよう。〈収納〉」
オークをアイテムボックスに収納して、また歩き始めた。
『さっきのバック入れる様な動作はなんです? それマジックバックでは無いですよね?』
「それはアイテムボックス持ちなのを誤魔化すためさ。練習したら覚えられる数少ない空間魔法なのに使える人が少ないらしい。だから、ランクが低い内はやっかみを受けるからバックだと見せかける習慣付け」
『人間は大変だね。なら、私も極力使わないようにしよう』
「えっ? 使えるの?」
『私のステータスは契約時に与えられた体液から算出するからマスターと一緒。その他の魔法も実行可能だよ』
超優秀。つまり俺が2人いるようなものか。しかも、空を常時飛びながら使えるから実質俺より強いのでは?
『実力の一旦を見せてあげるね』
ミュウが手を構えたので索敵してみるとまたしてもオークらしい魔物の気配がした。
『〈エアボール〉!!』
「はぁ?」
"バキバキバキッーードゴォォォン!!"
『ぷっぷぎぃぃぃぃ!』
巨大な風の玉が木々を薙ぎ倒し、一直線に飛んで行った。遠くでオークの悲鳴が聞こえてきた。気配がないから死んだらしい。
『あっ……』
ふらふらと落下し始めたミュウを受け止めた。
「大丈夫か?」
『ま……』
「ま?」
『魔力が尽きる……』
「そりゃあ、あんな特大のエアボールを出すから!!」
『魔力が尽きると私死んじゃう。魔力魔力……(ゴソゴソッ)』
「うおっ!? 何処に潜り込んでんだ!?」
ミュウはあろう事かパンツへと潜り込んだ。
『経口摂取。今は経口摂取で我慢するから(スリスリ)』
うちの息子は元気だから直前刺激されると聳え立つのです。
『いただきます!』
「ちょっ、木陰!木陰に行くかーーうわあぁぁぁーっ!」
生活魔法〈ウォッシュ〉が今日も活躍しました。
そして、異世界で初めて魔法で行ったことは汚れたパンツを洗う事でした(´;ω;`)
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